岩手県VS軽米町

旧岩手県立病院跡地を購入した岩手県軽米町が、購入した土地に医療廃棄物が大量に埋まっていたため、それらの撤去費用の負担を岩手県に求める訴えを起こしました。

2022年12月8日付 岩手めんこいテレビ 「病院跡地に医療廃棄物 県は争う姿勢 軽米町が賠償求める裁判<岩手県>

旧岩手県立軽米病院の跡地から大量の医療系廃棄物が見つかったとして、土地を取得した軽米町が県に対し、撤去費用などの支払いを求めている裁判の準備手続きが12月8日から始まりました。

裁判の準備手続きは非公開で行われ、終了後、軽米町側の代理人が取材に応じました。

訴状などによりますと、町は複合施設建設のために取得した旧県立軽米病院の跡地から2020年、大量の医療系廃棄物が見つかったとして、県に対し撤去費用など約1億9500万円の損害賠償を求めています。

町の代理人によりますと、県側は8日「廃棄物処理法が制定される前で合法だった」などとして全面的に争う方針を示した一方「道義的責任として一部負担を検討できる」と述べたということです。

次回の準備手続きは2023年2月2日に開かれます。

上記の報道には、医療廃棄物を埋めた時期等が具体的に書かれていませんので、訴えが起こされた2022年8月時の報道を転載します。

2022年8月8日付 NHK 「旧県立病院跡地から廃棄物 土地購入の軽米町が県などを提訴

問題の土地は、1969年まで「旧県立軽米病院」があった場所です。

軽米町は、病院が移転されたあとこの土地に町立の図書館や公民館などが入った公共の複合施設「仮称・かるまい交流駅」を整備するため、2017年にこの土地を所有者から購入し、2年前に着工しました。

しかし、町によりますと、着工直後に、敷地内から注射器や注射針など大量の医療廃棄物が埋められていたのが見つかり、また、環境基準を超える鉛の成分が確認されたことから、廃棄物の撤去などのため工事の中断を余儀なくされたということです。

町は、廃棄物の撤去費用などを県に求めて協議してきましたが、県が支払いに応じないため、きょう、岩手県などに対して撤去費用など合わせて1億9532万円余りの損害賠償を求める訴えを盛岡地方裁判所に起こしました。

軽米町の山本賢一町長は8日、県庁で会見し「廃棄物を埋めた県側がこの問題について、預かり知らぬという態度を取っていることを遺憾に感じている」と述べて、改めて県などに処理費用などを支払うよう求めました。

感染などの恐れがある医療廃棄物の処理を、許可を受けた業者に委託することを義務づけた「廃棄物処理法」は、病院が移転した翌年の昭和45年に制定されています。

NHKの報道にあるとおり
1969(昭和44)年に県立病院を閉鎖
1970(昭和45)年に廃棄物処理法制定
と、法律的に絶妙な時期に病院が閉鎖されています。

廃棄物処理法の観点からすると、岩手県の主張にはまったく違法性が無いと言わざるを得ません。

実際のところ、公立・私立の別を問わず、敷地に余裕がある、言い換えると埋立可能な空き地を有する医療機関においては、このような敷地内への医療廃棄物の埋立処分が日本各地で当たり前のように行われていた時代があります。

昭和時代に医療機関が設置されていた履歴がある土地の場合、
「医療廃棄物が埋まっている可能性が高い」と言えます。

ただし、土地取引においては、
過去の埋立処分自体は合法だったとしても、「その土地をそのまま使えるかどうか」が当事者同士の最重要関心事ですので、
・その土地の利用履歴
・その土地に廃棄物その他が埋められているかどうか
・土地に埋設物がある場合は、その撤去費用の負担方法及び負担割合
等を、売買契約上で明示して、売主と買主の相互が納得することが常識となっています。

今回の係争対象となった土地の売買契約において、上記の3点がどのように位置づけられていたかはわかりません。

NHKの報道では、

軽米町は、(略)2017年にこの土地を所有者から購入し、2年前に着工しました。

とありますので、土地の売主は岩手県ではなかったように読めます。

そうであるならば、上記の瑕疵担保責任は土地の売主である元所有者に問うべきだと思われますが、報道されていない部分で特別な事情があったのでしょうか?

今日の役立つ豆知識
昭和時代に医療機関が設置されていた土地を購入する場合は要注意な!

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コメント

  1. 鶴飼徳子 より:

    その通りです。そもそも県立病院そのものが、借地に建設されたものであります。軽米町が、購入時土地価格形成要因から、土壌汚染調査を意図して除外したから、隠れて瑕疵を鑑みず、購入したのです。
    又更に土壌汚染対策法の無届けのまま、入札し、掘削でこのような事態になっています。この問題に関心持ったくださりありがとうございます。
    私が土台法無届けを指摘した本人でし。
    人口8千人の町です。過疎事業債莫大な借金、公共事業でこの様な状況誰が、責任取るのかと心配しています。

  2. 尾上雅典 より:

    コメントいただき、ありがとうございました。

    土地購入の時点から様々な問題があったのですね。

    埋設物有無の調査は必須の対策ですので、意図的に調査を省略したのであれば、その省略を実行した人、あるいは組織に責任があると言えます。


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