こう考えてはどう?テナントビルの廃棄物(その3 解決策)
※関連する連載記事
・テナントビルから発生する廃棄物の排出事業者は誰?
・こう考えてはどう?テナントビルの廃棄物(その1)
・こう考えてはどう?テナントビルの廃棄物(その2 実態)
「テナントビルから発生する廃棄物」に関する連載の最終回です。
※注 今回の記事は、法的な規制が無い現状を踏まえた解決案を提示するだけで、それを実行した結果は実行者の自己責任となります。もっとも、法律上は禁止されていない内容ですので、そのまま実行したとしても、少なくとも刑事罰に問われることはないと考えておりますが。
前回の「こう考えてはどう?テナントビルの廃棄物(その2 実態)」では、現実のテナントビルにおける廃棄物処理の方法を整理しました。
・そもそも、テナントビルから出る廃棄物は、「事業系一般廃棄物」として処理されていることが多い
・「事業系一般廃棄物」として処理する場合、排出事業者には契約書作成・保存の義務がかからない
・そのため、排出事業者が誰になるのかで頭を悩ませる人もいない
テナントビルである以上、紙ゴミはどこまで行っても事業系一般廃棄物でしかなく、産業廃棄物になることは有り得ません。
そのため、法的に厳密に考えれば考えるほど、テナントビルから発生する廃棄物(事業系一般廃棄物+産業廃棄物という意味)は、市町村の焼却炉であわせ産廃処理するのがもっとも合理的と言えます。
ただし、その場合にも、「補助金対象施設の目的外使用」といった大人の事情が色々とありますので、そう簡単に割り切れるものでもありません。
論点1 直接の排出事業者がわからないことが多い
そこで、思考実験として、あえて現実の状況には目をつむり、テナントビルの共用スペースに産業廃棄物が排出されたという前提条件を想定し、考察を進めてみます。
この場合、共用スペースに産業廃棄物を放置した事業者が誰かはわからないものとすると、
放置された産業廃棄物の処理を行うべき者は、「テナントビル所有者」か、「テナントビル所有者からビル管理を委託された者」しかいないと言えるでしょう。
放置された産業廃棄物が、また別の産業廃棄物の放置を呼ぶこととなり、ビルの適切な維持管理のためには、一刻も早く放置廃棄物を取り除くことが急務でもあります。
また、テナントの賃借で利益を受けるのは「ビル所有者」であり、その利益の源泉であるビル管理のために、「ビル所有者が」が排出事業者になることは、むしろ合理的と言えましょう。
あるいは、「ビル所有者」の便益のために、ビル管理という限定された役割を委任された「ビル管理者」も、その役割を果たすために排出事業者になる、と考えることも可能でしょう。
論点2 ビル管理の範囲を広げて解釈できないか
コンビニエンスストアの入口前に設置されたゴミ箱には、店の客のみならず、通行人もゴミを捨てる場合があります。
あくまでも個別の廃棄物の排出事業者にこだわりすぎると、コンビニエンスストアは排出事業者にならず、それをゴミ箱に入れた人を個別に探し出し、ゴミの撤去を求める必要があります。
そのようなことは実現不可能と誰もが知っていますし
ゴミを捨てるついでに来店を促すという販売促進効果を期待してゴミ箱を設置する以上、ゴミ箱中のゴミ(元々は一般廃棄物)の処理責任はコンビニエンスストアにある、と考えることに異議を示す人もいないでしょう。
廃棄物の直接の排出事業者の属性にこだわるよりは、
廃棄物を集めることで利益を受けた(あるいは受ける可能性のある)者に、処理責任を負わせる方が公平、かつ合理的です。
「ゴミ箱を設置して他人の一般廃棄物を回収するコンビニエンスストアには、一般廃棄物処理業の許可が必要だ」と考えたい人はほとんどいないと思いますが、そのこだわりには、もはや現実的な意味はないと言えるでしょう。
コンビニエンスストアによる処理が合理的であるならば、
賃貸借継続を期待し、テナントが発生させた廃棄物を、ビル管理の一環としてビル所有者が処理することも、同じく合理的と言えます。
連載のまとめ
・本連載は、恣意的に廃棄物の排出事業者を当事者間の合意で変更するといった、脱法行為を推奨するものではありません。
・テナントビルやコンビニエンスストア等、「廃棄物を集めること」と「集めた廃棄物を処理すること」で利益を受ける者が廃棄物の処理責任を負った方が、より現実的ではないかという趣旨です。
・別の言い方をすると、通知に書かれたことを後生大事に墨守するのではなく、現実にそれを使える場面では活用し、それが使えない場面ではより現実的な方法を模索するべきでは?という提案でもあります。
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2018年5月7日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:基礎知識