震災廃棄物に対する恐れの本質
11月3日から、東京都で岩手県宮古市の災害廃棄物の受入れが始まりました。
表だって報道されていなかったのですが、東京都にも震災廃棄物の受入れに関する抗議が2,000件以上も殺到していたとのこと。
がれき処理反対には「黙れ」 石原都知事「皆の協力必要」
それに対し、石原都知事は、
(放射線量などを)測って、なんでもないものを持ってくるんだから『黙れ』と言えばいい
と明確に反対の意思を示されました。
決して石原知事のシンパではありませんし、個人的にはむしろ言動を批判的に受け止めることが多かったのですが、
震災廃棄物をめぐるここ数か月の都知事の発言は、方針を明確にするというリーダーシップの望ましい発露であると思います。
YOMIURI ONLINE 【宮崎】「震災がれき受け入れないで」県外から声
カナロコ 保管廃棄物の放射線量「自然界と同じ」、海自が市に通知/横須賀
特定の地域だけをやり玉にあげるつもりはありませんが、2件の報道をピックアップしました。
石原都知事は、このような状況を「皆、自分のことばかり考えている。日本人がだめになった証拠だ」と論評されていますが、
私としては、日本人がだめになったためではなく、「元々潜在的にある差別意識の発露である」と考えています。
「自分が住む地域は被災地の影響を受けない、完全無欠のクリーンな地域であり、
そこに震災廃棄物という得体のしれない廃棄物が入ってくることは容認しがたい」
というものです。
そのような正論の形を装った非論理的な主張には、
中世から続く「穢れ」意識にも通じる、「自分は被災地の人間とは違うのだ」という選民的な意識が感じられます。
震災廃棄物の処理が進まずに困っているのは、被災地の人の自業自得なのでしょうか?
また、
被災地で発生する廃棄物すべてに、大量の放射性物質が必ず付着しているのでしょうか?
そうでないことが明らかな以上、各地域でできる範囲の協力をするべきなのではないでしょうか。
もちろん、行政にこのような抗議をする人はほんの一部であり、その地域の住民すべてが同じ考えであるはずがありませんが、声が大きい人の意見に流されるのが日本社会の常でもあります・・・
そんな中、静岡県知事が東京都に続いて震災廃棄物の受入れに向け、県内自治体との調整に乗り出したのは良いニュースですが、
それに関する細野環境大臣のコメントが少し他人事のように感じられました。
YOMIURI ONLINE がれき受け入れへ環境相理解求める
自治体から『こういうゴミなら受け入れる』との話があれば、しっかりマッチングする
自治体から声を上げてもらうのを待つのではなく、国が自発的にお願いというか、声掛けをしていくのが筋なのではないでしょうか。
「識者」や「権威」の発言に惑わされることなく、自分の頭で物事の真理を判断したいものです。
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2011年11月7日 | コメント/トラックバック(4) | トラックバックURL |
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コメント
結局のところ、政府の安全という8,000Bq/kgの指標自体が、信じられていないのではないでしょうか。
また、東京都で受入を行っているといっても、現段階では産業廃棄物処理施設を利用した受入にすぎません。今後、住民の近隣で処理を行っているごみ焼却施設での受け入れを始める時には、違った反応があるのではないかと思います。
ねここねこ 様 コメントありがとうございました。
おっしゃるとおり、政府が示す基準値自体が当初から二転三転したことが、不信感を増大させた現実があると思います。
産業廃棄物処理施設で受け入れに関する反応と、公共施設での受け入れの反応は違うというご指摘
「なるほど」と思いました。
ただ、今回の東京都内での震災廃棄物処理についても、
可燃物は焼却処理されますので、実質的には公共施設での受け入れとほぼ同じになっています。
その意味では、処理前と処理後の放射線量の測定値を公表するなど、
情報公開に配慮している東京都の姿勢は、なかなかまっとうなものだと評価しているのですが、いかがでしょうか。
放射線量等の情報公開による理解を地道に進めるしかないでしょうね。
一般廃棄物処理施設で処理する場合は、処理によって濃縮した放射性物質が付着した(可能性のある)施設の定期点検等のメンテナンス、定期的な測定、解体費用や作業員に対しての放射線防御対策、近隣住民の反対を抱えた最終処分場、といった処理に必要なトータルコストが、ダイオキシン騒動時のように高騰する可能性が高いことと、その費用を誰が負担するのかといった点が壁となっている気がします。
まあ、これも「自分のことばかり、考えている」と言われれば、そうですが少し同情してしまいます。
ねここねこ 様 コメントありがとうございました。
具体的な問題点のご提示をありがとうございます。
関東以北では、既に産業廃棄物の管理型処分場のコストが上がっているそうですね。
放射性物質の濃縮は、今後もついて回る問題ですので、東電の賠償や政府の補助など色々な手立てを取っていくことが不可欠ですね。
ありがとうございます。