平均搬出量の213倍超過の違反!?

山陽新聞WEB に面白い(?)記事が掲載されていたので、記事全文と写真を転載します。

限度200倍超の産廃処理せず岡山県警などが解体業社長逮捕
※本ブログでは、事例の問題点や法律の構造を解説するのが目的であるため、業者名や容疑者名は削除しています。

 法が定めた許容量の200倍を超える産業廃棄物を保管しながら岡山市の改善命令に従わなかったとして、県警生活環境課と岡山西署は19日、廃棄物処理法(改善命令)違反の疑いで同市北区高松稲荷、家屋解体業社長(73)を逮捕した。

 逮捕容疑は、同社が管理する同石妻の産廃保管場に1日平均の拠出量などに応じて決まる保管限度量(14・3立方メートル)の213倍の約3057立方メートル、同高松稲荷の保管場には限度量(36立方メートル)の45倍の約1632立方メートルの木くずやがれき、廃プラスチックを保管。岡山市から昨年3月18日付で改善命令を受けたにもかかわらず、期限の今年1月末までに撤去などの措置を取らなかった疑い。「処理する金がなかった」と容疑を認めている。

 同署や市によると、容疑者は2006年12月にも同様の改善命令を受け、一時期は保管量が減少。その後、工事を請け負った解体現場の廃材を持ち込み再び増加したため、市が2度目の改善命令を出していた。

報道機関は、「基準値の●●倍超過の違反」という表現が好きなのですが、
今回の報道では、新聞社側の独自調査というわけではなく、発表側の岡山市がそのような表現を選んだものと思われます。

ただ、記事のタイトルにも書いた「平均搬出量」というものは抽象的な概念に過ぎないため、本来なら、今回のように立件の根拠として使うべき数字ではありません。

なぜなら、「搬出量」の「平均」にすぎないため、この数値で責任を追及するためには、「1日の搬出量」と「平均を取る期間」を最初に決める必要があります。

しかしながら、そもそもの「1日の搬出量」自体が、絶対不変の数値ではありません。
※ちなみに、平均搬出量の7倍までが廃棄物処理法で認められる保管容量です。

なぜか?
例えば、車10台を所有している企業の場合、単純に車10台分が1日当たりの搬出量になると思いたくなりますが、
10台すべてを3回使い、保管場所と運搬先を3往復させることが可能であれば、
搬出量は一気に1日当たり30台分となるからです。

岡山市としては、おそらく収集運搬業の申請書類に書かれた、運搬車両の車検書上の能力を単純に合計しただけではないかと思われます。

一般的な傾向としては、行政処分や刑事事件として立件する場合、
搬出量から保管容量の限度を算出するのではなく、もっとシンプルに「保管基準」違反で追及する方が正道です。

現実問題として、正確な測量でもしない限り、「3,057立方メートル」という非常に細かい数値で堆積量をカウントするのは不可能です。

今回のケースでは、岡山市と警察が測量をしたのかもしれませんが、そんなことをやる暇があるなら、もっと迅速に指導をするべきでした。

現場の写真を見る限り、
廃棄物の「保管高さ」や「勾配」などが、明らかに保管基準に違反しています。

わざわざコストをかけて保管容量を測定するよりは、簡易に確定できる保管基準違反で指導・立件する方が望ましいのは言うまでもありません。

昨年3月に出した改善命令に基づき撤去期限が今年1月ということで、約10か月も猶予があったことも問題です。

行政の常識からすると、せいぜい半年が限度ではないかと思います。

方法論には批判したくなるポイントが多いですが、やっていること自体は行政として毅然とした対応だと思いますので、
今後は詰めの甘いやり方ではなく、誰もが反論できない方法で証拠を集めてくれることを望みます。

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コメント

  1. 元地主孫娘 より:

    本被害地である遊休地はH10年以前より市が監視していますが現在も搬入が続いています。太陽光事業に解決策を求め38円の権利もつけましたが、市の立会いの結果、土地全てで70cmの瓦礫を撤去するように言われました。処分費は安い業者でも9800万と、事業主から諦めの報告がありました。
    空地の状態が続く限り、被害に遭うのは近隣住民です。住民が市に訴えたら、事業が実現すると思われますか?

  2. 尾上雅典 より:

    私有地の管理については、一般論としてはその私有地の所有者の責任となります。

    ただし、廃棄物の堆積によって生活環境保全上の支障が生じている場合は、行政から行為者に措置命令が発出されることも有り得ます。

    その場合は、近隣住民等が行政に措置命令のお願いをすることはもちろん可能ですが、裁判以外で住民が行政に措置命令を強制できるわけでもありませんので、具体的な被害状況の有無やそのおそれを行政に理解してもらえるかがポイントになると思います。


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