岩手県庁御難続き、今度は家畜処分場が破産申請

当ブログ2014年10月1日付記事 岩手県が廃油撤去の行政代執行を実施 で、岩手県が廃油撤去の行政代執行に着手したことをご紹介しました。

今度は、東北地方の家畜の死体を一手に担っていた処分場(奥州市)の破産申請という難事が、岩手県に降りかかっています。

2014年10月16日付 岩手日報 廃棄牛の処分、見通せず 奥州の東北油化、経費課題

 奥州市江刺区で家畜の処理を行っていた東北油化(武内健太社長)が破産申請した問題で、施設内に残された牛の死骸などの処分が課題となっている。稼働停止して約2週間が経過し、悪臭や汚水が新たに発生する恐れもある。県は15日、同社会長で東北化製事業協同組合の武内勝治代表理事に対し、ただちに処分するよう命令した。だが、経費捻出などの問題が壁となり、実施時期は不透明のまま。一日も早い解決に向け、行政の指導力と覚悟が求められる。

 県は15日、武内代表理事を県庁に呼び、廃棄物処理法に基づく命令文書を手渡した。武内代表理事は「管財人に一任する」という旨の話をしたという。

 県によると、保管庫には処理前の牛の死骸や内臓などが放置されている。コンクリートの床に積まれ、牛の死骸だけで70頭ほどあるとみられる。保管庫は冷蔵され、シャッターが閉じられているが、隙間から悪臭や液体が漏れ出す可能性があるという。

 県は3日、同社が汚水を川に放出したとして排水の一時停止を命じ、稼働を停止。その時点から家畜の処理も滞っている。14日には同社の油脂製品の製造加工を担う同組合にも、同様の行政処分を出した。罰則は5年以下の懲役、1千万円以下の罰金。ただ、処分の期限は定めておらず、罰則の適用判断などは協議しながら進める。

件の東北化成事業協同組合は、産業廃棄物中間処理業者だったようです。
岩手県が公開している処分業者一覧によると、
「汚泥(有機性に限る)、廃油(動物性油脂に限る)、廃アルカリ(廃血液に限る)、動植物性残さ、動物系固形不要物、動物の死体」の6品目の許可で、家畜の死体処理に特化した事業内容であることがわかります。

平成26年10月6日の時点で、許可期限が「平成26年3月14日まで」と記載されていることから、許可期限満了前に更新申請をしたものの、設備や操業体制の不具合などの原因で更新許可が下りていなかったことがうかがえます(もしくは、許可期限の誤記の可能性もありますが)。

上記の背景の他、臭気の苦情や汚水の垂れ流しを行っていたため、奥州市から厳しく改善を指導されていたようです。
2014年10月2日付 岩手日報 家畜処分の悪臭問題で改善命令 奥州市が東北油化に
2014年10月12日付 岩手日報 悪臭問題の東北油化が破産申請 牛の最終処分場失う

そのため、事業者の破産申請は青天の霹靂だったわけではなく、破たんするのは時間の問題だったとも言えます。

pigこの事例の場合は、委託者は畜産農家や食肉工場等の畜産関係者だけだと考えられますが、東北地方の家畜の死体を事業者が一手に担っていた以上、そこが閉鎖されてしまうと東北全域で家畜の死体処理ができなくなってしまいます。

もし、これが家畜の死体処理業者ではなく、ある排出事業者1社にとって主要な産業廃棄物処理委託先だったとしたらどうでしょうか?

地域的なダメージは少ないかもしれませんが、その1社にとっては、東北地方の畜産関係者と同様のダメージが発生します。

毎月少なくない件数の産業廃棄物処理業者の破産申請が起こっている以上、委託先業者の倒産や操業停止というリスクを一度考えてみた方が安全です。

次回、委託先処理業者の不意な市場退場の影響や、それへの対処策について解説します。

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