廃棄物処理は輸出産業に成り得るか?

 10月6日付の日本経済新聞電子版に、「廃棄物処理を輸出産業に 資源外交連動の戦略を 」という記事が掲載されていました。

 今回は、経済産業省ではなく、環境省が産業としての輸出を後押しする構えのようです。
 記事によると、環境省は、2011年度予算として27億円を確保したとのことです。

 目標とするべき先行事例としては、

 先行例として注目されるのが、DOWAホールディングスやJFEエンジニアリングだ。DOWAは中国や東南アジアで廃家電などのリサイクル事業を急拡大。中期経営計画で環境・リサイクル事業の売上高1100億円を目標に掲げ、かつての銅鉱山会社のイメージを一新した。JFEエンジも中国で廃棄物発電などに注力している。

 と紹介されています。

 方向性としては、確かにそのような動きもアリだと思うのですが、
 そうそううまくは、環境省の思惑通りに進まないと思われます。

 その理由は3つあります。

 第1に、日本の廃棄物処理技術は、日本の社会状況に合わせて発展してきたものであり、それをそのまま発展途上国に適用しようとしても、適切ではないことが多いからです。

 処理の対象となる廃棄物の組成や発生量が変われば、それに合わせて最適な処理技術を選択することが必要であるため、日本で最適な処理技術が、そのまま海外でも最適となるわけではありません。

 特に日本の場合は、環境法規制が非常に厳しく、それに対応していくために、設備はどうしても高度化せざるを得ませんでした。

 そのため、諸外国の実感からすると、「日本の廃棄物処理技術は高価すぎる」という印象が強くなっています。

 第2に、廃棄物処理は廃棄物処理施設のみで完結するものではなく、最終処分場やリサイクル産業を同時に確保しないことには、成り立たないからです。

 DOWAやJFEの場合は、その施設で廃棄物処理またはリサイクルがほぼ完結するものであるため、この制約を受けることはありませんでしたが、いかんせん、このような施設は非常に高額となるため、ごく限られた条件下でしか建てられないプラントです。

 これから日本から乗り込もうという場合、発展途上国でも負担できるレベルの施設を設置する必要がありますが、そのような施設の場合は、地域の最終処分場やリサイクル産業と連携をすることが、操業をする上での絶対条件となります。

 第3は、メンテナンス費用の問題。
 日本メーカーの廃棄物処理施設は、メンテナンス費用が非常に高額になる弱点があります。
 日本メーカーと言いながら、部品はドイツ製ということが多いからです(笑)。

 発展途上国に施設をたくさん設置し、問題なく使っていただくためには、相当広い範囲を守備範囲とする、メンテナンス拠点を置くことが必要となるでしょう。

 その時に、安値攻勢の中国や台湾メーカーと戦う余力があるかどうか。

 ここをクリアしないで、設備を売りつけるだけでは、いずれはガラクタになる鉄くずを高値で売り付けるのと同様です。

 環境省の方々には、絵にかいた餅で終わらせないよう、しっかりと戦略構想を練った上で、予算を有効に活用していただきたいものです。

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