平成23年2月4日付課長通知の解説(6) 熱回収施設認定制度

平成23年2月4日付で環境省から発出された「環廃対発第110204005号、環廃産発第110204002号」の解説です。

今回は、「熱回収施設認定制度」についてです。
http://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010/attach/no110204005.pdf

第六 熱回収施設設置者認定制度の創設

1 認定の申請
 認定の申請書に記載する年間の熱回収率の算式は、次の算式のとおりとされているが、(1)~(4)の方法により算出することとしたこと(規則第5条の5の5及び第12条の11の5)。
 A(熱回収率)=(E×3600+H-F)/I×100

(1)「熱回収により得られる熱を変換して得られる電気の量」(E)(以下、「発電量」という。)は、認定を受けようとする熱回収施設以外への電力供給量及び当該熱回収施設内での自家消費電力量を含めた、発電した電気の量とすること。
(2)「熱回収により得られる熱量からその熱の全部又は一部を電気に変換する場合における当該変換される熱量を減じて得た熱量」(H)(以下、「発電以外の熱利用量」という。)は、発電以外の用途に用いられる熱量とし、認定を受けようとする熱回収施設から熱の供給を受けた周辺施設における熱利用量及び当該熱回収施設内での熱利用量を含むものとすること。ただし、当該熱回収施設内での熱利用量のうち、白煙防止や脱硝用等の排ガス再加熱に用いられた熱量は、当該熱量には含まれないこととすること。
(3)「燃料を熱を得ることに利用することにより得られる熱量」(F)(以下、「燃料の利用に伴い得られる熱量」という。)は、以下の式により算定すること。なお、燃料は、化石燃料(灯油、重油、ガス、コークス等)及びRDF、RPF、再生油、廃タイヤチップ、木質チップ等のうち購入された物とすること。
燃料の利用に伴い得られる熱量(F)[MJ]
 =0.2×化石燃料の熱量[MJ]+0.1×化石燃料以外の燃料の熱量[MJ]
(4)「当該熱回収施設に投入される廃棄物の総熱量と燃料の総熱量を合計した熱量」(I)(以下、「投入エネルギー量」という。)は、廃棄物の総熱量(IW)と燃料の総熱量(IF)の合計であるが、燃焼用空気予熱器等の熱回収により得られる熱量が当該熱回収施設の焼却炉又はボイラーに循環して利用されている場合には、当該循環利用される総熱量(IC)も当該値に含むこと。
① 廃棄物の総熱量(IW)
 廃棄物の総熱量(IW)は、以下のいずれかの方法により算出することとし、一般廃棄物処理施設にあっては年4回以上、産業廃棄物処理施設にあっては毎月把握するものとすること。
ア 焼却量および低位発熱量を計測する方法により算出する方法
イ 廃棄物焼却施設の燃焼管理データから推計する方法
ウ 焼却量を計測し低位発熱量を標準的な値に設定して算出する方法
② 燃料の総熱量(IF)
 燃料の総熱量(IF)は、燃料の投入量に当該燃料の低位発熱量を乗じて算出すること。
2 認定の基準
 認定は、規則に規定する熱回収施設の技術上の基準及び熱回収施設を設置している者の能力の基準を満たす場合に行うものとし、それぞれの基準は次のとおりとすること。

(1)熱回収施設の技術上の基準(規則第5条の5の6及び第12条の11の6)
① 一般廃棄物処理施設である熱回収施設にあっては規則第4条に規定する基準、産業廃棄物処理施設である熱回収施設にあっては規則第12条第1号及び第3号から第7号までに規定する基準並びに第12条の2に規定する基準に適合していること。
② 発電を行う熱回収施設にあっては、ボイラー及び発電機が設けられていること。ただし、当該熱回収施設がガス化改質方式の焼却施設である場合にあっては、発電機が設けられていることをもって足りること。
③ 発電以外の熱利用を行う熱回収施設にあっては、ボイラー又は熱交換器が設けられていること。
④ 熱回収により得られる熱量及びその熱を電気に変換する場合における当該電気の量を把握するために必要な装置が設けられていること。
 熱回収により得られる熱量は、蒸気、温水、空気等の温度、圧力、流量等や直接的又は間接的に熱量を求める機器等を用いるなどにより、熱利用機器における利用熱量を計測する方法、熱利用機器への入熱量を計測し同機器の熱回収効率を乗じて利用熱量を推定する方法、熱利用機器への入熱量と同機器からの出熱量を計測しその差を利用熱量とする方法(ただし、熱回収施設以外における熱利用の場合に限る。)のいずれかにより把握することとし、紙または電磁的方法により記録すること。
 その熱を電気に変換する場合における当該電気の量は、電力量計により常時測定することにより把握することとし、紙または電磁的方法により記録すること。
(2)熱回収施設を設置している者の能力の基準(規則第5条の5の7及び第12条の11の7)
① 次の基準に適合した熱回収を行うことができる者であること。
ア 年間の熱回収率が、10パーセント以上であること。
 年間10パーセント以上の熱回収率で熱回収を行うことができる者とは、申請書に記載された年間の熱回収率が10パーセント以上であること、熱回収率の算定の根拠を明らかにする書類に照らして当該熱回収率が妥当であること、かつ、過去(原則として、過去1年間とする。)の実績に照らして今後年間で10パーセント以上の熱回収率を達成することが可能であると認められることをもって判断すること。
 なお、年間の熱回収率を算定するのは熱回収が安定的に行われている期間とし、点検による休炉等に伴い熱回収が安定的に行われていない期間については、その期間が年間に延べ90日を超えない限り、熱回収率の算定の対象とする期間から除外することができること。
イ 当該熱回収施設に投入される廃棄物の総熱量と燃料の総熱量を合計した熱量の30パーセントを超えて燃料の投入を行わないこと。
 熱回収施設設置者認定制度は、主として廃棄物を処理する施設を対象としていることから、当該熱回収施設に投入される燃料の総熱量は、廃棄物の総熱量と燃料の総熱量を合計した熱量の30パーセントを超えないこととしていること。
② 当該熱回収施設における熱回収に必要な設備の維持管理を適切に行うことができる者であること。
3 認定証の交付
 都道府県知事は、産業廃棄物処理施設である熱回収施設について認定をしたときは、規則様式による認定証を交付しなければならないこと(規則第12条の11の10)。なお、一般廃棄物処理施設である熱回収施設についても、これに準じて認定証を交付されたいこと。
4 熱回収施設における廃棄物の処分等の基準
 熱回収を効率よく行うことができるよう、認定熱回収施設設置者が当該認定に係る熱回収施設において廃棄物の処分を行う場合には、廃棄物処理基準にかかわらず、以下の基準に従って処分を行うことができること(法第9条の2の4第3項、第15条の3の3第3項等)。

(1)通常の廃棄物処理基準においては、一般廃棄物及び産業廃棄物を焼却する場合には、安定的な燃焼状態を確保するため、廃棄物を定量ずつ燃焼室に投入することができる設備を用いて焼却することが義務付けられているが、認定熱回収施設においては、廃棄物を定量ずつ燃焼室に投入することができる設備を用いて焼却することを義務付けないこと。
(2)通常の産業廃棄物処理基準においては、産業廃棄物を保管する場合には、保管する産業廃棄物の数量が、当該産業廃棄物に係る廃棄物処理施設の1日当たりの処理能力の14日分を超えないようにしなければならないとされているが、認定熱回収施設においては、処理能力の21日分まで保管できること。
 なお、当該熱回収施設に船舶を用いて産業廃棄物を運搬する場合や、定期点検等の期間中に産業廃棄物を保管する場合等については、規則第12条の11の9に定める数量を保管できること。
(3)(1)及び(2)に定めるもののほか、熱回収施設において行うことが想定されない熱分解を行う場合及びし尿処理施設に係る汚泥を再生する場合の基準を除き、それ以外は通常の廃棄物処理基準と同様とすること。
(4)特別管理産業廃棄物についても(1)から(3)までと同様とすること。

地球温暖化対策の一環として、廃棄物処理法にも細々と盛り込まれた新しい規定です。

産業廃棄物の焼却炉の場合、初期設計のままで、熱回収率10%以上を達成するのは非常に困難であるため、認定を受けるためには何らかの設備投資が必要な施設が多いようです。

「外部燃料30%以下」という制限もあるため、廃油や廃プラスチック類などカロリーが高い産業廃棄物を燃やす施設でないと、認定を受けるのはほぼ無理ではないかと思います。

一部、先進的な廃棄物処理企業においては、安くはない設備投資をし、熱回収施設認定を目指しているところがありますが、
認定を受けるメリットが、廃棄物の保管数量が「14日分」から「21日分」になるだけですので、実利的なメリットはほぼありません。

国税庁などと協議をした上で、「認定を受ければ、認定施設に係る減価償却を1年とか3年の短期間で認める」というメリットが出せれば、爆発的に認定取得のニーズが高まるのは間違いありません(笑)。

大部分の廃棄物処理企業においては、当面は先行企業の様子見で十分かと思います。

にほんブログ村 環境ブログ 廃棄物・リサイクルへ

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ