廃棄物処理制度専門委員会(第4回)の傍聴記

「中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(以下、「専門委」)」の第4回目は、8月2日(火)に東京で開催されました。

※配布資料は、「中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(第4回)の開催について」に掲載されています。

今回は、関係者からの意見ヒアリングと、4回の会合で出された論点の整理の2本柱でした。

そのため、通常は10時から12時までの開催となるところを、10時から13時までの延長開催となりました。

まずは、関係者からの意見ヒアリングについて

今回の意見ヒアリング先は、
・一般社団法人全国清掃事業連合会
・一般社団法人日本環境保全協会
の2者でした。

率直に申し上げると、
両団体に対して事前に持っていたイメージは、「一般廃棄物処理業者が作った業団体」というもので、「既得権益の保護を声高に訴えるのではないか?」と勝手に感じておりました。

しかしながら、それは単なる偏見に過ぎず、日頃の事業活動を通じて感じている廃棄物処理制度の問題点を真摯に語っておられたことに、新鮮な驚きがありました。

以下、各関係者の意見主旨と、それに対する筆者の感想を記します。

一般社団法人全国清掃事業連合会

いきなり、資料1の2pで、

今般の法制度の点検や見直しにあたっては 、廃棄物処理法が「生活環境の保全及び公衆衛生の向上」を目的としており、排出事業者の経済合理性や廃棄物処理業者の振興を目的とした法律ではないことを再認識し、適正処理や排出責任の重要性という原点に今一度立ち返り 、国民・住民・消費者の視点に十分立った検討が必要であり、排出事業者や処理事業者の経済合理性、利便性を図ることのみに重点を置き、適正処理・排出責任がおろそかになるような規制緩和や法見直しを行うべきではないとの考え方に基づき、以下の意見を提出するものです。

とあり、自業界の権益擁護を微塵も念頭に置いていない姿勢に清々しさを感じました。

資料1にあるとおり、意見要旨は

1.処理責任に着目した廃棄物の区分について
(地方公共団体の判断による産業廃棄物の指定制度について)
(建築物の解体時における残置物について)
2.地方公共団体の規制権限の及ばない第三者(ブローカー)への対応について

でしたが、

「地方公共団体の判断による産業廃棄物の指定制度について」とは法律制度の話ではなく、
「市町村が、本来は一般廃棄物に該当する物なのに、自施設で処理したくない物についてすぐに『産業廃棄物だから業者に委託せよ』と言うのは、市町村の責任放棄だ!」という話です。

至極真っ当なご意見と思いましたが、法律改正に盛り込まれるかどうかは微妙なところです。

「建築物の解体時における残置物について」については、資料1の7pに掲載されている岐阜県内における「解体工事前に残置物の処分が必要です」というチラシの啓発効果に関する説明でした。

「他の自治体においても、行政と解体業者、一般廃棄物処理業者の協力により、一致団結して啓発していただきたい」との提言をされていました。

まったく同感です。

ただ、市町村が残置物を受け取りたがらないのは、
「『これは施主が残した残置物だ』と称して、建設業者が不当に廃棄物を搬入することを恐れているのではないか?」と、個人的には考えています。

たしかに、施主が工事発注前に処分するのが大原則ですが、
元々の所有者が死亡したり、居所がわからなくなったケースも相当多いと思われますので、そうした場合には、「事務管理」で元請業者が産業廃棄物として処理せざるを得ないのでは?とも思います。

最後の「地方公共団体の規制権限の及ばない第三者(ブローカー)への対応について」が一番面白い質疑でした。

ここでいうブローカーは、「無許可受託をするブローカー」ではなく、「管理会社」のことでした。

この部分では、説明員の方の説明がかなりヒートアップし、プロレスの実況中継を彷彿とさせられました(笑)。

個人的には、「管理会社の存在自体が悪」なのではなく、「管理会社がやって良いこと」「管理会社がやると違法なこと」の峻別が必要と感じました。

このあたり、いずれブログで取り上げるのも面白そうです。

一般社団法人日本環境保全協会

こちらも先の一般社団法人全国清掃事業連合会と同様に、自業界の権益保護を念頭とした発言は一切ありませんでした。

むしろ、

 廃棄物処理の原点は「衛生の確保」である。
 そのためには、市民、市町村、処理業者の連携が重要かつ不可欠であり、これまでの長い経験を踏まえ、廃棄物の減量化やリサイクルの推進などの視点が加わって構築された現行の廃棄物処理制度の下において、現在は十分な連携が取られ適切に処理が行われている。
 今後、新たな視点が加わっても、常に廃棄物処理の原点である「衛生の確保」が担保されるよう、廃棄物処理制度の運用が行われるべきである。

と、まとめに書かれているとおり、市民への啓発や、市町村との連携を積極的に図っていきたいと、誠実に主張されていたのが印象的でした。

「人口減少に伴い、廃業する一般廃棄物処理事業者が増えているのではないか?」という質問に対し、
「我々は定期運行バスと同じ役割を担っていると考えています。人口は減ったとしても廃棄物は必ず発生しますので、それを回収して運ぶ仕事を続けるのみです」と、静かに、しかし自信を持って答えておられました。

また、「市町村の職員が数年で異動してしまうので、廃棄物処理法をよく知った人が年々少なくなる」と嘆いておられました。

論点整理

資料3「廃棄物処理政策における論点整理(案)」で、
4回の会合において委員や説明員から出された意見から共通項を抽出し、カテゴリーごとに分類して整理されています。

「こんなこと言ってたか?」と思いたくなるくらいの、大雑把な要約が多いように思いました。

また、例えば愛知県が言っていた意見をそのまま論点として載せるなど、「環境省としての法律解釈はどうなのよ?」と疑問に思う部分もありました。

良くも悪くも、今の官僚の方には狡さが無く、言われた意見を愚直に集約し、そのまま整理をしたという印象です。

一昔前の官僚なら、筋書きを事前に作るのみならず、事前の根回しを入念に行ったうえで、審議会の議論の方向性をある程度コントロールしたものですが・・・

現段階では論点案が抽象的であるのは仕方がないのですが、
そこに自分の狭い関心分野に引っ掛かる面を見つけると、些末な文章表現に突撃を敢行する委員が多かったので、
聞いていてだんだん腹が立ってきました。

そのため、12時ちょうどに一人だけ途中退室しました。

もちろん、目立たぬようにサッと静かに退室しましたが(笑)。

傍聴者の中では、開始一時間前に一番乗りし、中途で一番最初に退室するという珍しい経験ができました。

現段階では項目としては多数挙げられているものの、内容が全く練られていない状況ですので、資料を一読するだけで十分かと思います。

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