廃棄物処理法施行規則改正(令和7年4月22日)Vol.2「電子マニフェスト使用時の再生に関する報告」(前編)
「令和7年4月22日付環境省令第15号」に基づく廃棄物処理法施行規則改正の第2回目です。
今回は「電子マニフェスト使用時の再生に関する報告」について。
電子マニフェストを使用した場合の産業廃棄物処理業者の報告事項については、
廃棄物処理法第12条の5
3 運搬受託者又は処分受託者は、前2項の規定により電子情報処理組織使用義務者又は電子情報処理組織使用事業者から報告することを求められた場合において、当該報告に係る産業廃棄物の運搬又は処分を終了したときは、第12条の3第3項及び第4項の規定にかかわらず、環境省令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して、環境省令で定める期間内に、情報処理センターにその旨(当該報告に係る産業廃棄物の処分が最終処分である場合にあつては、最終処分が終了した旨)を報告しなければならない。
廃棄物処理法施行規則第8条の33(情報処理センターへの運搬又は処分の終了の報告)
法第12条の5第3項の規定による運搬又は処分の終了の報告は、次の各号に掲げる区分に応じそれぞれ当該各号に定める事項を情報処理センターに報告することにより行うものとする。
- 一 運搬の終了 次に掲げる事項
- イ 運搬を担当した者の氏名
- ロ 運搬を終了した年月日
- ハ 積替え又は保管の場所において受託した産業廃棄物に混入している物(有償で譲渡できるものに限る。)の拾集を行つた場合には、拾集量
- ニ 当該産業廃棄物に係る登録番号
- 二 処分の終了 次に掲げる事項
- イ 処分を担当した者の氏名
- ロ 処分を終了した年月日
- ハ 当該処分が最終処分である場合にあつては、当該最終処分を行つた場所の所在地
- ニ 当該産業廃棄物に係る登録番号
同法施行規則第8条の34(情報処理センターへの報告期限)
法第12条の5第3項の環境省令で定める期間は、運搬又は処分を終了した日から3日(休日等を除く。)とする。
と規定されているところですが、
今回の施行規則改正により、「廃棄物処理法施行規則第8条の34の3の2」という条文が新設され、報告事項がさらに増えることになります。
廃棄物処理法施行規則第8条の34の3の2(処分受託者の情報処理センターへの再生に係る報告)
処分受託者は、法第12条の5第3項の規定による報告(産業廃棄物の処分が最終処分であるときに限る。)を行うとき又は同条第4項の規定による報告を行うときは、受託した産業廃棄物について最終処分が終了するまで又は再生を行うまでのすべての処分について、各処分ごとに、情報処理センターに次に掲げる事項を報告しなければならない。
- 一 処分を行つた者の氏名又は名称及び許可番号
- 二 処分を行つた事業場の名称及び所在地
- 三 処分方法
- 四 処分方法ごとの処分量(当該処分量を的確に算出できると認められる方法により算出される処分量を含む。)
- 五 処分後の産業廃棄物又は再生された物の種類及び数量(当該数量を的確に算出できると認められる方法により算出される数量を含む。)
「すべての処分について、各処分ごとに、情報処理センターに次に掲げる事項を報告しなければならない」
なかなかすごいことが書かれています。
環境省は、2024年12月13日に開催された中央環境審議会循環型社会部会(第58回)において、電子マニフェストの報告事項を追加する理由を次のように説明しています。
排出事業者にとって、最終処分までの処理フローが見える化され、処理責任が貫徹できる。
また、中間処理業者が直接再資源化していない場合でも、二次マニフェスト以降で再資源化されていれば、排出事業者がその寄与を確認することができる。
つまり、排出事業者は、委託した産業廃棄物が再資源化されているかどうかを知った方が良いので、「処分業者に個別の取引ごとに再資源化(処分)量を電子マニフェストで報告させる」ことを改正の目的としています。
上掲中央環境審議会循環型社会部会(第58回)では、施行規則改正後の電子マニフェスト報告のイメージとして、次のように説明がされていました。
「燃えがら」の処分量までカウントしているため、帳簿形式にそれぞれの処分量をまとめると「104kg」となり、委託量の「100kg」を上回るように見えてしまいます。
埋立処分量は括弧書きや別枠のカテゴリーにする等の工夫をしないことには、処理フローの「見える化」ではなく、「見にくい化」になりそうです。
何よりも根本的に問題があるのは、「個別の取引ごとに」2次マニフェスト以降の処分量を報告させることです。
産業廃棄物処理に携わっている人間で、このようなデータ収集が可能であると本気で考えている人は、おそらく皆無と思います。
試しに、2025年2月に行った講演で参加者(全員産業廃棄物処理企業にお勤め)に、「このデータを正確に入力することが可能と思っている方は挙手してもらえます?」と聞いてみたところ、手を挙げる人は皆無でした。
参加者全員が極度の恥ずかしがり屋だったわけでは決してなく、皆さん「絶対に無理」という本心を口にしていましたし、少しでもマニフェスト運用に携わった経験のある方なら、これがいかに不可能であるかを実感されていることと思います。
なぜ現実的には不可能なのか?
その理由は、別の記事で詳細を書きます。
電子マニフェストの改正だけで3回の連載を予定しています。
なお、電子マニフェストの報告事項に関する廃棄物処理法施行規則改正の施行日は、「令和9(2027)年4月1日から」となっています。
« 「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」を提出し忘れるとどうなる?
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2025年6月23日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
カテゴリー:2025年改正
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私の事業所は排出元です。廃プラスチック(グリスなどの油脂で汚れたもの(おそらく焼却する)、プラスチックシートカスや原料袋(おそらくRPF化)、木くず(バイオマス燃料として破砕し売却)など、当社は破砕の中間処理を委託しているつもりでも健全な事業活動の一環として再生して売却することを中間処理業者は選択するはずです。その方法や結果が「見える化」されるとなると(当社はしませんが…)、「再生して売却しているのだから処分費を値下げしろ!」などと言い始める排出元もいるはずです。
「わたくしどもの会社は高度な再生作業をおこなえる能力のある中間処理業者に廃棄物の処理を委託して適正処理に努め、環境負荷の低減に寄与しています」、くらいのことを言える世の中や制度設計になって欲しいものです。
コメントいただき、ありがとうございました。
>「再生して売却しているのだから処分費を値下げしろ!」
これ本当に言い始める会社が現れそうですね。
私が想定していなかった将来像ですので、早速次の2回目の記事に取り入れさせていただきます。