工事現場ごとに委託契約書を作成しないと違法なのか?

EICネットに、「行政から、建設廃棄物の収集運搬契約では、工事現場ごとに委託契約書を作れと言われた」という質問が掲載されています。

個人的には書籍や講演で語り尽くした感がありますが、多くの人が悩む疑問のようですので、改めて解説します。

結論から先に書くと、「工事現場ごとに委託契約書を作成する必要はありません

その理由を今から解説します。

理由1 発生場所は法定記載事項ではない

委託契約書に書かねばならない内容は、廃棄物処理法第12条第6項、施行令第6条の2で下記のとおり定められています。

すべての委託契約書に共通する法定記載事項
  1. 委託する産業廃棄物の種類と数量
  2. 委託契約の有効期間
  3. 委託者が受託者に支払う料金
  4. 委託する廃棄物を適正に処理するために必要な情報
  5. 委託契約の有効期間中に上記4の情報に変更があった場合に、その情報の伝達方法に関する事項
  6. 受託業務終了時の受託者への報告に関する事項
  7. 委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取扱いに関する事項
収集運搬の委託契約書 中間処理の委託契約書 最終処分の委託契約書
  • 運搬の最終目的地

(以下、積替え保管をする場合のみの記載事項)

  • 積替え保管場所の所在地
  • 積替え保管場所で保管できる産業廃棄物の種類
  • 積替え保管のための保管上限
  • 安定型産業廃棄物を委託する場合は、他の廃棄物と混合することの許否
  • 中間処理場の所在地
  • 中間処理の方法
  • 中間処理施設の処理能力
  • 中間処理残さを最終処分する場所の所在地
  • 中間処理残さを最終処分する方法
  • 中間処理残さの最終処分先の処理能力
  • 委託する産業廃棄物が許可を受けて輸入された廃棄物である場合はその旨
  • 最終処分場の所在地
  • 最終処分の方法
  • 最終処分施設の処理能力
  • 委託する産業廃棄物が許可を受けて輸入された廃棄物である場合はその旨

このように、個別具体的に条文上で明文化された内容を「限定列挙」と言い、法定記載事項として書かれていない(列挙されていない)内容については、法律で拘束されることはありません。

したがって、個別の産業廃棄物発生場所は委託契約書の法定記載事項ではないため、建設現場ごとに処理委託契約書を作成する必要はないということになります。
(逆に、個別の現場ごとに契約書を作ったとしても、もちろん違法ではありません。)

理由2 発生場所ごとに契約をしないことへの罰則が無い

理由1で説明したとおり、発生場所は法定記載事項ではない以上、個別の発生場所を委託契約書に明記していないという理由で罰則の対象になることはありません。

廃棄物処理法の法定記載事項を網羅していれば、後は契約書に何を書くか、あるいは何を書かないかは、契約当時者の自由となります。

行政から私的取引の様式に口を出されるいわれはありません。

行政がどうしても法的に記載を強制したい場合は、法定記載事項として、法律や施行令に明文化しないといけません。

行政がどうしても「個別の建設現場ごとに契約書を作れ」というのであれば、
「個別の現場ごとに契約書を作らないと、どんな罰則が適用されるのか教えてください」と、指導の根拠を明らかにしてもらうと良いでしょう。

とはいえ、その根拠が法的には存在しないことは上述したとおりです(笑)。

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