プラスチックごみ分別回収の課題

プラスチック資源循環促進法の施行がいよいよ明日からとなりました。

しかるに、環境省の普及啓発サイトでは、「認定申請」については、「ただいま準備中です。」のままです(笑)。

プラスチックごみを住民から回収する地方自治体においては、各地の事情によって内容や開始時期が大きく異なるものの、リサイクル開始を表明するところが現れ始めました。

2022年3月29日付 NHK
福岡市 ペットボトルを再びペットボトルにリサイクルへ

プラスチックごみの削減に向けて市は、来月から再びペットボトルとしてリサイクルし、繰り返し利用する取り組みを試験的に行うことになりました。
具体的には、回収したペットボトルの半分にあたる、1年間におよそ1900トンを事業者に売却し、ペットボトルにリサイクルします。
残り半分は、これまでと同様に食品トレーなどにリサイクルされますが、今回の取り組みを検証し、将来的に全てをペットボトルに再生できるか検討することにしています。

あくまでも「試験的取組み」とのことですが、回収したペットボトルの半分をペットボトル原料に再加工する業者に売却し、残り半分をペットボトル以外のプラスチック原料に再加工、という現実的な実証となるようです。

福岡市の場合、素材をPETに限定するため、選別の手間をそれほど掛けることなく、効率的なリサイクルが可能と思われます。

「できるところから」「できるだけ金を掛けずに」「無理なく」始めることが可能なスキームですし、PETの再生利用需要が急増している環境もありますので、かなり有望なリサイクル手法と言えるのではないでしょうか。

次は、単一素材ではなく、プラスチックごみ全般の回収を検討している岡山市の事例
2022年3月28日付 NHK
岡山市 再来年からプラスチックごみ分別して集めリサイクルへ

岡山市は、二酸化炭素の排出量を減らそうと再来年3月から、プラスチックごみを分別して集めリサイクルすることになりました。

岡山市では現在、カップめんや洗剤などの容器のほか、雨がっぱやバケツといったプラスチックごみについては「燃えるごみ」として、有料のごみ袋で収集し焼却されています。
岡山市は、脱炭素社会の実現に向けて二酸化炭素の排出量を減らそうと、再来年3月からプラスチックごみを分別して集めリサイクルすることになりました。
回収は週1回で、透明か半透明の袋に入れて「燃えるごみ」などと同じごみ集積所に捨てるということです。
プラスチックごみの回収量は、年間およそ8000トンと推計され、リサイクルによって減らせる二酸化炭素は、6000世帯の一般家庭が、1年間に排出した分に相当する1万7500トンと見込まれています。

回収開始予定時期は、2024年3月からとのことですので、2年近く先の計画となりますが、「8000トン」の回収を見込むという、こちらもかなり意欲的な計画です。

「あらゆるプラスチック製品を一つの袋にまとめて、週1回回収する」とのことですので、福岡市の例とは異なり、「袋ごとリサイクル」は困難と思われます。

最初は「不可能」と記そうかと思いましたが、技術的には「可能」なようですので、断言は避けました。

「袋丸ごとリサイクル」の場合、PETやPE等の単一の素材ごとに再生することは「不可能」ですので、それらを混合した製品を作ることになりますが、果たしてそのような「半端もの」の製品の需要が永遠にあるのかどうか?

そのようなリサイクル事業の場合、プラスチックごみの回収量が増えれば増えるほど、必然的に供給過多になりますので、事業の永続性が乏しくなっていくことになりますが、別の機会に改めて考察することとして、岡山市の話に戻ります。

岡山市の場合は、「回収した袋丸ごとリサイクル」ではなく、「回収後に数種類の素材ごとに分別」するという、現実的な手段に落ち着くものと推測します。

この場合、「年間8,000トン」という、大量のプラスチックごみの選別を誰が行うのかが問題となります。

「年間8,000トン」になると、「数人の作業員が手作業で分別」というわけにはいかず、「一定規模以上の選別ラインの設置」が不可欠となります。

一般廃棄物のプラスチックごみの選別に最適化した設備を有する事業者は、現時点ではいないと思われますので、岡山市が自らそうした設備を設置するのかもしれません。

民間事業者が岡山市の委託を当て込んで、数億円規模の投資を決断することは、この御時世では望めそうにありませんが、実際はどうなのでしょうか?

岡山市が設置するにしても、雑多なプラスチックごみが入ってくるのは間違いないため、実際の選別の際には相当なトラブルが発生しそうです。

このように考えると、「袋丸ごと回収」は、「小規模自治体で、かつ既設の選別ラインを持つ事業者がその自治体内にいる」場合でないと、かなりしんどいスキームに思えました。

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