不法投棄のやり逃げ

「ない袖は振れない」と申しますが、不法投棄の後片付けについてもそれが当てはまります。

法制度上は「破産」という手続きが存在するため、不法投棄という重大な廃棄物処理法違反を起こしても、残念ながら合法的に廃棄物の撤去責任を免れてしまう現状があります。

もちろん、不法投棄自体が直罰の対象ですので、刑事被告人になる確率は非常に高く、実際に刑事罰が科されることになりますが、いかんせん、初犯の場合、ほとんどのケースで執行猶予付きの懲役刑と罰金刑の併科というのが相場です。

今回、その不幸な実例がまた一つ増えることになりました。

2016年6月30日付 滋賀県発表 「有限会社甲賀建設等に対する措置命令の発出について

 有限会社甲賀建設が行った不法な産業廃棄物の埋立てに関与していた下記の者に対し、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「法」という。)第19条の5第1項の規定による措置命令を発出しましたのでお知らせします。

1 措置命令の対象者
shiga

2 措置対象地
滋賀県甲賀市水口町嶬峨字西山2533番、2534番、2538番、2539番、2555番(位置図(PDF:227KB)参照)

3 措置を命じる事項
(1) 措置対象地に不法に埋め立てた産業廃棄物を、あらかじめ、県の承認を得た計画に基づき、全て撤去し、適正に処理すること。
(2) (1)の措置の履行完了までの間、あらかじめ、県の承認を得た計画に基づき、定期的に周辺環境への影響を把握するための監視調査を実施すること。

4 着手期限および履行期限
(1) 着手期限 平成28年7月29日(金曜日)
(2) 履行期限 平成31年7月1日(月曜日) (3(1)の措置に限る。)

5 措置命令を発出する理由
有限会社甲賀建設により、措置対象地に不法に埋め立てられた産業廃棄物約112,000トン(建設混合廃棄物100,217トン、汚泥12,333トン)については、同社の破産手続開始により、昨年7月に同社に発出した改善命令の履行が見込めない状況となっており、このままでは措置対象地に産業廃棄物が残置され続けることとなりかねないことから、当該行為に関わった関係者についても責任を追及するため、措置命令を発出するもの。

この不法投棄事件については、
当ブログ2015年7月29日付記事「滋賀県が不法投棄に対し改善命令を発出!?」で問題点を書いたところですが、現認した不法投棄に対し、滋賀県が改善命令を発出するという、行政手続きとしては極めて稀な(失当と言える)対応をした時点から齟齬が生じていました。

もっとも、昨年の時点で措置命令を発出していたとしても、行為者による自発的な撤去はやはり望めなかったとは思いますが、改善命令でお茶を濁す(=1年間を棒に振る)必要性はまったくありませんでした。

さて、ぼやきはこれくらいにして、破産手続き中の人間に対して措置命令を発出する理由は、主に2つしかありません。

1つ目は、「県民等から不作為と言われないように、法的な命令をした実績を残す」ということです。

2つ目は、「行政代執行を行うための必要条件」という理由です。

愛知県のように、事務管理と称して、措置命令無しに行政主体の廃棄物撤去を行う方法も無くはありませんが、行政としては非常にリスキーな方法です。

行政代執行を行うためには、「代執行を行う緊急性」が無くてはいけませんが、その「緊急性が高い」ことを担保するのが、措置命令の存在となります。

そのため、措置命令を発出すると、行政はほぼ確実に代執行を行うことになりますが、順序としては、措置命令で行為者に自発的な行動を命令するのが基本です。

今回のケースでは、この順序が逆で、代執行を行うがために発出した措置命令となっているように思えます。

もちろん、順序が逆だからと言って違法ということにはなりませんが、これが企業の場合なら、株主から株主代表訴訟を起こされてもおかしくありません。

滋賀県民及び事業者から預かった大切な税金を、不法業者の尻拭いに充てざるを得なくなったわけですから。

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