工事発注者に廃棄物を置いて帰れと言われたら

過去にお客様のメールマガジンで執筆したテーマなのですが、このブログで触れるのは初めてですので、実務的な角度から掘り下げたいと思います。

工事発注者に「廃棄物はこちら(発注者)で処理しておくから、そのまま現場に置いて帰れ」と言われた場合、元請事業者の立場ならどう答えるべきでしょうか?

「廃棄物処理費が不要になるので、渡りに船!」とばかりに、「ハイ!喜んで!」と即答する?

残念ながら、そう即答すると、後日、その元請事業者は不法投棄罪に問われる可能性があります。

なぜだ!?
相手(発注者)が好意で言ってくれているのに、それを断るなんて無礼の極み!!

そんな硬骨漢のあなたは、
「建設廃棄物の処理責任者は誰か?」を思い出してみましょう。

廃棄物処理法第21条の3第1項
土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によつて行われる場合にあつては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についてのこの法律(第三条第二項及び第三項、第四条第四項、第六条の三第二項及び第三項、第十三条の十二、第十三条の十三、第十三条の十五並びに第十五条の七を除く。)の規定の適用については、当該建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業(建設工事を請け負う営業(その請け負つた建設工事を他の者に請け負わせて営むものを含む。)をいう。以下同じ。)を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする。

「建設工事の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業を営む者を事業者とする」と、疑問の余地が無いレベルで、元請が排出事業者と明確に位置づけられています。

である以上、発注者から誘惑を受けたからと言って、自己に処理責任がある建設廃棄物を、工事完了後も現場に放置し続けることは不法投棄に他なりません。

また、すべての発注者がそうだとはもちろん言いませんが、特に個人宅の工事発注者が「置いて帰れ~」と言う場合、
次のような順序を経て、大きなトラブルに発展することが結構あります。

「工事見積書中の廃棄物処理費100万円って何!?」
「100万円だと牛丼を何百杯食べられるのかしら?」
「こんなのきっと嘘よ!」

「これは工事に無知なアタシにつけこみ、業者が暴利をむさぼっているに違いないわ!自力で処分(=土地に埋める(筆者注:違法です))するから、廃棄物は置いて帰れって言ってやるわ!」

「一日働いてさぞお疲れでしょう~後はこちらで処分するから、廃棄物はそのまま置いて帰って良くってよ。」

「ハイ!喜んで~」
「親切な施主様に感謝しつつ、廃棄物を現場の隅に置いて帰ります~」

「ゲッ!廃棄物を置いて帰らせたけど、これだけの廃棄物を埋めるだけの穴をアタシだけで掘る(筆者注:違法です)なんて無理だったわ!」

「調べてみたら、建設廃棄物は元請業者の責任で処理しないといけないみたい~だったら、業者に不法投棄されたことにして、責任を押しつけちゃおう!」

このような状況になったとき、元請の「発注者が置いて帰れって言ったのに~」という抗弁が成り立つでしょうか?

発注者からの「廃棄物を置いて帰って良いよ」という申し出は、例外なく危険と言えます。

廃棄物処理法に基づく排出事業者責任の重さを思い起こし、小手先の甘言に惑わされずに、工事職人としてプライドを持って廃棄物処理委託をキチンと行いましょう!

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