廃酸と廃アルカリの違い
顧問先の処理企業から「廃酸と廃アルカリの違いを教えてほしい」という質問がありました。
これ、答えは非常に簡単で、pH値が酸性かアルカリ性かのどちらかで自動的に決まります。
廃酸と廃アルカリは、液体状の産業廃棄物ということになります。
pH7.0の水なら、廃酸でも廃アルカリでもないため、産業廃棄物ではないということになりますが、
実際には水そのものを産業廃棄物として処理する必要はないため、
事実上、廃液などの液状の廃棄物は、廃酸か廃アルカリのどちらかに該当します。
もっとも、「動物のふん尿」も場合によっては液状の場合がありますが、
この場合は誰が見ても「ふん尿」にしか見えませんので、廃酸と廃アルカリのどちらかで悩むことはありません。
塩酸などの強酸性の廃液なら、廃酸に該当することは非常に明確です。
しかし、ジュースやお茶そのものについても、pH値によって、廃酸か廃アルカリのどちらかになる
というのが、一般的な常識からすると理解しにくいところだと思います。
産業廃棄物の定義の中でも、廃酸と廃アルカリは数値によって綺麗に判断できますので、
解釈が入り込む余地が無いのですが、
最近聞いた事例では、
行政担当官によっては、pH6.3の廃液を「廃アルカリ」として指導している実例がありました。
言うまでもなく、
pH6.3はアルカリ性ではなく、酸性です。
行政担当官は神ではありませんので、
個人の無知や誤解がそのまま反映されることもある
ということを覚えておいて損はありません。
企業としては、行政の見解を盲信するのではなく、
その見解の根拠となっている法律やデータに遡り、行政の見解の妥当性を自ら判断する努力が必要です。
「お上の言うことに従っておけば問題は起こらない」という時代ではありません。
廃酸を廃アルカリとして処理委託するのは、厳密には委託基準違反です。
WDSを渡している(はず)のに、排出事業者が酸性であることに気付かないことも問題です。
もっとも、廃液の中間処理をする場合、通常は「廃酸」と「廃アルカリ」の両方の許可を取りますので、
どちらにも対応できることがほとんどですが、
上述したように、本来の性状とはまったく逆の情報を処理業者に伝えるということは、
非常にゆゆしき事態です。
ひょっとすると、排出事業者と処理業者双方ともに、WDSなどをまったく運用しておらず、
廃棄物の中身が何だろうとまったく気にしない
というケースが多いのかもしれませんが(苦笑)。
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2011年8月26日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
カテゴリー:基礎知識
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>ひょっとすると、排出事業者と処理業者双方ともに、
>WDSなどをまったく運用しておらず、
>廃棄物の中身が何だろうとまったく気にしない
>というケースが多いのかもしれませんが(苦笑)。
確かに「WDSや計量証明書を求められたのは、
ミダックさんが初めてだよ」なんて真顔でいう
排出元企業が今もあり、相変わらず排出側も業者側も
レベルは低いままだと痛感させられることがあります。
廃液もpHの違いだけでなく、油分が含有していたり、
固形分が含まれている場合には、許可品目に廃油や汚泥
があるかどうか、注意する必要があります。処分方法が
「中和」のみだと仮に実処理に影響がなくとも、管轄行政から
廃油や汚泥の許可の無い処理業者に委託したと指摘されないとも
限りません。
廃酸、廃アルカリ、汚泥、廃油全ての品目を網羅した処理方法は
「焼却」くらいしか無いことから、廃液を排出する企業は慎重に
業者選定する必要があるといえます。地域の行政マンには色んな
タイプがいますので、理不尽な指摘・指導にも対処しなければならず
悩みは尽きません。
矢板橋 様 コメントありがとうございました。
>廃液もpHの違いだけでなく、油分が含有していたり、
>固形分が含まれている場合には、許可品目に廃油や汚泥
>があるかどうか、注意する必要があります。処分方法が
>「中和」のみだと仮に実処理に影響がなくとも、管轄行政から
>廃油や汚泥の許可の無い処理業者に委託したと指摘されないとも
>限りません。
仰るとおりですね。
ブログは焼却処理を念頭に置きつつ記述したため、「廃酸でも廃アルカリでも問題なく処理できる」と書きましたが、
中和処理の場合は、廃酸と廃アルカリを間違えると、大いに問題がありますので、
廃酸と廃アルカリの区別はやはり重要です。
若干言葉足らずの記述となっておりました。
また、廃液は安易に処理できる廃棄物ではないため、業者選定を慎重に行うべき
というご指摘もそのとおりだと思います。
ミダックさんの活動範囲の自治体は色々と”個性的”な、独自解釈を
しているところが多いので、社長におかれましても、気苦労が絶えないのではと推察いたします。
でも、ミダックさんのように、それを乗り越える力を持った企業にとっては、
逆にそれが参入障壁にもなりますので、やはり現実と向き合うことが一番早い問題解決方法ですね。