富山県で小型家電リサイクルが実現した理由

YOMIURI ONLINE 富山 小型家電リサイクル71トン から記事を転載します。

開始から1年 希少金属活用

 不燃ゴミとして捨てられていた小型家電を回収し、レアメタル(希少金属)などを取り出すリサイクルを、県が富山や高岡など5市と始め、今月で1年を迎えた。参加自治体も徐々に増え、県によると、6月現在でリサイクルされた小型家電は8市の約71トン。9月で9市に、来月には10市町となる。国も県主導による富山型システムを先進的な取り組みとして注目している。

 このシステムは、埋め立てられていた携帯電話や掃除機などを、特定の場所に持ち込んでもらったり、自治体などが無料回収したりする仕組み。県は自治体の回収拠点設置などに助成し、自治体は中間処理業者に売却。業者がレアメタルなどを取り出す。砺波、富山、高岡、射水、黒部5市で始まり、今年4月に氷見、滑川、南砺3市が参加。9月に魚津市が始め、来月に入善町が加わる。

 富山市では今年3月までの半年間で、290人が740個(4753・5キロ)を特定場所に持ち込んだ。業者の買い取り価格は入札で決まり、高くて1キロあたり10円程度。同市では10万5840円になり、収入になった。

 環境省の試算では、使用済みの小型家電は毎年76万トンに上り、レアメタルや金などが28万トン含まれている。小型家電を回収しレアメタルを抽出して再利用する一方、県内では不燃物などを埋め立てる最終処分場が、2025年に満杯になる問題を抱えていた。

 同省は今後、使用済みの小型家電からレアメタルなどを抽出する「都市鉱山リサイクル促進制度」を創設する予定。小型家電を「鉱石」に見立てたものだが、市町村など自治体が中心になり、中間処理業者や小売店、住民などと、回収技術が確立している金や銀などを回収する仕組みだ。富山型のシステムも参考にしているという。

 同省リサイクル推進室は、「富山のように全県で取り組んでいるのは極めて珍しい。中間処理業者があるため、うまく循環している。創設する制度には、富山のような先行事例を生かしながら、全国展開したい」と評価している。

回収量とそれに参加した市民の数を考えると、数少ない小型家電リサイクルの成功事例と言えるでしょう。

はたして、富山でリサイクルが成功した理由は何なのでしょうか?

環境省のコメントでは、「中間処理業者があるからうまく循環している」と、原因と結果の単純な因果律のみで説明されていますが、
施設があるだけでリサイクルが進むわけではありません。

最も肝心なのは、リサイクル施設を動かす事業者の決意 です。

最近、決意とか覚悟という精神論的な言葉を多用している気がしますが(笑)、これが一番しっくりくる言葉です。

富山県においては、「ハリタ金属」という、
リサイクル実験以前に自前で設備投資をし、(事業者にとって)利幅の少ない高値で買取をしてくれる事業者があったことが一番の成功要因だと思います。

記事では「ハリタ金属」という名前が上がっていませんが、経済産業省の公表資料でも、成功事例としてハリタ金属が紹介されているため、富山県内での回収の大部分はハリタ金属によるものとみて間違いないでしょう。

1kg10円ということは、1tで10,000円程度の買取価格ですが、
いかにレアメタルといえど、ここに回収費や分別費、設備の減価償却費などを足していくと、利益はほとんどない、あるいは若干の赤字になるのではないかと思います。

参加する自治体が増え、回収量が増し、引き取りが効率的に行えるようになると、利幅は若干改善していくと思われますが、事業単体として考えると、それほど儲かる事業ではありません。

それでも、「日本で必要なリサイクルだからやる!」

これこそ企業の覚悟と言えるのではないでしょうか。

悲観的なことを少しいうと、
先述したように、事業者と参加自治体の数を増やすだけで、小型家電のリサイクルが進むとは思えないのです。

必要なのは、ハリタ金属のように、官に頼らずに自前で設備投資をする気概を持ち、長い目でリサイクル事業を成長させる財政的余裕がある処理企業を増やしながら、
自治体は目先の収入にとらわれずに、地場のリサイクル企業を育成する心構えを堅持することです。

数だけ増やせば良いというものではありません。

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