家電のリサイクルと無料回収
非常に珍しい偶然ですが、5月23日に環境省と経済産業省から、家電の処理リサイクルに関する記者発表がなされました。
経済産業省
自治体における小型家電リサイクルの先進的取組事例を公表!
くしくも、同じ日に、正反対のベクトルから、家電の処理実態に焦点を当てている点が趣深いです(笑)。
まずは環境省の発表資料へのツッコミから
別添1 消費者アンケート結果
環境省の発表内容の最大の問題点は、下記の棒グラフです。
家電リサイクル法対象製品を回収業者に有償で渡したか否かをまとめたグラフですが、見た途端卒倒しそうになりました。
点線かっこでためらいがちに囲ってあるものの、環境省は、無償で引き渡すケースを「有価物」として扱っています。
これは明らかに法律の解釈ミスです。
この資料が独り歩きして、「0円」=「有価物」=「廃棄物ではないので、処理業の許可不要」という屁理屈を錦の御旗のように押し立てる無法者が急増することを危惧しております。
今の環境省担当官は知らないかもしれませんが、
旧厚生省当時から、「無償」=「取引価値の無いもの」=「廃棄物」というのが、行政の統一解釈でした。
環境省自身が踏襲している、最高裁判例でも引用された「総合判断説」でも、そのように判断するのが自明です。
もっとも、廃棄物処理法には、「専ら物」の存在があり、くず鉄などを製鋼原料その他に再生利用している事業者の場合は、処理費を徴する場合でも処理業の許可不要という制度があります。
実態として、家電製品などを「雑品(ざっぴん)」と称して、くず鉄の一部として処理している専ら事業者が多いのも事実です。
しかしながら、今回の調査では、そのような専ら事業者ではなく、各地でトラブルを起こしているゲリラの無許可業者が対象であるはず。
そのようなモグリ業者を、古式ゆかしい専ら事業者と同一視するのは、専ら事業者に失礼というものでありましょう。
環境省としては、専ら事業者への配慮として、「無償を有価物扱い」したのであれば、はっきりと注釈としてそのように記載をするべきです。
このままでは、遠からず、「環境省公認!」という、時代錯誤な広告が現れるような気がします・・・
その他、
「(回収業者が)一般廃棄物収集の許可」を持っていたと回答した利用者が78件もあったとのことですが、かなりの眉唾物です。
そもそも、本当に一般廃棄物の許可を持った事業者なら、わざわざ利幅の少ない無料回収などをするはずがないからです。
実際問題として、廃品を引き渡す際に、「あなたは一般廃棄物収集運搬業の許可をお持ちなんですか?」と尋ねる人がどのくらいいるのでしょうか?
おそらくそんな人は皆無でしょう。
「廃棄物がいっぱい置かれてあるから、この業者は正式な業者なんだろう」という思い込みを回答したにすぎないと思われます。
(+_+)
お口直しに、経済産業省の発表資料を見てみましょう
取り上げた事例が、富山県や愛知県の自治体・事業者ばかりであるのが残念ですが、
事業者が地道な取組で家電リサイクルに貢献している姿に感動しました。
まだまだ利幅がそれほどない、半ば社会貢献事業のような規模であるかと思いますが、
日本の将来を見据えると、絶対に必要な事業であると思います。
是非とも、このようなトップランナーのみならず、各地の事業者が立ち上がることで、
取引市場の拡大化と安定化を実現していただきたいものです。
せっかくノウハウ(の概要)を公開してくれているのですから、ありがたく参考にさせていただきましょう!
現段階のリサイクル技術では、
「選別の精度」と「選別の効率性」を両立させることがポイントのようですね。
民間事業者の知恵を発揮すれば、国外にも打って出られる技術が開発できるはずです!
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2011年5月24日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
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尾上様
初めてメールします。いつも拝読させて頂いております。小生はHOYAという会社で廃掃法に関係する業務をしております。
尾上さんのコメントが非常に有意義になっておりますが、今回の「点線かっこでためらいがちに囲ってあるものの、環境省は、無償で引き渡すケースを「有価物」として扱っています。これは明らかに法律の解釈ミスです」というコメントですが、これを正式に環境省(発表者)に伝えるならば、無償の右側に有価とあり、無償と有価は別物とか、一般市民の理解を得る為、便宜上有価(右側)の枠に加えたまでで、法解釈は何ら今までと変わりは無いと言われるのがオチではないでしょうか。老婆心ながらコメントさせて頂きます。
環境展ではセミナーの講師をなされるとの事、残念ながら小生は参加できませんが、今後共宜しくご指導の程お願い申し上げます。以上
高柳 様
コメントをありがとうございます。
>無償の右側に有価とあり、無償と有価は別物とか、一般市民の理解を得る為、便宜上有価(右側)の枠に加えたまでで、法解釈は何ら今までと変わりは無いと言われるのがオチではないでしょうか。
私自身も、「実は環境省は無償と有価は別物という解釈」であってほしいと思っています。
環境省の方に確認はしていませんが、担当者の気持ちとしては、そうなのかもしれません。
ただ、このグラフには、無料の左横に明確に太線が引かれてありますので、
グラフだけを素直に読む限り、無料を有価物取引の一部として扱う意図だと思われます。
もし、無料を有価物とは別の区分とするならば、無料の左に太線を引く必要がないからです。
環境省の矛盾を追及するのが趣旨ではありませんので、担当者の解釈としては、「従来と変更なし」で構わないと思っていますが、
いみじくも行政発表資料である以上、誤解を招きやすい書き方に大胆さを発揮するべきではないと考え、問題提起をした次第でございます。
環境省の見解はさておき、排出事業者の立場で、今回のような少し抽象的な論点に反応いただいたことを、大変ありがたく思っております。
高柳様のように、アンテナを高く掲げた排出事業者担当者がもっと増えると、世の中の有様も変わってくると思います。
今後ともよろしくお願い申し上げます。