マニフェストA票は手書きでないといけない?

教えて!goo という質問サイトに、「産業廃棄物マニュフェストについて教えてください。(注:原文ママ)」という質問が掲載されていました。

1.木くずと廃プラスチック類の処理委託をしている。
2.産業廃棄物回収時にマニフェストを発行せず、収集運搬業者が持参してきた作業証明書にサインするのみ。
3.最終処分完了後に、マニフェストA票、D票、E票が一緒に返ってくる(?)。
4.ISOの審査員から、「マニフェストがA票が手書きではなく、印字されている。業者側よりのマニフェストの発行はおかしい」と指摘をされる。
5.「廃棄物の正式な重量がわからないので、このような形でよい。また近隣の大手ISO取得企業も同様な形をとっているようなので当然」と思っていた。

質問の本題は、「排出事業者が、マニフェストを発行するのは重々承知しておりますがこのような形での方法は明らかに違法でしょうか?」というものでした。

答から先に書くと、「明らかに違法です」となります(苦笑)。

その理由は、産業廃棄物の引き渡し時に、紙マニフェストを交付していないからです。
罰則は、廃棄物処理法第29条違反で「6月以下の懲役、または50万円以下の罰金」の対象となります。

また、紙マニフェストの交付を受けずに収集運搬をしている処理業者も、

廃棄物処理法第12条の4第2項
 運搬受託者又は処分受託者は、同項の規定による管理票の交付を受けていないにもかかわらず、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しを受けてはならない。

に違反することとなり、同じく第29条違反で「6月以下の懲役、または50万円以下の罰金」の対象となります。

委託者と受託者ともに、違法行為を継続的に積み重ねていることになります。

特に処理業者の場合は、法人に対して廃棄物処理法違反の罰金が適用された時点で業許可が取消されるという、一番やってはいけない違反です。

廃棄物の正確な重量がわからないからといって、マニフェストを交付しなくても良いという理由にはなりません。

マニフェストに記載するべきは、廃棄物の「数量」であって、「重量」ではありませんので、産業廃棄物の量を把握できる単位(ドラム缶3本とか、8立方メートルコンテナ1台分とか)でカウントをして、それを記載すれば良いのです。

廃棄物の正確な重量は、後日、D票などと一緒に中間処理業者から返送してもらえば良いのです。

委託者の誤解もさることながら、収集運搬業者が自社の首を絞めるような違法な運用をアドバイスしていることも問題です。

運送業の特別な一社の問題ではなく、実際に多くの企業において、このようなマニフェストの運用がなされているのではないかと思います。

マニフェストA票は手書きでないといけない?

法的に重要な論点の他にも、審査員の指摘事項の妥当性も検証します。

審査員の指摘は、

・マニフェストがA票が手書きではなく、印字されている。
・業者側よりのマニフェストの発行はおかしい

の2点だったそうですが、

この指摘だけを読んで答えを書くのは簡単なのですが、質問者が審査員の指摘を誤解している可能性がありますので、それを念頭に置きつつ補足したいと思います。

まずは、「A票が手書きでないといけないかどうか」ですが、
もちろん、廃棄物処理法で手書きを義務付けているわけではないので、印字をしてもまったく問題ありません。

しかし、今回の質問者のやっている手続きの流れを念頭に置くと、
A票の照合確認日まで(ご丁寧に)印字されたマニフェストが、D票・E票と一緒に返ってきているのかもしれません。

もしそうなら、産業廃棄物引き渡し時にマニフェストが交付されていない証拠になるので、違法だという指摘は妥当と言えそうです。

次に、「業者側が発行してはいけないかどうか」ですが、
もちろん、今回の質問のように、委託者がマニフェストを全然交付せずに、収集運搬会社が委託者の名義でマニフェストを交付するというのは違法です。

ただ、取引歴が長く、中間処理の持ち込み先が一社に固定されているような場合は、
一枚一枚手書きで記入をするよりも、収集運搬業者においてあらかじめ印字したものを持ってきてもらい、回収時に「数量」、「交付年月日」、「担当者氏名」を記入するだけにしてもらえば、委託者にとっては非常に便利です。

このような場合なら、業者側が発行しているわけではなく、最終的な交付責任は委託者が負っていることになりますので、法律で禁止されているわけでもありません。

マニフェストは簡単そうに見えて奥が深い実務です。
しかし、それぞれの記載項目自体は単純なものですので、基本的な趣旨さえ外さなければ、ある程度は弾力的な運用が可能です。

しかし、「正確な数値がわからないので、マニフェストを交付しない」というのは最低なやり方ですので、委託者自身がマニフェストの運用方法を理解しておくことが非常に大切です。

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