携帯リサイクルの課題

6月22日に、経済産業省が昨年度の補正予算で行った、「たんすケータイあつめタイ\(^o^)/」事業の実施結果を発表しました。

「平成21年度使用済み携帯電話の回収促進実証事業」の実施結果及び事業収支構造等の公表

1.使用済み携帯電話の回収状況
使用済み携帯電話の回収台数(昨年11 月21 日~本年2 月28 日の累計)は、全国で569,464 台(確定値)でした。また、回収店舗数は1,886 店舗で、1店舗当たり1日平均の回収台数は3.02 台、回収受付1件当たりの提供台数は2.12 台でした。回収に
ご協力いただいた皆様に、厚くお礼申し上げます。

2.インセンティブの効果検証
前年同時期に使用済み携帯電話を回収し、その台数を集計していた量販店(3社)について比較したところ、前年同時期を大きく上回る回収成果(前年同時期比3.9 倍~36.4 倍)が得られています。

3.「たんすケータイあつめタイ」事業の収支構造
「たんすケータイあつめタイ」事業に関連する収入面においては、金属資源価格(歩留まり等を考慮した取引価格)として1台当たり138 円となり、支出面においては、一定の前提条件の下で試算したところ、1台当たり661.7 円の回収・処理コストがかかるものと算出されました。
なお、この回収・処理コストの約85%(1台当たり560.0 円)がインセンティブ関連経費(商品券代、企画運営費等)となりますが、この経費を除いた場合、回収・処理コストは1台当たり101.7 円となり、差し引き1台当たり36.3 円の金属売却益が生じる計算となります。

4.事業継続可能性の検討
今回の実証事業は、補正予算の関係上100 日間の期間設定となりましたが、1年間継続して実施する場合について、一定の前提条件で計算すると、損益分岐点を上回るための回収台数は約1,085 万台となり、さらにこの回収台数を確保するためには、9,836店舗の協力が必要という試算結果となりました。これは現行の携帯電話販売店舗数(約13,000 店舗)の8割弱となり、少なくとも回収シミュレーション上は、事業継続可能性があるものと試算されます。
ただし、インセンティブを付与した回収事業の実際の導入に当たっては、このシミュレーションの前提条件の確度を高めることが不可欠であり、事業実施期間中の金属相場の見通しや、1年間事業を継続した場合のインセンティブ効果、今回実証事業に参加しなかった店舗の回収関連収支及びその店舗へのインセンティブ効果など、さらなる検討や検証が必要です。
経済産業省では、今後、更に使用済み携帯電話の回収・リサイクルを促進するため、回収に対する一般消費者の積極的な協力が得られるような実効的な回収促進策について、関係者と検討を進めてまいります。

数字だけを追うと、「携帯電話を回収すれば、1台当たり36円も儲かるのか!」と考えたくなりますが、
実際には、消費者には携帯電話をリサイクルする必然性がないため、
そもそも、どうやって携帯電話を回収するのかという課題を解決することが必要です。

今回の事業では、携帯電話を持ってきてくれた消費者に対して、1,000円から50,000円の商品券が当たるという、ある意味採算を度外視したインセンティブが存在したため、回収が進んだ事実は否めません。

携帯リサイクルの直接的なメリットが見いだせない以上、実際には、リサイクルはなかなか進まないでしょう。

携帯リサイクルが進むか否かは、消費者が携帯を拠出するかどうかにかかっています。

では、なぜ消費者は進んで携帯を拠出したがらないのでしょうか?

(理由1)
友人や知人のアドレスや電話番号、その他E-mailの内容など、大量の個人「的」情報を第三者に渡すことが怖い。

(理由2)
携帯自体は小さな電子機器であるため、保管するスペースが小さくて済む(=手放す必然性が低い)。
→使えない自動車を何台も放置しておける余裕のある家庭は少ないと思いますが、携帯を3つ引き出しに入れておいても、それほど気にならない。

(理由3)
日本の携帯は電子機器としては高機能なので、電話として使わない場合でも、カメラの代わりとしても使える
→電話としては終わりでも、物理的な寿命が終わったわけではなく、電子機器として延命し続ける場合が多い。

こういった理由を一つずつ解消しないことには、リサイクルで一番重要な、「使用済み製品の円滑な回収」が不可能となります。

理由1は、消費者の目の前で携帯の機能破壊(基盤に穴を空けるなど)を行うことで、不安感をある程度払拭することは可能ですが、
理由2と3は、なかなか根深い問題です。

携帯を拠出することに金銭的なインセンティブをかけるのは、理由2の解消に役立ちますが、今回の事業のように、「携帯を拠出すれば、5万円が当たる!」といった、大きな金銭的メリットが必要となります。
10円、100円では、多くの消費者から直接携帯電話を回収するのは難しいでしょう。

理由3を解消するには、日本の携帯を、発展途上国で人気の携帯と同様、安価で限定された機能しか使えない機種にする、といった思い切った製造文化の変革が必要となりそうです。

そもそも、物理的・機能的寿命が終わっていない製品を、レアメタル回収のためだけに、「ドンドン廃棄してください」という論理がおかしく感じられます。

「たかが携帯、されど携帯」で、単なるリサイクル問題にも、一国の価値基準が透けて見えます。

本当にレアメタルの確保を図りたいなら、少なくとも、携帯の販売価格を1台10万円などと高額に設定し、古い携帯を持ち込んだ場合は、5万円減額しますなどと、確実に消費者が携帯を拠出したくなる仕組みを施す必要がありそうです。

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