マニフェストを保存しなかったために書類送検された実例

中日新聞の6月3日付の記事より内容を一部抜粋します。
出典:産廃業者など書類送検 名古屋・中村署、管理票虚偽記載容疑で

産業廃棄物管理票(マニフェスト)を廃棄したり、虚偽記載したりしたとして、名古屋・中村署などは廃棄物処理法違反の疑いで、名古屋市の排出業者1社と県内の中間処理会社7社を書類送検した。

送検容疑では、名古屋市中村区の建設解体会社は昨年9月から今年1月、コンクリートがらなどの処理を委託した同市や豊田市などの中間処理業者7社から受け取ったマニフェスト計21通を廃棄したとされる。

7社は処理が終わっていないのに、終了したとするマニフェストを渡していたとされる。容疑を認めている。

中村署によると、排出業者は「帳簿があり、必要ないと思った」と説明。中間処理業者は「事務簡素化のため」などと説明。産廃そのものはすでに処理されたという。

今回の報道には2つのポイントがあります。

まず、第一に、
「排出事業者(委託者)」がマニフェストを保存していなかったために書類送検されたという事実です。

廃棄物処理法では、マニフェストの発行と保存を排出事業者に対して義務付けています。

「マニフェストを発行しなかった」場合と、「返送されてきたマニフェストを保存しなかった」場合のいずれも、「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑事罰が定められています(廃棄物処理法第29条)。

決して軽い刑罰ではないのですが、いまだに排出事業者にこの義務が浸透しているとは言えないのが現実です。

報道によると、書類送検された排出事業者は、マニフェストを保存しなかった理由を、「帳簿があり、(マニフェストの保存は)必要ないと思った」と説明しています。

実は、法律的には、排出事業者には帳簿の作成義務はありません(注:産業廃棄物処理施設を設置している事業所や、特別管理産業廃棄物が発生する事業所の場合は、帳簿の作成が必要です)。

書類送検された会社は、帳簿を付けるという法律の規定以上の努力をしながら、返ってきたマニフェストを捨てるという違法行為をしていたわけです。

第二のポイントとして、
中間処理業者が実際には産業廃棄物を処理していない時点で、「処理をした」と記載をしてマニフェストを返送している点です。

中間処理業者はそのような不適切な報告をした理由として、「事務の簡素化」という意味不明な言い訳をしています。

今回の事件では、排出事業者側の運用に大きな問題があったのは事実ですが、

仮に排出事業者が完璧な運用をしていたとしても、中間処理業者が勝手に虚偽の記載をしてしまうと、排出事業者側でその事実を知ることは非常に困難です。

これは、紙マニフェストではなく、電子マニフェストであっても同様です。

信頼できる処理業者を見極めることがいかに重要かをお分かりいただけると思います。
幸い、「類は友を呼ぶ」の言葉通り、今回のようないい加減な処理をする廃棄物処理企業は、いい加減な排出事業者としかつきあえません。

しかし、もしあなたの会社が、排出者責任に無頓着な企業で、マニフェストや契約書の管理がいい加減な場合は・・・

いつあなたの会社が不法投棄に巻き込まれるかわかったものではありません!

今回の報道を、単なる事件報道として受け止めるのではなく、自社の管理体制を見直す絶好の機会にしてください。

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コメント

  1. 宮城泉 より:

    排出業者のマニフェストの5年間保管義務があると言われていますが何故ですか?

  2. 尾上雅典 より:

    記事に書いたとおり、廃棄物処理法で排出事業者に保存が義務付けられているためです。


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