処理業者の安全管理体制の問題点をあぶり出す3つの質問

終わりなき安全管理行動 の続きです。

千葉県野田市の廃油精製業者(産業廃棄物処理業の許可も所持、優良認定も取得)が廃油精製の過程で大爆発を起こし、死者2名という悲惨な事故が発生しました。

件の業者は
・優良認定を受けている
・業許可及び施設設置許可も問題なし
・現地確認の受入もしている
と、形式上はピカピカの委託先に見えていました。

優良認定が安全管理体制の根本的な不備を隠す金メッキとなっていたことに、我々は注意する必要があります。

優良な処理業者の存在を社会的に認知することが優良認定の大きな目的の一つですが、
優良ではない業者も形式的な要件さえ整えれば、優良と認定されてしまうことが、同制度の最大の欠陥です。

優良とは「優れて良い」という意味ですが、業者の信頼性を著しく高く誤認させるこの用語自体が不適切です。

制度の欠陥の話はこれくらいにして、このような大規模な事件が起こると、委託者である排出事業者にはどのようなリスクが発生するのでしょうか。

処理業者の操業が止まった時のリスク

一番最初に現れるリスクは「処理困難通知を受ける」ですが、前回の記事で詳しく書きましたので、今回は触れません。

その次のリスクは「未処理の産業廃棄物をどうするか」です。

これは、委託契約書の法定記載事項の定めに基づいて処理していくことになりますが、マニフェストの返送期限を過ぎた場合は、排出事業者が措置内容報告書を都道府県知事に提出する必要が生じます。

また、事故発生直後は、処理業者側は廃棄物処理を進めることが事実上不可能であるため、委託者側が主体となって適正処理のための段取りをせざるを得ないでしょう。

そのため、多くの排出事業者は「新たな委託先を探す」ことが必要となります。

ここですぐ新たな引受先がすぐに見つかれば良いのですが、廃油や汚泥などのように、性状が様々で危険性を個別に判断しないといけない廃棄物の場合は、そう簡単には新しい委託先が見つからない場合がほとんどです。

今回の事件では、関東圏の廃油を出している排出事業者が大慌てで委託先を探し始めています。

こうした時、あるいはそもそも信頼できる処理業者かどうかを見抜くためには、現地確認を正しく実行するしかありません。

ただ単に、処理施設の様子を見学し、許可内容の看板の前で写真を撮るだけでは、小学生の社会見学と同じです。

必要なのは「確認をしたという実績」だけではなく、「取引可能な相手かどうかを見極める与信管理の視点」です。

与信管理を行うために必要な情報は色々とありますが、今回は、安全管理体制に問題が無いかどうかを見極めるための質問を解説したいと思います。

業者の本質をあぶりだす質問

表向きはまともな会社に見えるが、実態は安全管理レベルが最悪という処理業者を見破るためには、次のような質問を投げかけてみると良いでしょう。

「当社(排出事業者のこと)も従業員教育を進めているとこなのですが、まだまだ行き届いていないところがあるのが現状です。
 そのため、法律に無知な当社の現場が、御社(処理業者のこと)で処理できない産業廃棄物を通常の回収時に混入させることがあるかもしれません。
 そのような場合、御社ではどのような対応をされますか?」

少し長いですが、話を引き出しやすいように口語体で書いてみました。
相手の問題点を居丈高にあげつらうのではなく、「自社に問題があった場合」と自らを下に下げて言うところがポイントです。

ここで、普通は「わが社は安全管理マニュアルを整備し、常時それに基づいて操業しています。安全面に抜かりはありませんよ( ・`ー・´) + キリッ」と答えられることが多いと思いますが、
その場合は、

「では、当社の現場に絶対に不適物を混入させないための教育資料として使わせていただきたいので、安全管理マニュアルの該当部分を拝見させていただけますか。」

と畳み掛けると良いでしょう。

と、ここで自信を持ってそのマニュアルを見せてくれ、なおかつその内容が具体的、かつ簡易明瞭なものである場合は、安全管理体制のレベルがかなり高い企業と言えます。
従業員が守れない、あるいは守る気をなくさせるマニュアルだと、安全管理という目的を達することはできません。

また、現地確認の際に運良く産業廃棄物が搬入されてきた場合は、マニュアルの定めどおりに受入や処理が行われているかを確認すると良いでしょう。

最後に

今回は詳細な情報開示をいただき、ありがとうございました。万が一当社が不適な産業廃棄物を混入してしまった場合、少しならこちらで処理していただけますか?

と質問し、今までの回答内容と整合性が取れた答えが出るかどうかを確認しましょう。

最後の質問は質問1と同じ内容に見えますが、質問の意図が最初と最後では異なるため、まったく別の質問と言えます。
質問1と2の後に3をすることで、処理業者の答えの一貫性と本音を浮き彫りにすることが可能となります。

具体的には、「少しなら混入しても大丈夫です」という答えは45点。
「安全管理マニュアルで定めた品質検査に通れば大丈夫ですが、検査に不適合の場合は廃棄物をお返しする場合もありますので、できるだけWDSどおりの排出をお願いします。」という答えなら100点です。

「少しなら大丈夫」と言う答えの場合、マニュアルの内容が守られていない、あるいは守らなくても大丈夫という危険な社風になっている可能性があります。

もっとも、これは廃棄物処理企業のみならず、排出事業者においても共通する問題でもあります。

相手の非だけを問題視するのではなく、自社の責任をまず果たしたうえで、現地確認を実行していただくようにお願いします。

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