排出元の業種限定がある産業廃棄物の種類
産業廃棄物の定義は、廃棄物処理法を理解する上で最も重要な基礎知識となります。
廃棄物処理法の基礎中の基礎の話で恐縮ですが、今回は、産業廃棄物の種類の中でも、「排出元の業種限定があるもの」の法的な定義をおさらいしたいと思います。
まず、「産業廃棄物」の法的な定義は次のようになっています。
- 廃棄物処理法第2条 第4項
この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。- 一 事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
- 二 (略)
廃棄物処理法の条文上で直接規定されている「燃え殻」「汚泥」「廃油」「廃酸」「廃アルカリ」「廃プラスチック類」の6種類については、排出元の業種限定がありませんので、「事業活動に伴って生じた廃棄物」であれば、事業の内容や企業規模の大小を問わず、すべて産業廃棄物に該当します。
廃棄物処理法第2条第4項の「その他政令で定める廃棄物(14品目)」の中に「排出元の業種限定がある産業廃棄物」があり、具体的には次の6品目となります。
- 「紙くず」 建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、パルプ、紙又は紙加工品の製造業、新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行を行うものに限る。)、出版業(印刷出版を行うものに限る。)、製本業及び印刷物加工業に係るもの
(※PCBが塗布され、または染み込んだ紙くずの場合は、排出元の業種に関わらず、すべて産業廃棄物として扱います。) - 「木くず」 建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、木材又は木製品の製造業(家具の製造業を含む。)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業及び物品賃貸業に係るもの
(※木製パレット及びパレットへの貨物の積付けのために使用したこん包用の木材、PCBが染み込んだ木くずの場合は、排出元の業種に関わらず、すべて産業廃棄物として扱います。) - 「繊維くず」 建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く。)に係るもの
(※PCBが染み込んだ繊維くずの場合は、排出元の業種に関わらず、すべて産業廃棄物として扱います。) - 「動植物性残さ」 食料品製造業、医薬品製造業または香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物
- 「動物のふん尿」 畜産農業に係るものに限る
- 「動物の死体」 畜産農業に係るものに限る
上記6品目以外の「ゴムくず」他の「その他政令で定める廃棄物」には、排出元の業種限定がありませんので、事業活動に伴って排出された物はすべて産業廃棄物に該当します。
さて、実務においては、「自社事業が(上述した)排出元の業種に当てはまるかどうか」で悩む可能性がありそうなものは、「紙くず」「木くず」「繊維くず」「動植物性残さ」の4品目ではないかと思います。
「紙くず」「木くず」「繊維くず」の発生元として、「建設業」が共通して挙げられていますが、建設業者が発生させた紙ゴミがすべて産業廃棄物になるわけではなく、「工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る」という縛りがありますので、産業廃棄物に該当する物は、工事現場から排出された廃棄物だけに限定されます。
そのため、たとえば、建設会社に保管されていた過去の台帳や図面等は、「工作物の新築、改築または除去に伴つて生じたわけではない」ため、「事業系一般廃棄物」でしかありません。
「動植物性残さ」の場合は、「食料品製造業」「医薬品製造業」「香料製造業」とわずか3業種しか対象とならないことに注意が必要です。
ただし、たとえば「食料品製造業」の中にも、様々な食品製造・加工事業の形態があるように、「排出元の業種にあてはまるかどうか」を正確に判断するためには、「日本標準産業分類」の「食料品製造業」に関する分類を参照する必要があります。
ちなみに、日本標準産業分類に関する総務省サイトには、
日本標準産業分類は、統計の結果を表示するための分類であり、個々の産業を認定するものでありません。
という注釈が書かれています。
しかしながら、法律や施行令の条文上は、「食料品製造業」と抽象的にしか書かれていませんので、個々の産業を参照するする際には、この「日本標準産業分類」の分類に従うというのが、常識、かつこれまでの一般的な行政見解となっています。
※以下、個人的価値観を色濃く出した単なる余談です。
とはいえ、昭和59(1984)年の日本標準産業分類の改定により、それまでは中分類「食料品・たばこ製造業」一つだったところが
中分類「食料品製造業」と中分類「飲料・飼料・たばこ製造業」と二分されていますので、
現行の日本標準産業分類における「食料品製造業」は、廃棄物処理法制定時のそれよりもかなり狭くなっています。
昭和59年当時、それらの産業の解釈を変更する通知が旧厚生省より発出されてはいますが、法令上は「食料品製造業」のまま、一文字も改定されていません。
そろそろ、政令の「食料品製造業」という少し抽象的な表現を、現代の社会実態に即した、より具体的な定義にバージョンアップすべき時期ではないでしょうか?
現状のまま、「食料品製造業の範囲」を柔軟かつ臨機応変に(?)読み替える方が、社会は円滑に回るのかもしれませんが(苦笑)。
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2022年11月21日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
カテゴリー:基礎知識
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コメント
いつも楽しみに拝見しています。
「あわせ産廃」っていうのも面白い考えかたですね。
「市町村は、単独に又は共同して、一般廃棄物とあわせて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行なうことができる。」(廃棄物処理法第11条第2項)に基づき企業の一般廃棄物を処分できる仕組みです。「できる」というのがミソですね。
私の勤務する会社の出す事業系一般廃棄物を受け入れる環境センターには昨年まで「出していいものとダメなものの一覧」十数ページでまとめられていましたが、今年からは「廃棄物処理法2条4項に該当する産業廃棄物はダメ」というように変わりました。
よく言う「「従業員の昼飯のコンビニ弁当の弁当ガラ」は産廃か、否か?」との論争(?)を聞きます。
「従業員がいないと事業が成り立たないわけでから、弁当ガラは事業活動に伴う産業廃棄物である」という考えと、「弁当ガラを出すことが事業活動ではなく、〇×の製造・サービスが事業活動なので弁当ガラは産業廃棄物でない」というあれ、ですね。
自治体などでも判断が分かれるようですし、処理主体が決めることでしょうから、とやかく言うつもりはありませんが(私は断然、後者の判断です)、弁当ガラなどは保管に伴う臭気や有害生物を誘引することもあるので、スムーズに処分するようでないといけないと考えます。食べ残しなどもあったりしますから。
もちろん、私どもの会社では弁当ガラは「あわせ産廃」として有難く処理していただいております。
ありがとうございます。
コメントいただき、ありがとうございます。
事務所で発生する弁当がらは、法的には産業廃棄物に該当しますが、ご指摘のとおり、生ゴミが一定割合混入することになりますので、市町村で一般廃棄物と合わせて処理する方が適切だと思います。
もちろん、やる・やらないは市町村の選択次第ではありますが。