誰も得をしない不法投棄の後始末
岐阜新聞WEBに興味深い記事が掲載されていました。
報道の本題は、国の支援が「普通交付税」から「特別交付税」に移行することにあるようですが、
私はそこには一切興味がありません(笑)。
私が興味を持ったのは、不法投棄の代執行は、地域だけの問題ではなく、回りまわって国民全員の負担に帰するということです。
元行政マンであるため、行政代執行の財源の大部分が県税にあることは当然知っておりましたが、
国から市債償還費用の5割が支援されることは知りませんでした。
もっとも、別にこれは隠された事実ではなく、むしろ公知の事実です。
実は、行政マンである時から、私はこういった難しい漢字を使う財源の話が大嫌いでした(笑)。
「俺たちは現場で汗をかくので、財源は(本庁の)エリートが考えてくれ」という心構えだったからです。
そんな心構えでは、「お役人道」ではまず出世できませんので、独立して正解だったかもしれません。
本題に戻りますと、
行政代執行事業費が5年で約55億円ですから、1年でおよそ11億円。
この11億円が産業廃棄物処理を請け負う事業者に支払われることになるわけですが、
産業廃棄物処理業者は11億円で「濡れ手に粟」の大儲けができるのでしょうか?
答えは「否」です。
たしかに11億円という金額だけを見ると、大きな数字に見えます。
しかし実際には、処理事業は、随意契約ではなく競争入札であるため、ほとんど利益が残らないそうです。
企業名は明かせませんが、複数の入札参加事業者からお聞きしました。
処理する産業廃棄物も、きれいなものはほとんどなく、汚泥や灰など、土と汚れが付着しているものばかりですので、
一般的な産業廃棄物以上に厳重な管理が必要でもあります。
処理業者にとってみれば、「金のなる木」ではなく、「社会奉仕」
と言った方が実情に近いとのことです。
撤去費用を負担する、岐阜市と岐阜市民、そして国民にとっては
不法投棄は迷惑以外の何者でもありません。
もちろん、岐阜市の場合は、被害者ではなく、事態がここまで大きくなった当事者としての責任がありますが。
最後に、不法投棄を実行した、善商関係者は「濡れ手に粟」で裕福になれたのでしょうか?
それぞれの関係者を個人的に知らないので、真実はどうかわかりませんが、
おそらく、裕福になった人は一人もいないと思われます。
20年前ならいざしらず、21世に入ってからの日本では、不法投棄によって財を成すことはほぼ不可能だからです。
非合法事業である以上、正規事業よりも単価を安くせざるを得ず、大金を稼ぐことは不可能に近い難事です。
仮に財を成したとしても、犯罪による収益として、国家に没収されることになります。
これだけ社会全体の不幸につながる犯罪も珍しいのですが、
一つだけ「シアワセ」になる関係者がいました。
それは、不法投棄を依頼した「排出事業者」です。
依頼者は、自らの手を汚すことなく、正規料金の半額以下で廃棄物”処理”ができるのですから、
「犯罪が発覚しない」限りは、万々歳です。
もっとも、近年では、委託契約書やマニフェストの存在により、
非常に高い確率で、不法投棄の依頼者がすぐ判明することになります。
「天網恢恢疎にして漏らさず」で、悪事のやり逃げができない社会体制になっていますので、
「ばれなければ・・・」と宝くじ以上に低い勝率に全てを賭けるのではなく、
法律で決められた通りの責任を果たす方が結果的には安上がりです。
あなたはどちらが得だと思いますか?
最強マフィアの仕事術
切り口は違いますが、この本でも、非合法活動が経済合理的でないことが説かれています。
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2011年6月14日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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