「全国的に珍しい」わけではない廃棄物の野積み規制条例

信濃毎日新聞 飯田市 家電野積み規制 条例改正方針 市が調査・指導へ から記事を転載引用します。

 飯田市は、廃棄物処理法の適用対象か判断が難しい家電製品などが市内で野積みされている事例を受け、住民の生活環境を守る措置を取れるよう市環境保全条例を改正することを決めた。集積場所の届け出を義務付けたり、市が立ち入り調査や業者への指導を行えるようにする。環境省廃棄物対策課によると、同法の適用とならない物品の野積みを条例で規制するのは全国的にも珍しい。

 15日の市議会建設環境委員会協議会で説明した。来年の市議会3月定例会に条例改正案を提出する方針だ。

 家電や鉄くずなどは廃棄物なのか、有価物なのかの判断が難しい。市が示した条例改正案では、対象物を「一度使われたか、使われずに収集された物品」、または「廃棄された物品」と規定。これらの物を高さ3メートル、または面積300平方メートルを超えて集積する場合を条例の対象とする。

 屋外の集積場所を「屋外たい積場」とし、周りに囲いを設けたり、落下や荷崩れ、粉じんの発生を防ぐ措置を取ったりするよう設置者に求める。設置前には集積する品目や量、公害防止策などを記した書類の提出を求める。市は定期的に立ち入り検査をするほか、住民から管理などに苦情が寄せられた場合は是正勧告を行うことができる。

 市は、道路沿いや山林の私有地にテレビや冷蔵庫などの家電類、鉄くずが野積みされている例を6件把握。沢柳孝彦・市水道環境部長は「市民の不安感もあるので、環境に影響が及ぶケースを事前に防いでいきたい」としている。

最近流行(?)の「廃家電の無料回収」を規制するための条例かと思いましたが、もっと範囲は広く、鉄くずを含んだ廃品全般を規制する条例のようです。

行政としてあやふやな判断を許さず、問題が起こらないように毅然とした態度を示した飯田市の見識は評価します。

しかし、新聞記事には、環境省のコメントを中心にミスリードを与える可能性がある部分が多いので、正確に補足して置きます。

まずは、

環境省廃棄物対策課によると、同法の適用とならない物品の野積みを条例で規制するのは全国的にも珍しい。

わずか1行の文章に、2ヶ所も誤りがあります。

(間違い1)
まずは、野積みされた廃品は、特に家電製品のような場合は、有価物としての価値がなく、廃棄物として扱うのが相当です。

鉄くずの場合は、多少雨に濡れても問題なく再生利用できますが、電気製品の場合は、野積みにしている時点で製品としての使用価値が消失します。

再使用する前提なら、絶対に屋根がある部分で保管し、雨に濡れないように配慮しますよね。

(間違い2)
環境省の言うところの「(廃棄物処理)法の適用とならない物品の野積みを条例で規制するのは全国的にも珍しい。」は現実と相違するコメントです。

現在既に、兵庫県その他の自治体では、電気製品その他の物品の野積みを条例で規制しています。

兵庫県などは、7年前に条例が制定されていますので、最近急に規制し始めたわけでもありません。

だいたい環境省はつい最近下記の情報を公開したばかりなので、兵庫県が条例を制定していることは知っていたはずです(笑)。
都道府県・政令市における廃棄物・リサイクルに関する条例等

環境省だけの問題ではありませんが、縦割り行政のせいか、視野の狭い担当者が多く、ぶつ切りで法律を理解している印象を受けることが年々多くなりました。

今回は、明らかに環境省の認識不足ですが・・・

最後に、本来、現在でも市町村は、一般廃棄物の処理に関して何らかの疑義がある場合は、廃棄物処理法に基づいた立入検査を行うことが可能です。

別に条例をわざわざ作る必要はさらさらありません。

ただ、個別の条例がある方が、事業者に対して説明をしやすいのも事実です。

しかし、条例がないと規制ができないという「卵が先か、鶏が先か」という話ではなく、市町村はいますぐ調査指導ができる条件にあるということを忘れてはいけません。

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コメント

  1. 原 和世 より:

    こんにちは、私は飯田市議会議員の原和世と申します。
     今市内の数カ所で家電品や古タイヤ、金属や機械が収集され空き地や山中に野積み状態となっています。家電品などはそこで分解もされているような状態です。
     このような中で住民から環境汚染や景観環境に不安があるとの声が高くなり、先生のご指摘された野積み条例の制定を進めています。
     しかしながら、私は今回提示されたこの条例(素案)では不十分だと考えています。
     その理由は、条例の柱では届出制と罰則及び過料となっており、要件は面積と高さとなっていますが、そもそもの野積みの解決にはつながらないと思うからです。。
     担当課はこれまでだといいますが、他にも条例の内容が曖昧な点が多くこれで実効性があるのかとも思います。
     アドバイスをいただけたらと思うのですが。

  2. 尾上雅典 より:

    原和世 様 コメントいただき、ありがとうございました。

    地方自治の現場における環境政策への熱心なご提言を心強く思っております。

    さて、ご質問の条例の規定の是非に関してですが、
    野積みや無料回収を条例の規定のみで取締るのは困難だと思われます。

    これから飯田市政において必要になるのは、条例を作りっぱなしにすることではなく、
    条例を取っ掛かりにして、アウトローを迅速に取締ることだと思います。

    行政としても、条例というルールを自ら作り上げた以上、それに基づいた行動を
    行う義務も発生しますので、相当の覚悟があっての条例化ではないかと思います。

    条例は万能の解決策ではなく、問題解決のための一つの道具に過ぎませんので
    むしろ、条例を作った後の動きの方が重要ではないかと考えています。

    もちろん、今から制度上の不備が明らかな場合は、制定前から是正をしておく
    必要があると思いますが、実際に制度を動かしてみて、効果と改善点を検証
    することも必要だと思います。

    いかんせん 行政の場合は、検証というキーワードが欠落することが多いものですが・・・

    部外者の気楽な意見で恐縮ですが、条例の実効性を取るためには、
    上記のような方策も必要と思っています。

  3. 原 和世 より:

    お世話になります、重ねてお聞きしたいと思います。
    この件で、パブコメが有りましたので私たちの会派として意見書を提出しました。その内容についてご意見かアドバイスを頂けますか?頂けるようでしたら、添付して送付させていただきたいと思うのですが。

  4. 尾上雅典 より:

    原和世 様

    簡単なコメントしかお返しできないと思いますが、それでもよろしければ、onoemasanori+syuzai@gmail.com までメールをお送りください。


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