解体物件の残置物の取扱い

EICネット掲示板に、解体物件の残置物に関する質問が投稿されていました。
個人宅解体時の布団は産廃でしょうか

弊社は解体業および処分業をしているのですが、先日個人宅の解体を依頼されたのですが、いらなくなった布団や古着も一緒に処分してもらいたいと依頼されました。
マニフェストを担当している先輩から、布団は基本的に一般廃棄物なので、お客様からのものは受け入れ出来ないけど、弊社が請け負った解体工事で発生したものは、繊維屑として受け入れ出来る。
と言われました。
その時に、納得出来なかったので質問させていただきたいのです。
布団屋さんから出るのは、確かに産廃だと思うのですが、いくら弊社が請け負った工事でも、布団屋を業としていない方から発生した場合は一般廃棄物になるのではないでしょうか。

この疑問に対する私の考えは後ほど書きますので、先に環境省の見解をご紹介しておきます。
平成26年2月3日付環廃産発第1402031号 建築物の解体時における残置物の取扱いについて(通知)

1 建築物の解体時に当該建築物の所有者等が残置した廃棄物(以下「残置物」という。)は、建築物の解体に伴い生じた廃棄物(以下「解体物」という。)と異なり、その処理責任は当該建築物の所有者等にあるが、解体物の収集及び運搬又は処分を行う者にその処理を依頼する事例が見受けられる。
2 解体物は木くず、がれき類等の産業廃棄物である場合が多い一方、残置物はその排出状況及び性状により一般廃棄物又は産業廃棄物となる。
 残置物が一般廃棄物である場合、その処理を受託するためには、産業廃棄物処理業の許可を取得していることのみでは足りず、一般廃棄物処理業の許可又は市町村からの当該残置物の処理に係る委託を受ける必要がある。
3 各都道府県・各政令市におかれては、一般廃棄物である残置物の産業廃棄物処理業者による処理について相談等があった際には、市町村からの委託等を受ける必要がある旨、相談等を行った者に示すとともに、元々の占有者による適切な処理が行われない場合等には、当該市町村に対して、適正な処理業者に委託を行う等の廃棄物処理法に従った適正な処理を行うよう依頼されたい。

正論と言えば正論です。

環境省の通知によって判断すると、上記の質問は、「残置された布団は元々の建物所有者が排出した一般廃棄物になるので、産業廃棄物処理業者が回収してはいけない」となります。

しかし、産業廃棄物を所管している自治体で、ここまで厳格に残置物を一般廃棄物と切り分けるところはかなり少ないのではないかと思います。

もちろん、こうして環境省から通知が出された以上、数年の間はこの通知に基づいて指導を行う自治体が増える可能性はありますが。

ここから先は私個人の私見となります。

「残置物は元々の排出者の廃棄物である」のはごもっともなのですが、
もう元々の排出者がその場にいない状態、あるいはお亡くなりになった状態で、「元々の排出者の責任で廃棄物を処理せよ」と言ったところで、現実的に残置物が処理される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

解体工事は、リサイクル、あるいは処理可能なレベルの大きさになるまで家屋の解体をする工事ですが、
残置物が一つもない解体工事というのは、実際にはほとんど存在しません。

人や企業がその場で活動をしていた以上、動産をすべて綺麗に撤去して、あるのは床と壁と天井のみという状態を期待するのはほぼ不可能です。

環境省の通知は、解体業者に対し、そのような不可能なレベルでの解体工事受注を強制していることになります。

また、解決策として、環境省は2の部分で「一般廃棄物処理業の許可を受ける」ことを推奨していますが、
これも現実的にはほぼ不可能な条件です。

産業廃棄物処理業の許可とは違い、一般廃棄物処理業の許可は条件さえ整えば誰でも受けられる許可ではないからです。

以上の2点から、環境省の通知は、現実を無視した、法律の整合性のみを重視した通知と位置付けられます。

もっとも、この通知は環境省も明記しているように「技術的な助言」にしか過ぎませんので、法的な規制効力は持ちません。

ただし、自治体が盲目的に「技術的な助言」に従う可能性もありますので、実質的な意味においては、規制効果をもたらす可能性が高い文書でもあります。

私の個人的見解としましては、
廃棄物処理法で、「残置物は元々の所有者が唯一無二の排出事業者であり、他の関係者は事務管理してもいけない」と書かれていない以上、
やむなく解体工事の元請業者が残置物を自社が発生させた産業廃棄物として処理するのは仕方がない」という考えです。

もちろん、最初は残置物であったとしても、解体工事の後は元請業者の産業廃棄物として適正に処理されることが大前提の話です。

最後に、再三お断りしているように、
上記は私の個人的な私見であり、「助言」ではありませんので、
実際の施工及び廃棄物処理にあたっては、自己責任で判断いただくようお願いします。

少しでも不安がある方は、規制権限を持つ自治体に質問することをお奨めします。

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