廃石綿が発生する解体工事現場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者の設置は必要か?

特別管理産業廃棄物を発生させる事業場においては、「特別管理産業廃棄物管理責任者」の設置が必要です。

廃棄物処理法第12条の2
8 その事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、当該事業場ごとに、当該事業場に係る当該特別管理産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるため、特別管理産業廃棄物管理責任者を置かなければならない。ただし、自ら特別管理産業廃棄物管理責任者となる事業場については、この限りでない。

それでは、廃石綿の除去を伴う解体工事の場合、責任者設置の対象となる「事業場」は、「建設会社の事務所」なのか「解体工事現場」のいずれになるのでしょうか?

法律の条文上は「特別管理産業廃棄物を生ずる事業場」としか書かれていません。

2021年3月に改訂された「石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第3版)」では、

<廃石綿等>
廃石綿等を生ずる事業場を設置する事業者は、廃石綿等の処理に関する業務を適切に行わせるため、廃石綿等を生ずる事業場ごとに、環境省令で定める資格を有する特別管理産業廃棄物管理責任者を置かなければならない。 (参)法第12条の2第8項及び第9項

と、これまた「廃石綿等を生ずる事業場ごと」としか書かれていません。

上述した問題提起のように、「事業場」の定義を少しだけ広げると、「建設会社の支店等の事業所ごとの設置」で足りるようにも見えます。

しかしながら、通知等の行政解釈では、特別管理産業廃棄物制度が始まった平成4(1992)年から既に、「工事現場ごと」とされています。

平成4年8月31日衛環245号
問56 改正法第12条の2第4項(筆者注:現行法では第12条の2第8項)中の「当該事業場ごとに」とは、石綿建材除去事業を行う場合には「工事現場ごとに」と解してよいか。
答 お見込みのとおり。

廃棄物処理法の趣旨に則って忠実に解釈すると、「特別管理産業廃棄物が発生する場所」である「工事現場ごと」という解釈の方が合理的に思えます。

現在、廃棄物処理法上は「設置は義務」ですが、「設置の報告」は義務ではありません。

ただし、少なくない地方自治体において、個別に制定される条例に基づき、「設置報告が義務」とされているところがあります。

そのようなローカルルールが定められている自治体においては、「工事現場ごと」の責任者設置報告が必要ということになります。

ちなみに、特別管理産業廃棄物管理責任者の具体的な責務については、廃棄物処理法では明示されていませんが、
現在の環境省を初めとする行政機関が例示している具体例は、上記の「平成4年8月31日衛環245号」で示されているものを原型としています。

問57 特別管理産業廃棄物管理責任者の果たすべき役割は何か。
答 当該責任者が置かれた事業場における特別管理産業廃棄物に係る管理全般にわたる業務を廃棄物処理法に基づき適正に遂行することであり、例えば、
1.特別管理産業廃棄物の排出状況を把握し、
2.処理の計画を立て、
3.適正な処理を確保することである。

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