無許可業者への委託による業許可取消
9月8日付の山口県の記者発表 産業廃棄物処理業者に対する行政処分について
1 対象者
住所 (略)
氏名 (略)
2 処分の内容
次の産業廃棄物処理業の許可の取消し(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)第14条の3の2)
○ 産業廃棄物収集運搬業(許可番号 第03505099691号)
3 処分の理由等
(1) 処分理由
対象者は、平成23年4月1日から同年7月6日までの間、少なくとも21回にわたり、同社が元請として受注した宅地等の造成工事において生じた産業廃棄物(がれき類等)の処理(収集、運搬又は処分)を産業廃棄物処理業に係る山口県知事の許可を有しない者に委託した。
(2) 違反条項
○ 産業廃棄物無許可業者等委託(法第12条第5項)違反
処分理由が、今年の4月1日からの違法行為に対してとなっているため、
2010年改正の元請事業者責任の不徹底が原因と思われます。
具体的には、建設廃棄物を処理業の許可を持たない下請業者に持ち帰らせたり、
下請業者に処分をさせていたのかもしれません。
「3か月間で21回の処理委託」という回数からも、頻繁に処理委託していた事実がうかがえます。
注目すべきは、今回の許可取消は、被処分者に刑事罰が科されたわけではなく、
「無許可業者への委託」という事実のみをもって、許可取消が可能ということです。
行政運用的には、このように短期間で許可取消を決定することは非常にまれです。
私も、「この手があったか!」と思わず山口県の着眼点に感心しました。
報道内容からは事案の経緯の詳細などがわからないため、
迅速な許可取消が必要な理由などが他に存在しているのかもしれません。
おそらく、2010年改正法施行後初の、「元請責任の不履行」に伴う許可取消事案ではないでしょうか。
建設会社の場合、産業廃棄物処理業の許可を取消されたとしても、刑事罰が科されていないときは建設業の許可には影響しません。
しかし、その建設会社が下請の立場で施工をする場合は、建設現場の外に廃棄物を運び出せなくなるので、受注をする際にはかなり不利になります。
「元請と下請の円滑なコミュニケーションが大切になりましたよ」と、講演でも繰り返しお話ししてきたところですが
その問題提起が早くも現実の問題となってしまい、素直には喜べそうもありません。
建設関連事業者の場合、今一度、廃棄物処理法違反をしていないか迅速に再検討することをお勧めします。
廃棄物処理法違反は、発覚してからでは対処できないことが多いため、「未然防止」がもっとも重要なのです。
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2011年9月12日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
カテゴリー:委託基準
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コメント
無許可業者への委託による業許可取消について
非常にタイムリーな情報提供有り難うございました。
小職は、製造業の環境管理を監理する部署にいますが、
早速、所管部署に転送、注意喚起に使わせていただきました。
環境法令の改正の場合、これまでは、法施行後、暫くは様子見、
違法者には指導や勧告を行い、やむ得ない場合に始めて行政運用
をかけることが一般でした。それも見越してか、法施行後も対応
せずに、少し風向きが変ってきた段階で漸く腰を上げるきらいが
あります。実際、本件についても、まだ、十分な体制になっていない
部署があることも確かです。それらに警笛をならす意味でも
非常に貴重でした。
森田 章靖 様 コメントありがとうございました。
建設業界のみの特殊事例と考えると、本件から学べる知識は皆無になりますが、
森田様のように、自社の状況と照らし合わせてお考えいただくと、大変示唆に富んだ事件であることをおわかりいただけると思います。
筆者としては特に建設業界に向けた問題提起だったのですが、異業種の森田様に正しく問題提起を受け止めていただいたことを、大変うれしく思っております。
今後ともよろしくお願い申し上げます。