法改正のための検討項目(1)-3(建設廃棄物の排出事業者は誰になる?)

中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「廃棄物処理法」改正のための具体的な論点整理が図られています。

排出事業者責任に関する検討項目としては、下記の内容が挙げられています。

・排出事業者の産業廃棄物保管行為を行政が把握できるようにするべき
・建設系廃棄物の排出事業者は誰になるかを明確化するべき
・マニフェストをもっと適切に運用させるべき
・委託先の現地確認を義務付けよ!
・電子マニフェスト使用を義務付けよ!

今回は、「建設系廃棄物の排出事業者は誰になるかを明確化するべき」について解説します。

建設廃棄物の排出事業者は誰になる?

保管行為をなぜ規制する必要があるのか?でご説明したとおり、建設系廃棄物は不法投棄などの不適切な処理が行われやすい廃棄物です。

建設工事の場合は、元請会社と下請会社が協働して施工されることが多いため、廃棄物をどの会社が出したかを特定するのが困難です。

誰が排出事業者かわからない場合は、廃棄物の処理責任者が定まらないこととなり、廃棄物の不法投棄などが横行しやすくなります。

「それでは困るので、工事の施工によってもっとも多くの利益を得る、『元請会社』を排出事業者としよう」
というのが、従来からの行政の運用方針でした。

「元請会社」が排出事業者となる場合、その現場で発生した産業廃棄物は、すべて元請会社が発生させたものとなります。

そのため、その廃棄物を下請会社が運搬や処分をしようとする場合、下請会社には産業廃棄物処理業の許可が必要となります。

下請会社は営業エリアのすべてで、産業廃棄物処理業の許可取得が必要ということになります。
例:大阪府全域を営業エリアとする下請会社の場合、大阪府の他、大阪市、堺市、東大阪市、高槻市の合計5ヶ所の許可を取ることが必要となります。

上記の運用の場合、排出事業者は元請会社に一本化されますので、廃棄物の処理責任や、マニフェストの発行者の問題などは非常に明確になります。

しかし、下請会社にしてみれば、「下請とは言え自社が施工しているのに、なぜ排出事業者にはなれず、方々の収集運搬業の許可を取らねばならないのだ!」という大きなデメリットがあります。

過去、廃棄物処理法には明確に書かれていない、上記の排出事業者は誰になるのかという解釈をめぐり、国(旧厚生省)が訴えられた事件があります。

一審の東京地裁では、「国の法解釈に違法性は無い」と、原告の下請会社が敗訴しましたが、
二審の東京高裁では、逆に「国の法解釈は違法だった」として、原告の請求が認められました。

これが有名な「フジコー裁判(平成5年10月28日東京高裁)」です。

「フジコー裁判」では、原告(下請会社)が建物の解体工事を自ら施工している以上、原告も排出事業者にあたるとされました。

フジコー裁判の判決を受け、旧厚生省は、平成6年に衛産第82号という通知を出し、

  • 原則は、元請会社が排出事業者となる
  • 当該建設工事のうち他の部分が施工される期間とは明確に段階が画される期間に施工される工事のみを一括して請け負わせる場合であって、元請会社が自ら総合的に企画、調整及び指導を行っていると認められるときは、元請と下請の両方が排出事業者となる

と、解釈を若干変更しました。

ただ、この通知を読むだけでは、原則の例外となる工事がどんなものかはよくわかりません。

どう解釈するかによって、排出事業者が全く異なることになりますので、行政としては判断を慎重に行う必要があります。

また、例外扱いとなる解釈基準を故意に悪用し、すべて自社施工であると言い張って、他人の廃棄物を無許可で処理する事業者が後を絶ちません。

そのため、この機会に、建設工事の排出事業者を「廃棄物処理法」に明記し、誤解が生じないようにしてはどうかという機運が高まっています。

是非、工事の具体的な条件分けをし、誰もがわかる基準を明確にしてもらいたいものです。

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