大阪府立大発キャンパスゼロエミッションの取組み
YOMIURI ONLINEから記事を一部転載
大阪府立大学(堺市)は2008年度から、「キャンパスゼロエミッション化」と名付けた取り組みを始めた。学内で出た有機性廃棄物を再利用できる物質に変え、学外への廃棄物排出をゼロに近づける構想だ。
今年3月には、加熱・加圧によって分解作用を高める「亜臨界水処理」と呼ばれる手法を利用した小型プラントを開発。今月から実験的に植物を投入し、まもなく本格稼働させる。
このプラントに、例えば魚のアラを水とともに投入すると、水溶液、脂肪、骨に分解でき、アミノ酸やDHAなど有益な資源が取り出せるという。将来は学内の食堂の残飯(年約75キロ・リットル)のほか、廃棄する機密書類(年約20トン)、落ち葉・刈り草なども処理できるようにする。
12年前から実用化に向け研究を進めてきた大学院工学研究科の吉田弘之教授(63)は、「大勢が集うキャンパスは一つの『街』。地域単位で取り組めるゴミの資源化モデルを築きたい。全学的に環境への意識も高まり、教育的な意義も大きいはず」と考えている。
技術的な観点からのみ考えると、非常に素晴らしいニュースと言えます。
有機物を跡形なく分解するための技術としては、理想的なプラントと言えるでしょう。
しかし、技術面のみならず、環境全体の観点から考えると、記事にあるような「紙くず」や「落ち葉」までプラントに投入することが、「環境に良い」廃棄物処理とは言えません。
「紙くず」なら、わざわざプラントで分解しなくとも、古紙回収ルートが既に形成されていることですし、「落ち葉」は、樹木の生育に必要な養分でもあります。
大変素晴らしい技術が、「ゴミをすべて目の前から消せ」という、必要以上に潔癖な環境を強制しないよう願っております。
人間が生きている以上、ゴミは絶対に発生します。
その事実に目をつぶり、見掛け上のゴミを消してしまうことのみに執着するのは、生き物として自然な姿ではありません。
亜臨界水処理プラントは、PCBなどの有害廃棄物を安全に処理できるそうですので、生活系の廃棄物よりも、PCBのような有害廃棄物を処理する方が望ましいと思います。
プラントを用いなくても安全に処理できる廃棄物を、わざわざプラントで処理するということは、トウモロコシを食用ではなく、バイオエタノールの原料とするのと同じことではないでしょうか。
もちろん、大学関係者・学生の思いとしては、「純粋に廃棄物を減らしたいだけなんだ」ということだけだと思います。
しかし、関係者の皆さんが、真に「環境意識を高め」たとき、
亜臨界水処理プラントは唯一無二の絶対的な正解ではなくなっているはずです。
「ゴミを出さない」ということは、「ゴミを大学の外に出さない」ということではなく、
「学食の食べ残しをしない」とか、「使えるものは壊れるまで使う」ということだからです。
技術は技術として発展させながら、日本文化に根差した、無理のない廃棄物処理体制を確立していただければと思います。
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2009年10月22日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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