廃棄物処理業と他業態における欠格要件の比較

前回の記事で、「廃棄物処理業の欠格要件だけが異常に厳しい」と書きましたので、
補足として、他の業法におけるそれぞれの欠格要件と比較し、廃棄物処理業の欠格要件がどれだけ厳しいかをお示ししたいと思います。

まずは廃棄物処理業

廃棄物処理業の欠格要件は多岐にわたりますので、役員や個人事業者個人の犯罪歴に関する物だけを抜粋します。
※以下、他業態も同様の抜粋

・「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者(廃棄物処理法第7条第5項四号ハ)」
・「廃棄物処理法、浄化槽法その他生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの若しくはこれらの法令に基づく処分若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(第三十二条の三第七項及び第三十二条の十一第一項を除く。)の規定に違反し、又は刑法第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者(廃棄物処理法第7条第5項四号二)」

「禁錮以上の刑」に処せられた場合、根拠法の如何を問わず、すべて廃棄物処理業の欠格要件となります。
「廃棄物処理法」や「刑法その他の特定の法律」に基づく罰金刑も、廃棄物処理業の欠格要件となります。

上記の欠格要件に該当した場合、許可権者の市町村長、または都道府県知事は、必ず許可を取消さねばなりません。

刑法の傷害罪等は罰金刑も欠格要件の対象に入るので、酒癖の悪い役員の方は家の外での深酒は「ダメ!ゼッタイ!」

建設業

・「禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者(建設業法第8条第七号)」
・「建設業法、建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるもの若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(同法第三十二条の三第七項及び第三十二条の十一第一項の規定を除く。)に違反したことにより、又は刑法第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者(建設業法第8条第八号)」

と、廃棄物処理業とほぼ同内容の欠格要件が定められています。

許可取消の要否は、廃棄物処理業と同様に、必ず許可を取消さねばならない、とされています。

欠格要件と許可取消の要否においては、廃棄物処理業と建設業はほぼ同一の要件と厳しさとなっています。

そのため、正確には、「建設業と廃棄物処理業の欠格要件は異常に厳しい」となります。

運送業

・「一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者(貨物自動車運送事業法第5条第一号)」

とされていますので、

「罰金刑」の場合は欠格要件となりませんし、「一年未満の懲役刑」の場合なら、刑務所を出たばかりの人でも運送業を営めるということです。

許可取消の要否については、
「国土交通大臣は、六月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の全部若しくは一部の停止を命じ、又は第三条の許可を取り消すことができる(貨物自動車運送事業法第33条)」とあるため、
許可を取消すか否かについて、国土交通大臣に一定の裁量権があります。

廃棄物処理業と建設業と比較すると、緩い制約に見えてしまいます。

古物商

・「禁錮以上の刑に処せられ、又は(古物営業法)第三十一条に規定する罪若しくは刑法第二百三十五条、第二百四十七条、第二百五十四条若しくは第二百五十六条第二項に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなつた日から起算して五年を経過しない者(古物営業法第4条第二号)」

対象となる刑事罰は「禁錮刑以上」と「特定の法律に基づく罰金刑」で、5年を経過しない者とありますので、要件的には、廃棄物処理業と建設業に近いと言えます。

ただし、欠格要件に該当した場合には「許可を取消すことができる」とされているだけですので、許可を取消すかどうかは、運送業と同様に、許可権者の裁量となります。

他にも色々な業態や業法がありますが、廃棄物関連で見る機会が多い業態でも、欠格要件を巡る制約状況はこれだけ大きく異なっています。

廃棄物処理業と建設業は、役員が欠格要件に該当した時点で、会社の業許可は必ず取消されることになりますので、役員の方は日常生活においても隠忍自重が必要ですね。

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