令和3年度廃家電の不法投棄等の状況について

2023年3月30日付で、環境省から「令和3年度廃家電の不法投棄等の状況について」の発表がありました。

■ 不法投棄等の状況
(1) 不法投棄台数
 令和3年度の不法投棄された廃家電4品目の回収台数(以下、「不法投棄回収台数」という。)のデータを取得している1,706市区町村における不法投棄回収台数をもとに、人口カバー率で割り戻して算出した全国の不法投棄回収台数(推計値)は、45,000台で、前年度と比較して減少しました。
(2) 品目ごとの割合
 品目ごとの割合は、エアコンが2.2%、ブラウン管式テレビが28.6%、液晶・プラズマ式テレビが32.5%、電気冷蔵庫・電気冷凍庫が21.4%、電気洗濯機・衣類乾燥機が15.2%でした。

令和3年度の廃家電不法投棄推計台数は45,000台と、平成13年度の統計開始以降、最小の数値となりました。

不法投棄が減少すること自体は喜ばしいことではありますが、日本国民のモラルが向上したためというよりは、「ごみ回収ステーション」に、家電リサイクル法対象製品がいまだに定期的に不法投棄されている現状を鑑みると、「人口減少でそもそも家電が売れていない」ために、「家電の廃棄機会が激減した」せいではないかと思います。

さて、数年前の統計紹介時にも触れましたが、ある統計処理の問題点を再度指摘します。

「市区町村の人口」と「その市区町村が回収した廃家電の台数」を比較した内容ですが、
結果だけを見ると、「人口の多い市区町村」では「不法投棄が少なく」、逆に、「人口の少ない村」では「不法投棄が多い」と、とらえてしまいがちです。

正確には、「不法投棄台数」ではなく、「不法投棄回収台数」ですので、
「人口が少ない村」、すなわち「独自財源の乏しい村に不法投棄物を回収させている」と考えるべきですが、
環境省の発表内容にはそうした注釈が一言も書かれていません。

少し想像してみるとすぐわかることですが、
「村からわざわざ都心に出かけて不法投棄をする人」よりも、「都心から車で郊外を訪れて不法投棄をする人」の方が圧倒的に多いはずですので、財政的な弱者である「町村部」に、「不法投棄物の回収」という「都心の住民のエゴ処理」を押し付けている現状は、著しく不合理なものです。

そもそも、村の平均人口は「4,059人」なのに、それを「人口1万人」として、不法投棄回収台数を倍増以上に膨らませる統計処理が加えられていますので、そのような統計処理を加えるべき理由を環境省は説明する必要があります。

このような数字の切り取りと加工では、物事の本質を逆に見えにくくし、
「都心の住民の意識はタケー」「町村の住民はルーズだ~」という、誤った社会的バイアスを植え付ける可能性があります。

もちろん、環境省にそのような政治的意図は無いと思います。

しかしながら、「その自治体の住民」と「その自治体に廃棄物を捨てた犯罪者」が一致しない以上、統計処理を加えた理由をもう少し丁寧に説明しないと、誤った社会的バイアスが多数派となってしまい、新たな偏見を生み出す可能性があります。

中央省庁だからこそ、「割ったり」「区切ったり」という恣意的な統計処理を加えることには、慎重であっていただきたいものです。

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