「合わせ産業廃棄物処理」の意味
先日、同じ日に「合わせ産業廃棄物処理」に関するご質問を2人の方からいただきました。
1人は地方自治体の方。もう1人は排出事業者の方でした。
いただいた質問は、「合わせ産業廃棄物処理」の法的な位置づけに関するものでした。
(事業者及び地方公共団体の処理)
第十一条 事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。
2 市町村は、単独に又は共同して、一般廃棄物とあわせて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行なうことができる。
3 都道府県は、産業廃棄物の適正な処理を確保するために都道府県が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行うことができる。
廃棄物処理法の正確な定義を解説しておきます。
産業廃棄物は、排出事業者の自ら処理が基本原則です(第11条第1項)。
それができない排出事業者については、処理業者等への処理委託が認められています。
次、市町村は、一般廃棄物と産業廃棄物を「合わせて」処理することが認められています(第11条第2項)。
産業廃棄物処理ができるからといって、市町村がなんでも産業廃棄物を引き受けてくれるわけではなく
少量のプラスチック類や、茶碗などの不燃物などに限定されていることが通例です。
注意が必要なのは、廃棄物処理法第11条第2項は、市町村に対し、
産業廃棄物処理が「できる」と規定しているだけで、
産業廃棄物処理を「しなければならない」とは規定していない ということです。
合わせ産業廃棄物処理は、市町村が任意でやっている事業ですので、
排出事業者が市町村に合わせ産業廃棄物処理を強制することはできません。
ここを勘違いして、「今までやっていた行政サービスを継続せよ!」と、
一方的に主張する業団体がちらほらあるのが現実です。
次に、「合わせ産業廃棄物処理」はあくまでも「産業廃棄物処理」なので、
市町村に処理委託した産業廃棄物が、一般廃棄物に変化することはありません。
法律的には、市町村に処理委託する場合は、マニフェストの交付不要ですが、
市町村の清掃工場まで処理業者に運搬してもらう場合は、運搬に関するマニフェストの運用が必要であるため、
実質的にはマニフェストの運用が必要となります。
「産業廃棄物が一般廃棄物に変化するから、マニフェストの交付必要なし」というのは誤りとなります。
また、産業廃棄物処理を委託する以上、委託先が市町村であっても、委託契約書の作成が必要です。
先日いただいた質問では、市町村自体が産業廃棄物を一般廃棄物扱いしている積極的な(?)事例で、
市町村から「委託契約書とマニフェストの作成不要」と言われたとのことでした。
厳密には、このような運用は、市町村自体が違法行為を推奨していることになります(苦笑)。
もっとも、違法行為を推奨している市町村には、刑事罰が科されることはありません。
なぜなら、無許可営業でもないし、委託契約書の作成義務者でもないからです。
委託契約書の作成と保存は、排出事業者のみに課された義務だからです。
もちろん、そんな自治体ばかりではなく、
キチンとマニフェストの交付を受け、委託契約書を交わしている自治体もたくさんあります。
はっきり申しまして、自治体の規模の大小と、法律の理解度は比例しないようです。
法律を解釈するのが人間である以上、それも当然のことかもしれませんが。
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2011年9月13日 | コメント/トラックバック(4) | トラックバックURL |
カテゴリー:基礎知識
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コメント
内容に誤りはありませんが、一点、見逃しておられることがあります。
市町村の設置する一般廃棄物処理施設は、まず100%国庫補助を受けています。
国庫補助を受けて設置した施設で産業廃棄物を処理すると…
目的外使用として、補助金返還の対象となります。
即ち、おおっぴらに産業廃棄物の処理を行うと、当該自治体はとんでもないことになるのです。
真茶香 様 コメントありがとうございました。
国庫補助の件 まったく眼中にありませんでしたので、大変参考になりました。
ただ、一般廃棄物処理施設で産業廃棄物の合わせ処理がまったくできないのだとすると、環境省自体が廃棄物処理法の趣旨を捻じ曲げていることになります。
それもちょっと考えにくい事態なので、原典を調べてみました。
後でブログでその原典などをアップします。
今後ともよろしくお願いします。
合わせ産業廃棄物処理にマニフェストが必要との事ですが、この場合も産業廃棄物マニフェストでよろしいでしょうか。又、その際は清掃工場が中間処理先、最終処分先となって、現地確認や契約書の処分先は「清掃工場」の記載も必要となりますか。産業廃棄物マニフェスト運用が理解不能になってしまします。
産業廃棄物であるならば、マニフェストが必要ですね。
契約書も中間処理先は市町村の清掃工場となります。