行政担当者に不可欠な資質

「行政担当者に不可欠な資質とは何か?」を考える機会がありました。

約1週間考え続けた結果、個人的には以下の3つに集約できるのではないかと考えております。

第1 「正しい使命感」

347053まずは何よりも、「自分が行政官としてなすべき仕事・責任」を正しく認識していることが大前提です。

「そんなことは常識で、皆普通に使命感を持っているだろう」と思う方が多いかもしれませんが、意外にも(そして恐ろしいことに)、この段階でつまづいている人をよく見ます。

公僕としての自覚を持たないだけならまだしも、大いに間違った方向に使命感を発揮する人もいることにも気を付けねばなりません。

例えば、「許可業者には重箱の隅を居丈高につつきながら、無法者との面談は極力避ける」人が、どの自治体にも一人や二人はいるものです。

筆者が実際に遭遇した実例としては、
マニフェストの些細なミスをとらまえ、「お前には処理業者をやる資格が無いので廃業届を出せ」と迫った行政官がいました。

零細な処理業者の立場からすると、行政からそこまで強く言い切られてしまうと、「この先処理業者としてやっていけないのではないか!?」と恐怖を感じ、自主廃業しないといけないのではないかと思い込んでしまうことがあるようです。

もちろん、悪質な廃棄物処理法違反が行われ、業者の経営方針も改善の兆しを見せないような場合は、行政は断固たる処分を行うべきですが、
軽微な運用ミスを重大な犯罪のように喧伝し、行政が処理業者を恫喝するというのは、ただの「弱い者いじめ」です。

行政担当者においては、
「処理業者はすべて悪だ」という間違った観念に凝り固まるのではなく、
違反が軽微な運用ミスに止まっている段階で、処理業者に自主的な改善を促す(求める)姿勢も不可欠なのではないでしょうか。

第2 「行動力」

conflict正しい使命感が無く、行動力だけある行政官という存在は、社会的な害悪そのものと言っても良いかと思いますが、

幸か不幸か、官僚的組織の代名詞にもなっているように、お役所仕事は意思決定のスピードが遅いのが常です。

組織としての意思決定に時間が掛かる以上、担当者はできるだけ早く組織内に情報を上げていく必要がありますが、問題発生から情報を収集する(=現地調査や関係者との面談)までの間に、「行くべきか?それとも行かないべきか?」と葛藤し続けた結果、情報収集という初期対応すら迅速に行えないケースが多いように思います。

行政機関が問題(=法律違反の疑い)を認知したのであれば、担当者には調査をするという選択肢しか無く、「行くべきか?」と悩む時間は無駄です。

お役所に所属しているからこそ、担当官個人には、より迅速に対応するという心構えが不可欠なのではないでしょうか。

第3 「知識」

言うまでもありませんが、廃棄物処理法の条文の理解は必要不可欠です。

ただし、近年の行政官の労働環境を考えると、
10年前と比べても大幅に人員が削減され、予算も減少、しかし、担当する業務は以前よりも増加、と業務に対する責任やプレッシャーは年々重くなるばかり・・・

大切な根拠法令をじっくりと読み解く時間が、以前よりも少なくなっているのは事実です。

行政官である以上、廃棄物処理法のみならず、「行政手続法」や「地方自治法」のひととおりの理解も不可欠であり、「法律を読みこむ時間なんて無い!」というのが本音ではないでしょうか。

さらに、法律ですべてを細かく規制できるわけではありませんので、条文のすき間を解釈で埋める「通知」の理解も必要です。

と、こうしてやらなければならないこと、知っておかねばならないことを列挙すると、やる気を失くしてしまう人がいる一方で、
廃棄物処理法の「一筋縄ではいかない複雑さ」や、「社会を網羅的に包括している幅広さ」に気づき、仕事の面白さに目覚める人もいることでしょう。

現に、私などは、産業廃棄物の規制監督といったお役所仕事にしか面白さを感じなかった人間です(笑)。

廃棄物処理法の面白さに気づいていただくことを目的として、この本は長岡先生と共同執筆いたしました。

行政担当官の方にこそ読んでいただきたい本ですので、「法律を読みこむ時間が無い」「通知まで手が回らない」とお嘆きの行政担当官の方は、是非とも迅速に自腹で購入していただき、3拍子揃った行政官にレベルアップしていただくための一助としていただければ幸いです。

廃棄物処理法の重要通知と法令対応

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