処理業者の倒産の影響と対処策

前回は、「岩手県庁御難続き、今度は家畜処分場が破産申請」で、岩手県にある家畜処分場の破産の影響について解説しました。

今回は、そのような処理業者の急な市場撤退に伴う影響とそれへの対処策を解説します。

処理業者の倒産・許可取消の影響

理由の如何に関わらず、委託先処理業者が操業不可能となれば、他の処理業者を探すしかありません。

プラスチックやがれきといったありふれた産業廃棄物を破砕するだけならば、全国各地で代替業者を探すのはそれほど困難ではありませんが、その業者が持つ設備や技術の希少性が高ければ高いほど、その地域で代替業者を探すのは困難となります。

前回の記事で取り上げた岩手県の家畜処分場の場合は、東北の家畜処理をほぼ一手に担っていたそうですので、岩手県のみならず東北地域全体での希少性が高いものでした。

そのため、他に家畜の処分を引き受けてくれる業者がすぐには見つかりそうもありませんので、廃棄物保管場所に残った廃棄物のみならず、毎日どこかで発生する家畜の死体などを処理する場所が無いということになります。

その結果、廃棄物としての引取り先が無いため、畜産農家のところで家畜の死体を置き続けるしかなくなることも考えられます。
敷地の中に家畜の死体を埋める人が出てくることも考えられます(注:不法投棄に該当します)。

工場等の場合も、代替業者が見つかるまでの間廃棄物を自社内に保管し続けるしかありません。

そして、保管容量が限界に達すると、製造活動を一時停止せざるを得なくなる場合もあります。

大規模な製造事業所になるほど、この操業停止というリスクは高まることになりますので、平常時から何らかの対策を実施しておく必要があります。

その他、処理業者の急な倒産等に伴うリスクを挙げていくと、
・排出事業者内での廃棄物保管場所の増設コスト
・代替業者を探すコスト
・代替業者に実施する「処理状況確認」のコスト
・委託契約書作成の手間

そして、一番怖いのが、
・目の前に廃棄物があるという余裕が無い状態に陥るため、不注意で委託基準違反を起こす可能性が高まること
などがあります。

まずは、委託先業者の地域における希少性(優位性)を把握し、その業者の希少性が高いと判明した場合は、万が一に備えた予防策が必要となります。

委託先処理業者の倒産等への備え

そのための備えは大きく分けると2つあります。

一つ目は、現在の委託先処理業者に対する徹底的な与信管理。

処理業者から財務諸表を提供してもらうことは基本中の基本ですが、単年度の財務諸表を見るだけでは財務状況の悪化傾向を見抜くのは困難です。

3年とか5年といったスパンで財務諸表を見比べる必要があります。

このあたりの詳細は、

与信管理に関する書籍で詳しく解説されていますので、是非そちらをご参照ください。

処理業者に対する与信管理の着眼点としては、その他に「安全対策」も非常に重要です。

財務状況がピカピカな処理業者であっても、安全対策がおざなりであれば、いつ何時「事業全部停止処分」や「事故に伴う操業中止」に見舞われるかわかったものではありません。

安全対策が優秀な処理業者は、廃棄物の漏えいなどのアクシデントに対して二重・三重の安全対策を施しているものです。

また、そうした処理業者の場合は、現場で働く従業員が安全管理行動を行うことが当然の意識として身についていますので、動作に無駄が無いという特徴もあります。

最後に二つ目の対策。

これは、既存の処理業者の希少性を薄めることを目的とした施策です。

具体的に言うと、平常時から代替業者を確保しておくということです(笑)。

処理業界からは反発を受けそうな提案ですが、やはり委託先業者が1社だけという状態では不測のリスクに対処できませんので、数社の委託先を確保しておくことが重要となります。

もっともその場合でも、「A社に50%、B社に50%」という割合で廃棄物を平等に委託する必要はありません。

A社の希少性が高いのであれば、A社に95%を委託し、B社に5%だけを委託するのでも結構です。

一番重要なのは、A社に100%を委託するという一蓮托生の状態は避けるということです。

もちろん、上記のケースでは、B社にすれば少量の委託量になるためコストが割高にならざるを得ませんので、B社にA社並の単価で仕事を頼んではいけません。

B社はA社の代替先となる貴重な取引先ですので、少々のコスト増は保険と割り切って、毎年少量でも取引を継続させることが大切です。

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