許可・不許可の判断留保の是非(埼玉地裁判決)

毎日.jpから「訴訟:産廃施設申請、判断留保の県敗訴 「迅速審査せず違法」--地裁判決 /埼玉」を転載します(業者名を削除しました)。

産業廃棄物処理施設の設置許可申請を受けた県が、「行政指導中」として態度を留保し続けることの是非が争われた訴訟で、さいたま地裁(遠山広直裁判長)は14日、「行政指導中であることを理由に、許可・不許可の判断を留保することは許されない」と、県の違法性を指摘した。産廃処理業者(嵐山町)が、県を相手取って不作為の違法性確認を求めていた。

判決によると、業者は川島町中山神明に産廃処理施設建設を計画。昨年4月、県に許可申請書を提出した。県は、騒音や健康被害、農作物への風評被害を懸念して施設設置に反対している地元住民への説明会が中断されていることなどを理由に、許可、不許可の判断を示さなかった。

判決は「行政手続法は、行政に遅滞なく審査する義務を定め、事務処理の迅速化、透明化を図っている。通常要する期間が経過しているのに判断しないのは違法」とした。

県産業廃棄物指導課は「主張が認められず残念」としている。

私にとっては、行政と事業者の両方の気持ちがわかる痛ましい訴訟です。

事業者にしてみれば、「廃棄物処理法の基準どおりに操業する予定なのに、なぜ許可してくれないんだ!」と誰もが思うに違いありません。

新聞報道を見る限りでは、法律の条件を満たしている以上、埼玉地裁の判断が正しいと言わざるを得ません。

廃棄物処理法では、産業廃棄物処理施設設置の条件として、地元関係者との合意を求めていないからです。

現実問題として、多くの行政が、今回の事件のような方針で「行政指導」を行うだけで、事態打開のために事業者と住民の間を取り持つような努力はしていません。

言い換えるならば、許可する・しないという判断を、行政自ら決めるのではなく、「地元との合意形成」を御旗にして、地元住民に押し付けているのと同じです。

今回の事件のようなドタバタ劇で一番被害をこうむるのは、行政や事業者ではなく、「地元住民」です。

事業者にとっても、本意ではないにせよ、許可申請を強行したという事実が後々の禍根となり、地元との共存共栄が図りにくくなってしまいます。

21世紀の行政としては、「我関せず」で高みを決め込むのではなく、地元と事業者の間を円滑に取り持つ役割が求められているのではないでしょうか。

「操業してしまえば終わり」ではなく、地元と事業者がお互いの情報を開示したうえで、環境保全に役立つ施設を地域で作り上げるという、協調的な関係維持も必要になると思います。

行政側には、積極的に泥をかぶる覚悟
事業者側には、わかりやすく誠実に情報を開示する姿勢
地元側には、落ち着いて話し合いに臨む冷静さ  が、それぞれ必要です。

二昔前とは違い、現在の法律の基準では、周辺の生活環境に害悪をもたらさない操業が十分可能です。廃棄物処理技術も、日々進歩しています。

従来型の、「受け入れる」か「受け入れない」かの二者択一ではなく
「地域としては、交通安全にもっと配慮してほしい」といった、建設的な話し合いが進む地域が増えることを願ってやみません。

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