「専ら物」の定義問題(その1)

「専ら物(もっぱらぶつ)」は、廃棄物処理法上でもっとも誤解されている単語ではないでしょうか?

誤解の具体例(※下記の例はすべて誤解例であることにご注意ください。)

(×)「窓ガラスくず」は専ら物である。
(×)「ガラス瓶」は専ら物なので、誰でも業許可無しに処理できる。
(×)専ら物とは、有価物である。

「専ら物は業許可不要」という、重要な要素を大幅に省略した(不正確な)表現が広まっているせいか、このような誤解は放っておくとウイルスのように日々伝播し続けることになります。

「専ら物に対する正しい姿勢」は、これから順を追って記述をしていきますが、まずは、廃棄物処理法に登場する「専ら物」に関する条文を見ておきましょう。

廃棄物処理法第7条第1項
一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。

廃棄物処理法第7条第6項
一般廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を処分する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。

廃棄物処理法第14条第1項
産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。以下この条から第十四条の三の三まで、第十五条の四の二、第十五条の四の三第三項及び第十五条の四の四第三項において同じ。)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。

廃棄物処理法第14条第6項
 産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を処分する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。

上記の4条文をまとめると、

  1. 「一般廃棄物」と「産業廃棄物」のそれぞれで、「収集運搬」と「処分」を業として行う場合は、基本的に業許可が必要である
  2. しかし、「専ら再生利用の目的となる廃棄物のみの処理(←収集運搬と処分の総称)」を業として行う者については、業許可不要とする

特例となります。

「専ら物」と聞くと、「物の特性」に力点を置いた言葉に聞こえてしまいますが、
廃棄物処理法上は、「専ら再生利用の目的となる廃棄物のみの処理を業として行う者」に対する特例措置となります。

すなわち
「専ら再生利用の目的となる廃棄物の処理を行う者」ではなく、
「専ら再生利用の目的となる廃棄物のみの処理を業として行う者」だけが特例の対象となることに留意が必要です。

「ぶつ(物)」という呼称の方が有名なためか、「のみ」という重要な判断要素が一切考慮されていないケースがあまりにも多いと感じています。

「のみ」は文字にするとたったの2文字でしかありませんが、業許可不要の特例となるかどうかを判断する上で、極めて重要な要素となります。

言霊(ことだま)の思想からすると、
「専ら物」という一般呼称は、その存在の本質を誤解させる要素が多々ありますので、不適切な用語と筆者自身は捉えています。

「専ら再生利用業者が業許可不要となる特例」と、重要な要素を省略せずに呼称したいところではありますが、やはり文字数が多すぎるので、呼称としては使えませんね(苦笑)。

肝心の「専ら物って具体的に何なのよ?」については、次回その解釈の根拠となっている行政見解(信仰とも言える?)を見ていきます。

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