昭和61年2月26日付衛環39号 「廃棄物収集運搬作業時における労働安全衛生対策の徹底について」

【廃棄物収集運搬作業時における労働安全衛生対策の徹底について】

公布日:昭和61年2月26日
衛環39号

(各都道府県廃棄物処理担当部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知)

 廃棄物処理事業における事故の防止については、かねてより特段の御配慮を願っているところであるが、最近、収集運搬車両のテールゲートが落下し、これにはさまれて死亡する等廃棄物の収集運搬作業中の事故が多発している。
このため、厚生省においては、廃棄物処理事業に携わる職員の安全確保は事業実施上の最優先課題であるとの観点から、昨年一二月に「清掃事業における安全衛生管理要綱」(昭和五七年七月二八日付け労働省通知基発第四九九号)の遵守徹底及び職員における安全衛生教育の実施について貴管下市町村及び一部事務組合に対し指導方お願いしたところであるが、いまだ同様の事故が発生している状況である。
 ついては、今後の類似事故の発生を防止し、廃棄物の収集運搬作業時における安全を期すため、それぞれの市町村及び一部事務組合が別紙の事項を十分参考にした上で、標記労働安全衛生対策の徹底に、より一層努められるよう貴管下市町村及び一部事務組合に対する指導方お願いする。

別表
 テールゲート落下防止等について

1 テールゲート落下事故防止について

(1) 別表に掲げる型式の収集運搬車両については、廃棄物がはさみ込まれたままテールゲートを上昇させると、はさみ込まれた廃棄物を取り除いた時点でテールゲートが落下するので、速やかに架装メーカーと協議し、廃棄物がはさみ込まれた場合にはテールゲートが上昇しない機構とする等安全対策を実施すること。
なお、この安全対策は、架装メーカーにより実施されることとなっているので参考のため申し添える。
(2) やむを得ず、(1)の安全対策の実施前の車両を使用する場合は、現場の責任者は、乗務又は勤務する者に対し、廃棄物がはさみ込まれた場合には、直ちに収集を中止し、車庫へ戻ること、あるいはやむを得ずテールゲートを上げる場合には必ず安全棒を使用すること等十分な安全上の注意を与えて業務を行わせること。
2 巻き込み事故防止について

(1) 回転板の回転周期については、これが異常に速くなると巻き込みの危険性が増大するので、定期的に点検し、所定の周期に調整すること。
(2) 廃棄物が回転板にはさまって回転板が回らなくなった場合には、回転板を前後にボタン操作で揺さぶることにより廃棄物を除去することにとどめ、身を乗り出してはさみ込まれた廃棄物を取り除くことは厳に避けるよう指導すること。
(3) 車庫等において、やむを得ず、入手により回転板にはさみ込まれた廃棄物を取り除く場合には、P・T・Oを断つか又はエンジンを切ったことを確認した上で行うこと。
3 その他

(1) 木材等、収集運搬車両の仕様に合わない廃棄物を積み込む場合に廃棄物のはさみ込みが発生する危険性が大きいので、適切な使用機材の検討等収集運搬計画の見直しを行うとともに、住民に対し、廃棄物の適切な排出方法等について所要の指導、広報等を実施すること。
(2) 1の(1)の安全対策の実施により、収集運搬作業中の廃棄物のはさみ込みの発生により中途で車庫に戻る場合が増加すると思われるので、今後の推移をみながら、代車の整備に努めること。
(3) 収集運搬車両の新車の購入に際しては、安全性に留意した仕様となるように努めること。
なお、安全性を考慮した標準仕様については、現在、(社)全国都市清掃会議廃棄物処理技術開発センターにおいて検討中であるので申し添える。

※解説
市町村のごみ収集車を念頭に置いた通知ですが、産業廃棄物運搬車でも同様の事故が発生しています(現在でも)。

昭和60年代当時の安全意識を示す格好の通知となっています。

本来、このような通知は都道府県に出して終わりというものではなく、車両メーカーに安全対策の徹底をさせるべきです。

これでは、「怪我と弁当は自分持ち」を地で行く、精神論一辺倒の安全対策です。

労働災害対策は、精神論ではなく、事故を起こそうと思っても起こせない仕組みを施すことが基本となります。

残念ながら、このような考え方も、近年になって徐々に注目され始めました。

昭和60年代当時の時代背景を振り返ることで、現代にも必要な理念を知ることができます。

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