小型電子機器リサイクル制度の検討状況

(速報)10月31日開催の第7回小型電子機器リサイクル制度小委員会の傍聴結果 の続報です。

傍聴内容のレポートの前に、小型電子機器のリサイクルが検討されている背景から解説しておきます。

小型電子機器リサイクル制度の概要

小委員会資料では、検討され始めた背景として、「資源確保」「廃棄物の減量化」「鉛その他の有害物質の排出削減」が挙げられています。

※過去の小委員会資料は、
http://www.env.go.jp/council/03haiki/y0324-06b.html で公開されています。

環境省の試算によると、全国で1年間に廃棄される小型電子機器に含まれる有用金属の量は、27.9万トンで金額にすると843億円とのことです。

ただし、実際にはすべての小型電子機器を回収できるわけではないため、回収率を20%程度とすると、回収できる有用金属の量は3.5万トンで106億円程度になるそうです。

もっとも、日本全体での回収率20%というのは非常に高い目標と言えますが、それでも有用金属の市場規模は約100億円しかないということになります。
 
現在環境省が考えている、制度の在り方は下図のとおりです。
リサイクル制度案

実は、この図に、この制度の大いなる矛盾点が凝縮されています。あなたはどこに矛盾点があると思われますか?

市町村の一人負けというリサイクル制度は持続可能か?

私は、製造事業者が関与しないことが、最大の問題点であると思っています。

環境省や委員会の見解としては、「少量だから製造事業者の関与は後回しでいいか~」というもののようですが、製造事業者が言わば「ただ乗り」でレアメタルリサイクルの成果を享受するというのは、税金を使って電子機器を回収しなければならない自治体と比較すると、著しく不公平です。

委員会でも、自治体を代表する委員から、自治体の負担増に関する反対や懸念を示す意見が多数上がっていました。
「環境省の原案では到底受け入れられない」
「回収場所に監視のための人員の配置などできない」 etc

環境省自身が、口では「小型電子機器リサイクルの要は市町村」と言いながら、
肝心の制度構想の核心部分で、「市町村の丸抱えで小型電子機器のリサイクルをせよ」と言っているのと同じだからです。 
ボックス回収

今後は、この自治体の負担内容が最大の論点となりそうですが、
自治体関係の委員の意見にすべて応えようとすると、リサイクル制度を作ること自体がとん挫しそうです。

と言いますのも、
環境省の構想では、小型電子機器のリサイクルをするかどうかは、「市町村や処理業者を含めたその地域の自由意思による」とのことですので、特別措置法や業許可不要の特例制度が作られるわけではないからです。

環境省から
「地域のリサイクル事業を邪魔するものではなく、後押しができるような制度に」
「どのような方法で回収やリサイクルをするかは、地域の意思で決めてもらう」
「国は、色々なリサイクル・回収方法の情報提供をするというスタンス」という発言も度々でておりましたので、

ひょっとすると、「リサイクル制度創設にこぎつけられず、単なる事例紹介で終わるのでは!?」と、個人的には懸念をしています。

小型電子機器のリサイクルをすること自体は結構なのですが、
発生量が少ないことが始める前からわかっている以上、それを回収することに血税を費やす意味があるのかどうか
制度創設の必要性を今一度検証する必要がありそうです。

また、環境省は、リサイクルを担う事業者の資格として
「廃棄物処理業の許可取得を義務付けます」との見解を示していました。

リサイクルの対象製品

リサイクルの対象として、どのような電子機器を対象にするかはまだ具体的に検討されていません。

ひとまずの枠組みとしては、「30cm×30cm×30cm」の大きさ以下の電子機器を想定しているようです。

30cm以下に制限する理由としては、「それ以上の大きさの電子機器の場合、粗大ごみとして扱われることが多く、回収の手間が大きく変わるから」とのことでした。

幅35cmの電子機器というのもたくさんあるはずですので、「条件に弾力性をどう持たせるか」が、今後議論されるものと思います。

環境省自身が認めた不作為

個人的に唯一注目しているのが、下記の②の「不用品回収業者対策」。
有用資源の国内循環確保のための政策パッケージ

年内に、「廃棄物該当性の判断基準の検討会」を開催するとのことです。

「有用資源の国内循環確保のため」というカッコ付きで、
無許可業者に横取りされないように、
「判断基準」の「検討会」を作る

「無許可業者を規制する」ことが目的なのではなく、
「判断基準を作る」ことが目的ですので、
どこまで踏み込んだ議論がなされるのかが少々不安です(苦笑)。

万が一にもないと思いますが、

環境省さん

私に委員を委嘱していただいたら、国民や自治体にとって有益な判断基準をご提示できると思います(笑)。

その他
ある委員から「違法な回収業者をなぜ放置しているのか」と聞かれ、環境省担当者が「違法業者が放置されているのは我々(環境省)の不作為です」と正直に答える場面がありましたので、環境省の事務方も問題意識を持っていることがわかりました。

ただ、上記のくだりは、議事録が公開される時にはおそらく削除されると思います(笑)。

役人としては、このような踏み込んだ発言はご法度と判断されるのが常だからです。

その意味では、勇み足だったかもしれませんが、「勇気ある発言だな」と感心しました。

ひょっとすると、そのようなうがった見方をせずとも、環境省職員の大部分がそのような問題意識を持っているのかもしれません!
もしそうなら、環境省の今後の取組みには大いに期待が持てます。

環境省職員の皆さん 嫌味ではなく、国民はあなた方の頑張りに期待してますよ~

もうこれからは、「褒めて伸ばす」に方針転換します(笑)。

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