ネーミングセンス

今回は、当ブログ3月24日付記事 「2017年廃棄物処理法改正案の解説(Vol.4 雑品スクラップの規制)」でも触れた「有害使用済機器」という用語をネタにします。

2017年改正案では、「廃棄物ではない」雑品スクラップを保管場所の届出の対象にするとされています。

廃棄物を規制する廃棄物処理法において、明確に「廃棄物ではない物」を規制対象とする初めての改正とも言えます。

環境省は、法改正の必要性を次のように説明しています。

大量に堆積された雑品スクラップから「火災の発生や有害物質等の漏出等」が見られるので、「行政による一定の管理が必要」という論理です。

たしかに、スクラップから鉛等の重金属や油が漏出する事故も多数発生していますが、
一般的に了知されているスクラップヤード由来の不祥事は、急激かつなかなか収まらない「火災」と思われます。

しかしながら、改正法の条文上は、「有害」という枕詞しか付いていないため、「火災の防止」という非常に重要な目的がスコンと抜け落ちてしまっています。

「枕詞が何だろうと、保管場所の届出をさせることには違いがないので、何でも良いのだ」と、法制部局が大雑把に考えたのであれば、典型的な“役人的な発想”と言わざるを得ません。

ネーミング一つで、規制対象者に届出の重要性を認識させる効果が大きく変わりますので、難解な法律の条文だからこそ、規制対象の明確な定義は重要です。

「脱法ドラッグ」が「危険ドラッグ」へと呼称を変えたように、社会情勢の変化に応じて、規制対象の用語を変えていくことも必要と思います。

試みに、より適切な「有害使用済機器」の定義を私も考えてみることにします。

正確に表現するならば、
「重金属その他の有害物質漏出のおそれ及び火災発生の原因となる蓋然性が高い不要物」となりましょうか。

あまりにも長すぎます(笑)。

縮めるならば、
「可燃性不要物」がパッと頭に浮かびましたが、これだと木くず等も対象になりそうな誤解を与えますし、消防法の規制と混同しそうです。

段々考えるのが面倒くさくなってきたので、「危険不要物」くらいで止めておきます。

かようにネーミングには多大な労力が掛かりますので、「雑品スクラップに法規制をかけないといけない」という情熱を持った人にしかできない仕事と言えます。

自分でネーミングを考えてみて改めて実感しましたが、「有害使用済機器」には、熱い情熱を感じることができませんでした。

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