覚書への印紙貼付の要否

基本契約書で定めない詳細事項を別途決定する場合や、契約の一部分だけを変更したい時には、「覚書」を取り交わすことがよくあります。

この文書はタイトルが「覚書」と付くだけで、文書の性質的には「変更契約書」という位置づけになります。

契約書である以上、一定の条件に当てはまる場合には印紙の貼付が必要となりますが、
産業廃棄物処理委託契約書の覚書についてはどうなるのでしょうか。

覚書で決める事項ごとに整理をしてみます。

まず、国税庁のタックスアンサーでは、覚書の定義を次のとおりとされています。

No.7127 契約内容を変更する文書

 「覚書」や「念書」等の表題を用いて、原契約書の内容を変更する文書を作成する場合がありますが、これらの文書(以下「変更契約書」といいます。)が課税文書に該当するかどうかは、その変更契約書に「重要な事項」が含まれているかどうかにより判定することとされています。
 すなわち、原契約書により証されるべき事項のうち、重要な事項を変更するために作成した変更契約書は課税文書となり、重要な事項を含まない場合は課税文書に該当しないことになります。

課税文書か否か、すなわち印紙貼付の要否は、「重要な事項か否か」にあるということがわかりました。

では、「重要な事項」とは何かについてですが、上記のタックスアンサーの続きで、下記のとおり説明されています。

 この場合の「重要な事項」とは、印紙税法基本通達別表第2「重要な事項の一覧表」において、文書の種類ごとに例示されています。
 次に、その変更契約書がどの号の文書に該当するかについては、次のとおり取り扱われます。

1 原契約書が、課税物件表の1つの号の文書のみに該当する場合で、その号の重要な事項を変更するものであるとき
 → 原契約書と同一の号の文書として取り扱われます。
(例)工事請負契約書(原契約書)により定めた取引条件のうち、工事代金の支払方法を変更する覚書を作成した場合は、第2号文書(請負に関する契約書)の重要な事項である「契約金額の支払方法」を変更するものですから、この覚書は原契約書と同じく第2号文書として取り扱われます。
2 原契約書が、課税物件表の2以上の号に該当する場合(以下略)

収集運搬委託契約に関し、覚書で契約金額を増額する場合は、覚書も第1号の4文書となり、増額分に対応した印紙の貼付が必要ということです。

その他、契約金額を変更する場合の留意点が、別のタックスアンサーにまとめられていますので、全文を掲載しておきます。

No.7123 契約金額を変更する契約書の記載金額

 契約金額を変更する契約書の記載金額については、変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかであるか否かにより、次のようにその取扱いが異なります。

1 変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明らかな場合
 例えば、変更契約書に変更前の契約書の名称、文書番号又は契約年月日など変更前契約書を特定できる事項の記載があるような場合
(1) 変更金額が記載されている場合
 これには、変更前の契約金額と変更後の契約金額が記載されていることにより変更金額を算出できる場合及び変更前の契約金額と変更後の契約金額との差額が記載されている場合も含みます。
イ 変更金額が変更前の契約金額を増加させるものであるときは、その増加金額が記載金額になります。
(例) 当初の売買金額90万円を110万円とすると記載した文書、あるいは、当初の売買金額90万円を20万円増額すると記載した文書。記載金額は20万円。
ロ 変更金額が変更前の契約金額を減少させるものであるときは、その変更契約書の記載金額はないものとなります。
(例) 当初の売買金額90万円を70万円とすると記載した文書、あるいは、当初の売買金額90万円を20万円減額すると記載した文書。記載金額のない文書。
(2) 変更後の金額のみが記載され、変更金額が明らかでないときは、変更後の金額が記載金額となります。
(例) 当初の売買金額を90万円に変更すると記載した文書。記載金額は90万円。

2 変更前の契約金額を記載した契約書が作成されていることが明かでない場合
(1) 変更後の金額が記載されているときは、変更後の金額が記載金額となります。
 これには、変更前の契約金額と変更金額とが記載されている等により変更後の金額を算出できる場合を含みます。
(例) 当初の売買金額90万円を110万円とすると記載した文書、あるいは、当初の売買金額90万円を20万円増額すると記載した文書。
 記載金額は110万円。
(例) 当初の売買金額90万円を70万円とすると記載した文書、あるいは、当初の売買金額90万円を20万円減額すると記載した文書。
 記載金額は70万円。
(2) 変更金額のみが記載されているときは、変更前の金額を増額するもの及び減額するもののいずれもその変更金額が記載金額となります。
(例) 当初の売買金額を20万円増額すると記載した文書、あるいは、当初の売買金額を20万円減額すると記載した文書。
 記載金額は20万円。

契約金額を変更する覚書については、処分委託契約書(第2号文書)においても同様の取扱いとなります。

「中間処理残さの処分先の変更」は?

では、中間処理委託契約を締結している場合で、中間処理業者の都合により、覚書で中間処理残さの最終処分先を変更する場合はどうなるのでしょうか。

「残さの最終処分先は中間処理に関する重要な事項なので、それを変更する場合は印紙の貼付が必要」なのでしょうか?

その答えは、別のタックスアンサーで示されています。

別表第2 重要な事項の一覧表

 第12条《契約書の意義》、第17条《契約の内容の変更の意義等》、第18条《契約の内容の補充の意義等》及び第38条《追記又は付け込みの範囲》の「重要な事項」とは、おおむね次に掲げる文書の区分に応じ、それぞれ次に掲げる事項(それぞれの事項と密接に関連する事項を含む。)をいう。(昭59間消3-24、平元間消3-15改正)
1~3(略)
4 第1号の4文書、第2号文書
(1) 運送又は請負の内容(方法を含む。)
(2) 運送又は請負の期日又は期限
(3) 契約金額
(4) 取扱数量
(5) 単価
(6) 契約金額の支払方法又は支払期日
(7) 割戻金等の計算方法又は支払方法
(8) 契約期間
(9) 契約に付される停止条件又は解除条件
(10) 債務不履行の場合の損害賠償の方法
5 第7号文書
(1) 令第26条《継続的取引の基本となる契約書の範囲》各号に掲げる区分に応じ、当該各号に掲げる要件
(2) 契約期間(令第26条各号に該当する文書を引用して契約期間を延長するものに限るものとし、当該延長する期間が3か月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く。)
6~9(略)

印紙税法上は、残さの最終処分先の変更は、重要な事項の変更に該当しないため、それを定めた覚書は「課税文書ではない」、すなわち印紙の添付不要ということになります。

中間処理業者が請け負うのは、自社が許可を有する範囲内での中間処理であり、中間処理後の残さの最終処分先は、請負内容とは別の合意事項と解釈できるからです。

もっとも、廃棄物処理法的には、最終処分先の変更は、委託者(排出事業者)と受託者(中間処理業者)の双方にとって重要な内容ですが、廃棄物処理法と印紙税法では規制の趣旨や対象が異なりますので、印紙の貼付の要否は印紙税法のみで判断することになります。

「積替え保管」を追加する場合は?

次に、それまでは直送の運搬許可しか所持していなかった業者が「積替え保管許可」を取得し、運搬の途中で積替え保管を行うように変更する場合を考えてみます。

この場合は、上述した「(1) 運送又は請負の内容(方法を含む。)」の変更に該当することとなり、それを合意した覚書は「第1号の4文書」となります。

ただし、その覚書は「契約金額の記載のないもの」となり、印紙税額は200円となります。

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コメント

  1. T.H より:

    覚書に関する印紙について、もっと勉強しないといけないなとすごく感じました。
    ちなみにですが、排出事業者が産業廃棄物処理委託をする場合、収集運搬業者及び処分業者と委託契約書を締結しますが、そこに斡旋業者が存在したとします。
    「排出事業者は、収集運搬業者が原契約書で定めた収集運搬費を、斡旋業者経由で収集運搬業者へ支払いを行うこととする」という内容の覚書は課税文書に該当するかおわかりでしょうか?
    ご回答いただければ幸いです。
    宜しくお願い致します。

  2. 尾上雅典 より:

    コメントいただき、ありがとうございました。

    返信が遅くなりました。

    そのものズバリの国税庁の質疑応答事例を見つけました。
    https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/15/26.htm

    この場合の覚書は、7号文書として扱うとのことです。

    非常に多くの方が関心をお持ちのテーマと思いますので、後日記事として詳細をご紹介します。


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