温暖化対策かリサイクルの推進か セメント産業のジレンマ

朝日新聞にセメント業界の苦境に関する記事が掲載されていました。
セメント業界「鳩山不況」 公共事業削減、さらに減産

記事の冒頭部分を抜粋します。

「コンクリートから人へ」を掲げる鳩山内閣の政策が、苦境のセメント業界に追い打ちをかけている。生産量は10月まで26カ月連続の前年割れ。全国で生産設備の停止を進めてきたが、需要減に追いつかず、今後は工場閉鎖などが必至だ。セメント工場は、産業や家庭から出る大量の廃棄物を原燃料として受け入れている。生産量が減れば廃棄物の受け入れ量も減るため、新たな処理施設が必要になるとの指摘もある。

セメントは原材料に廃棄物をふんだんに用いることができるため、廃棄物の大量、かつ効率的なリサイクルが可能な産業です。
その一方で、エネルギーを大量に消費する産業でもあるため、地球温暖化ガスを大量に排出するという負の側面もあります。
公共工事が年々減る状況下で、セメントの原料として廃棄物処理を引き受け、懸命にコスト削減に努めてきた背景があります。
廃棄物処理面だけを考えると、「セメント産業でどんどん廃棄物を有効活用してくれた方が望ましい」
ということになりますが、リサイクル後の製品の市場が無いことには、やはり健全なリサイクルとは言えません。
従来なら、セメントを大量に使う=セメントの生産増=廃棄物のリサイクル量の拡大 という、比較的単純な方程式で問題が解けましたが、ここ10年来、「地球温暖化対策」という制約が加わったため、複雑な連立方程式として問題に対処する必要が生じています。
重要なことは、「地球温暖化対策だけを考えておればよい」という安直な方針では、複雑に絡み合った資源や廃棄物の問題を解決することは不可能ということです。
地球温暖化対策として、エネルギーの消費を抑えることも重要ですが、それと同時に、廃棄物の安全、かつ安価なリサイクルを追求することも重要です。
廃棄物をリサイクルするという意味では、セメント産業も温暖化の抑制に役立っているのは事実ですので、政府はその効用をもっと重視して、セメント産業を一方的に悪者にしない配慮が必要でしょう。
それこそが国民に求められている、本当の「鳩山イニシアチブ」だと思います。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ