「船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案」が閣議決定される

少し前の情報となりますが、個人的に関心を寄せていた法案が閣議決定され、いよいよ国会で審議されることになりました。

2018年3月9日 国土交通省発表 「「船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案」を閣議決定 ~安全・環境に配慮した船舶リサイクル制度を創設します~

国際ルールの下で、安全・環境に配慮した船舶の解体を確保するため、適正な船舶リサイクル制度を構築する「船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案」が、本日閣議決定されました。

1.背景
 船舶の解体は、労働コストなどの観点から、主に開発途上国で実施されていますが、これらの国での労働災害や環境汚染が国際問題化したことを踏まえ、2009年に、国際海事機関(IMO)の下で、安全・環境に配慮した船舶の再資源化のための国際ルールを定める「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港条約(船舶再資源化香港条約(シップ・リサイクル条約))」が採択されています。

2.概要
 本法律案は、シップ・リサイクル条約に基づく国際的な船舶リサイクル制度を国内で具体化するものです。

(1)有害物質一覧表の作成
 特定船舶(※)でEEZ外を航行する船舶の所有者に対し、当該船舶に含まれる有害物質の使用場所、使用量等を記した有害物質一覧表の作成及び国土交通大臣の確認を受けなければならないものとします。
※特定船舶:総トン数500トン(長さ約40m)以上の船舶

(2)再資源化解体業者の許可
 特定船舶の再資源化解体(リサイクル)を行おうとする者に対し、施設ごとに、主務大臣(国土交通大臣、厚生労働大臣及び環境大臣)の許可(5年ごとの更新制)を取得しなければならないものとします。

(3)特定船舶の再資源化解体の目的での譲受等・譲渡等の手続き
[1]再資源化解体業者がリサイクルの目的で特定船舶の譲受等を行おうとするときは、再資源化解体業者に対し、再資源化解体計画の作成及び主務大臣の承認を受けなければならないものとします。
[2]船舶所有者がリサイクルの目的で特定船舶の譲渡等を行おうとするときは、当該船舶所有者に対し、当該譲渡等について国土交通大臣の承認を受けなければならないものとします。

法律制定後は「シップリサイクル法」と呼称されることになると思われます。

「リサイクル」という名称が付くものの、造船ドッグ並の設備が必要な事業ですので、廃棄物処理企業に特需が発生するわけではありません。

アスベストその他の有害物質の管理や、船舶解体時の安全衛生徹底等が主眼となりますので、国土交通省、厚生労働省、環境省の3省共管となるようです。

それだけで許可手続きの大変さが容易に想像できます。

とはいえ、日本が国際競争力を発揮できる数少ない分野の一つであるのは確実です。

少しでも多くの事業者が名乗り出てくれると良いのですが。

今のところは、北海道の室蘭一帯が船舶解体の実証研究等で最も先行している状況です。

シップリサイクルについては、国策としても、もっと盛り上がってくれることを期待しております。

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