廃棄物と有価物の違い(後段)(大阪府Q&Aの注釈)

大阪府が公開している「よくあるご質問」の注釈をします。

答えの部分が長いため、2回に分けて解説することとし、今回は2回目の後段部分の解説となります。

Q15 廃棄物か有価物かをどのようにして判断すればよいのか?

A15

 (略)

 なお、総合判断説は、最高裁判例(H11.3.10最高裁第二小法廷決定。いわゆる「おから判決」)においても是認されています。
 「総合判断説」において国が示す5つの判断要素(1.その物の性状、2.排出の状況、3.通常の取扱形態、4.取引価値の有無、5.占有者の意思)は、総合的に判断するということであって、どれか一つの要素だけで決まるものではありませんが、実務的に最も重要視されることが多い「4.取引価値の有無」については、環境省から次のようにその考え方が示されています。(H17.8.12環境省通知「行政処分の指針について」)
 「占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。実際の判断に当たっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること、当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要であること。」

※注釈

実務的に最も重要視されることが多い「4.取引価値の有無」

という部分が重要なポイントです。

わかりやすく言うと、
「それは売れる(買ってもらえる)物ですか?」ということです。

総合判断説とはいえ、実のところは「値段が付くものかどうか」を、行政は最重要視していることを公に表明してくれています。

 このように、有償譲渡がなされているかどうかの判断は、費用の名目を問わず排出事業者にとっての収支の実態で判断するものであり、大阪府はその目安を次のとおりとしております。

・排出事業者が運送費を負担する場合
 売却代金と運送費を相殺しても排出事業者側に経済的利益があること。すなわち、受入事業者が運送費相当額以上の対価を払って購入すること。
 (注) 運送費は委託運搬による場合は運搬委託料金とし、自ら運搬する場合は運搬に要する実費とする。

・受入事業者が運送費を負担する場合
 受入事業者が排出事業者に対価を支払うこと。支払われる対価は、経済合理性に基づいた適正な対価として、受入事業者と排出事業者が協議のうえ合意した額であること。(対価は必ずしも金銭で支払われなくてもよい。)
 
 また、5つの判断要素のうち「占有者の意思」は、その物の性状、保管及び排出の状況、取引価値の有無など客観的な諸事実から社会通念上合理的に推認できる占有者の意思を言います。

※注釈
あくまでも「有償譲渡の目安」とあるとおり、運賃と売却費の単純比較で、「運賃の方が高くつく場合は全部廃棄物扱いね」となるわけではありませんが、この部分には慎重な注意が必要です。

たとえば、中間処理業者が破砕後の木くずチップを製紙会社に売る場合、チップの売却額よりも、運賃の方が通常は高くつきます。

製紙会社の工場が遠隔地に偏在化しているためですね。

では、製紙会社は廃棄物処理を引き受けていることになるので、産業廃棄物処理業許可が必要かとなると、
規制改革通知その他(大阪府も別の質疑で触れています)で、「有償で譲り受けた者が占有者となった時点からは廃棄物扱いしなくて良い」と明示しています。

この部分の大阪府の解説は、「売却費至上主義」ではなく、あくまでも「有償譲渡されていると文句なしにみなせるケース」に関する定義、と考える方が合理的と言えます。

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