不法投棄にまつわるリスクを直視する

中日新聞 「本当に待ち遠しかった」 岐阜・椿洞の産廃撤去開始

近年まれに見る、大規模な不法投棄事件に発展した「善商不法投棄事件」ですが、
事件発覚後6年を経て、いまだに撤去作業が続いています。

記事によると、「今回は、40万立方メートルの不法投棄物を100億円かけて撤去した」とのことですので、概算すると、「1立方メートルあたり25万円」の撤去費用が必要だったことになります。

記事の写真を見ると、現場に立派な建屋を設置し、綺麗な選別機も置いているようですので、それらのイニシャルコストが「25万円」のコストに反映されていることを割り引いても、非常に高いコストと言わざるを得ません。

「無駄なコストを削減するべきなのだ」という、焼け石に水の批判をしたいのではなく

不法投棄によってもたらされる最悪の結果というものを、この事件から学ぶ必要があると考えています。

不法投棄現場周辺の住民の方にしてみれば、「一日も早く不法投棄物を全量撤去してもらいたい」と思うのは当然です。

ただ、行政が代執行をする以上、撤去に必要な経費は市民が払った税金から捻出しなくてはいけません。

見方を変えると
近隣住民の方は、不法投棄された廃棄物によって生活環境が害された被害者でありながら、さらに不法投棄物の撤去費用も負担させられるという、「泣きっ面に蜂」と言うべき、大変悲惨な状況に陥っています。

行政側は、この事実を肝に銘じ、二度と不法投棄を放置しないという心構えで仕事をする必要があります。

しかし残念なことに、行政の組織風土として、積極的に「火中の栗を拾う」人が評価されない一方で、波風を立てることなく問題を巧妙に先送りする人しか出世しないという現実があります。

そのため、「行政性善説」ではなく、行政には何らかの結果責任を負わせるシステムが必要になっています。
善商不法投棄事件では、不法投棄実行者と行政(岐阜市)の他にも、善商に廃棄物処理(不法投棄?)を委託していた多数の排出事業者に対して、廃棄物の撤去費用の負担が求められました。

マニフェストや委託契約書に「数量」や「金額」の記載が漏れていたという些細なミスによって、排出事業者責任の追及が実際に行われました。

追及の結果、ひどい場合には、月額数百万円の撤去費用を負担し続けている企業も実際にあります。
このように、不法投棄は他人事ではなく、日常の廃棄物管理業務とも密接に関連しているリスクです。

リスクではありますが、自社でできる対策(契約書を正しく運用する等)をしっかりしておけば、巨額の撤去費用の負担と社会的信用の失墜という、最悪の結果になることだけは確実に防げます。

コスト削減が至上命題となった昨今、本業とは本来関係無いリスクは極力抑えていくことが重要なのではないでしょうか。

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