故人の遺品は廃棄物になるのか?

医療機関における廃棄物管理の問題」の続きです。

河北新報 東北のニュースより、一部転載

札幌納棺協会を書類送検 宮城県警

葬儀で使用された廃棄物を無許可で収集、運搬したとして、宮城県警生活環境課と泉署は22日、廃棄物処理法違反の疑いで、札幌納棺協会(札幌市)と同社仙台支店の支店長(43)ら社員、元社員の計4人を、同法の委託違反の疑いで、大阪市の医療法人「徳洲会」と仙台市内の病院職員2人を書類送検した。県警は起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。

札幌納棺協会と社員らの送検容疑は2007年1―11月、仙台、石巻両市の許可を得ずに、両市内の葬儀社などから排出された仏壇や骨つぼなどの廃棄物計3.97トンを収集、運搬した疑い。

県警によると、札幌納棺協会は送検容疑の行為で、計約110万円を受け取っていたという。

仙台市は07年9月、葬祭社が排出した廃棄物の無許可収集、運搬をやめるよう同社に指示した上で、廃棄物処理法違反の疑いで08年4月、県警に告発した。

今回は、故人の遺品が廃棄物になるのかどうかという問題です。

廃棄物とは、廃棄物処理法第2条で

廃棄物とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不用物であって、固形状又は液状のものをいう。
と定められています。

そのため、遺品を相続した人が「もうこの遺品は要らない」と判断し、処分に向けて行動した時点から、その遺品は「廃棄物」になります。

「廃棄物」である以上は、それを処理する人・法人には廃棄物処理業の許可が必要となりますが、各地のお焚き上げ事業のほとんどは、廃棄物処理業の許可を持っていないと思います。

では、果たして、廃棄物処理業の許可を持たないお焚き上げ事業は違法なのか?

結論を申し上げると、「供養」などの宗教的儀式の一環として、故人の遺品を処理する場合は、その故人の遺品は廃棄物にはなりません。

廃棄物でないものを処理する以上、廃棄物処理業の許可は不要 ということになるわけです。

では、なぜ、上記のケースでは故人の遺品が廃棄物扱いにならないのか?

それは、「遺品を廃棄物、つまりゴミ扱いして欲しくない」という、国民感情に配慮するためです。

誰しも、亡くなった親族が遺してくれた品物を、単なるゴミ扱いして欲しくはないですよね。

その他の例としては、廃棄物処理法では、「野外焼却」が禁止されていますが、廃棄物処理法施行令第14条において、

風俗慣習上又は宗教上の行事を行うためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却

の場合は、特別に野外で「廃棄物」、すなわり「不用物」を焼却しても良いことになっています。

整理しますと、供養などの宗教的行事の一環として「不用物」を処理する場合、本来なら廃棄物処理業の許可が必要なところを、特別に許可不要とされているわけです。

許可不要の条件としては、「宗教的行事の一環として不用物を処理すること」ですので、

宗教的行事の一環ではない、単なる遺品処理などの場合は、法律の原則どおり、廃棄物処理業の許可が必要となります。

今回の事件では、札幌納棺協会の遺品処理事業が、上記の宗教的行事の一貫か否かを立証する必要があったため、告発から1年余を経てようやく書類送検できるようになったと思われます。

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