三者一括契約の可否(2) 推奨できない理由その1
関連記事
三者一括契約の可否(1)
前回は、三者一括契約を一通の契約書で行っても違法ではないとご説明しました。
廃棄物処理法第12条第3項は、収集運搬は収集運搬業者に、中間処理は中間処理業者に、「それぞれ委託しなければならない」と決めているだけであり、契約書をそれぞれの業者と1通ずつ交わさなければならないとは書いていないからです。
しかし、だからといって、産業廃棄物の処理委託契約書をすべて1通の契約書で済ませてしまうことには、大きな問題があります。
今回は、その理由の解説です。
三者一括契約をお奨めできない理由 その1
「現地確認がおざなりになりやすい構造だから」
平成6年2月17日衛産20号という通知で、当時の厚生省から、三者契約の可否について、以下のような疑義解釈が示されています。
(三者契約)
問16 排出事業者が産業廃棄物処分業者Aと直接接触してAの能力等を確認することなく、産業廃棄物収集運搬業者Bの説明を聞いたのみで、AとBを契約相手とする、いわゆる三者契約を締結することは委託基準に反すると考えるがどうか。答 お見込みのとおり。
この通知以後の行政の運用事例から判断すると、問の後段の部分、「いわゆる三者契約を締結することは委託基準に反する」が一人歩きしてしまった感があります。
重要なのはその前提条件で、「排出事業者が産業廃棄物処分業者Aと直接接触してAの能力等を確認することなく、産業廃棄物収集運搬業者Bの説明を聞いたのみで、AとBを契約相手とする」ことが委託基準違反なのだということです。
そのため、排出事業者が個々の委託先をキチンと訪問し、適切な確認作業を行ったうえで、三者一括契約をすること自体はこの通知でも否定していません。
問題は、三者一括契約をすることで、委託先の確認が適切に行われるようになるかどうかです。
先ほど紹介した疑義解釈は、排出事業者責任の不徹底が不法投棄の温床であることに鑑み発出されたものです。
三者一括契約は、ともすれば収集運搬業者が窓口として動き回ることで、排出事業者と中間処理業者が一度も会うことなく、契約行為だけが行われることがほとんどでした。
現在でも、排出事業者の所を訪問するのは収集運搬業者のみで、排出事業者と中間処理業者の間は、意識的に接点を持たない限り、直接会うことはほとんどありません。
二者契約が指導されている現状でもそうなのに、三者一括契約を基本的な契約スタイルとした場合は、さらに状況が悪くなることは間違いありません。
三者一括契約の方が、収集運搬業者がすべての判子を揃えてくれるので楽ですしね。
しかし、2010年の廃棄物処理法改正では、排出事業者の委託先業者の現地確認が(努力)義務化されます。
そうなると、三者一括契約は、違法ではないものの、中間処理業者の処理能力を実際に確認したという補強材料にはなりえません。むしろ、行政や警察の心象的には、ネガティブな印象を与えてしまいます。
人間は誰しも、放っておけば楽な方向に流れてしまいがちです。
あなたに三者契約を厳格に運用する自信があったとしても、あなたの後を引き継ぐ、知識と経験が不足している他人に対しても、あなたと同様の厳格な運用を求めることは無理です。
このように、三者一括契約は、書式そのものよりも、実際の運用結果から生じるリスクを考えると、まったくお奨めできない契約方式です。
違法か合法かという二者択一の判断ではなく、
「合法だけども、使う人によっては致命的なミスを起こしかねない不十分なツール」と、とらえる方が安全なのではないでしょうか。
« 昭和60年7月12日付衛産第36号 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律適用上の疑義について」 2010 年廃棄物処理法改正 委託先業者の現地確認(4) »
タグ
2010年4月28日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |