日経記事「建設産廃に排出責任制」の解説

12月7日付の日本経済新聞夕刊に、廃棄物処理法改正に関する記事が掲載されました。

「建設産廃に排出責任制」という記事です。
NIKKEI NETには、その記事の概要版しか掲載されていませんので、詳細は日経の紙面そのものをご覧いただく必要がありますが、紙面がなくてもわかるように詳しく解説したいと思います。

NIKKEI NET
建設産廃、元請けに責任 不法投棄対策、環境省方針

以下、日経の記事でおかしな点と正しい実態がどんなものかを解説します。

「下請け廃棄物処理業者」
廃棄物処理法では、廃棄物処理を「下請」させるということは有り得ません。

建設会社が排出事業者となる場合、建設会社自身が廃棄物を独力で処理できない場合は、廃棄物処理業の許可を持った事業者、すなわち「廃棄物処理業者」に廃棄物の処理を「委託」しなければなりません。

廃棄物処理を、「悪質な」「下請け廃棄物処理業者」にさせているという表現自体が間違いということになります。

記者の事実誤認に基づく誤りですが、環境省の考えとしては、
建設工事の場合、排出事業者が「元請会社」か「下請会社」か判別しない場合が多いため、建設工事に関しては、「元請会社」に一律に排出事業者責任を負わせたいということです。

ここでいう「下請会社」とは、「建設工事の下請けをする企業」のことであり、「委託先の廃棄物処理企業」ではありません。

「優良な下請け処理業者を認定する制度も設ける」
これは新たに制度を作るということではなく、既にある「廃棄物処理業優良性評価制度」を「拡充」するが正しい表現です。

下請け処理業者という表現が間違いである点は、上述したとおりです。

「自動車や家電の処理費用は製品価格に上乗せされている」
これはどこの国の話なのでしょうか?(笑)
日本では、自動車や家電の両方とも、製品価格とは別に、消費者がリサイクル料金を負担しています。
自動車の場合は先払い、家電の場合は後払いという違いがあるだけです。

日経の記事の文脈では、建設業界がずさんな管理をしてきたため、廃棄物の不法投棄がなくならなかったというミスリードを与えてしまいます。

確かに、不法投棄物の大半は建設工事で発生した廃棄物ですが、建設業界だけがずさんな管理をしているというわけではありません。他の産業も五十歩百歩の状況です。

日経の記事の詳細は、上述したように間違った事実認識で書かれているため、記事を無批判に妄信するのは危険ですが、元請会社の責任が強化されるという方向性については、そのとおりということになります。

記事の内容を冷静に受け止め、何が正しい情報なのかを取捨選択した上で、来るべき変化に備えていただければと思います。

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  1. 7日の日経夕刊

     7日の日経の夕刊の一面トップに、「建設産廃、元請けに責任 不法投棄対策、環境省方針」という記事がありました。
     この記事は、「廃棄物処理制度専門委員会報…


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