生ゴミの完全リサイクル政策は実現可能か?

民主党が衆院総選挙前に提示した「民主党政策集」については、当コラムでもご紹介してきたところですが
今回は、政策集の中でも異彩を放っている「生ゴミリサイクル」について解説したいと思います。
民主党政策集には、生ゴミのリサイクルについてこう書かれています。

食品については、未だ廃棄処理されている生ゴミ等が相当量ある実態を勘案し、バイオマスの活用などによるリサイクルを推進し、全ての生ゴミがリサイクルされる社会を目指します。

確かに、一般家庭から排出されるゴミのうち、約4割を生ゴミが占めると言われていますので、生ゴミの発生量が相当あることは間違いありません。
環境省の発表によると、日本全体で平成18年度に発生した生活系ゴミの量は、約3,300万トンですので
生ゴミの量は約1,320万トン程度と推測されます。
しかし、生活系廃棄物に事業系廃棄物を加えた処理をした場合でも、生ゴミ全体のリサイクル料は54,000トンにしかなりません(肥料化と飼料化の合計)。
発生量(1,320万トン)に対するリサイクル量(5.4万トン)の割合は、たったの0.4%にしかなりません。
現状では、生ゴミの99.6%は、焼却その他の処理によって、資源として再利用されることなく、ゴミとして処分されている状況です。
「だから、リサイクル率を100%にもっていくのだ!」と、民主党は言っているわけですが、「99.6%の生ゴミが単純処理されている」事実を目の当たりにすると、民主党の主張は絵空事のように思えます。
仮に、資金とエネルギーを無尽蔵に使えるのであれば、生ゴミの完全リサイクルも実現可能かもしれません。
しかし、それを実現するためには、全国すべての家庭に生ゴミ処理機を設置し、リサイクルした生ゴミを堆肥や飼料としてすべて再利用させる必要があります。
生ゴミをリサイクルするためには、電気などのエネルギーを消費しますので、地球温暖化を促進させることも間違いありません。
また、生ゴミは日々発生し続けるのに対し、堆肥をまく畑の広さは有限です。都市部の場合は、畑を見つけること自体が困難です。
民主党政策集では、「バイオマスの活用」と書かれていますので、生ゴミを集めた上でメタンなどを取り出すつもりなのかもしれませんが、メタンの精製プラントまで生ゴミを運搬するコストやエネルギーの他、メタン精製プラントの精製能力が十分にあるのかなどを考えると、「バイオマスの活用」は、魔法のように生ゴミの問題を解決してくれるわけではありません。

リサイクル率を計算する場合
生ゴミのリサイクル量
_________
生ゴミ発生量
という計算式になりますので、民主党の場合は、上式の分子である「生ゴミのリサイクル量」のみを上げようとしていることに問題があります。
分子ではなく、分母の「生ゴミ発生量」を減らすことも、リサイクル率を上げることに大きく貢献しますので、まずは生ゴミの発生抑制を図り、その後で生ゴミのリサイクル量を引き上げることを検討することが必要です。
「リサイクル率を上げる」というと、大変聞こえが良くなりますが、全体最適のために本当に必要なことは何かを、もっと真剣に検討するべきだと思います。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ