引っ越しごみの運搬問題

引っ越しゴミ 路上に投棄…アート社、容疑で書類送検へから記事を転載します。

 引っ越し大手「アートコーポレーション」(大阪府大東市)の社員らが、引っ越し作業中に粗大ゴミを路上に不法投棄した疑いが強まり、大阪府警生活環境課と浪速署は、社員らと、法人としての同社を廃棄物処理法違反容疑で近く、書類送検する方針を固めた。

 同社は「客の指示で置いただけ。その後、客が処分すると思っており、不法投棄の認識は全くなかった。警察の捜査には全面的に協力する」としている。

 捜査関係者によると、社員らは昨年12月3日、無職長野賢策容疑者(62)(同法違反容疑で逮捕)の依頼で、大阪市浪速区のマンションから同市阿倍野区への引っ越しを請け負った際、洗濯機や食器棚をマンション近くの路上に捨てたとされる。府警は社員らから事情を聞くとともに、先月、本社などを同容疑で捜索した。

 社員らは長野容疑者から洗濯機などの無償引き取りを依頼され、いったん断ったが、「捨てたらいい」と強く言われ、上司に相談した上で応じたという。不法投棄の警戒中だった市職員に見つかり、発覚した。

路上に洗濯機などを放置した時点で、不法投棄が成立しますので、その認識があろうがなかろうが犯罪です。

今回の事件、アート社側に廃棄物処理法の知識があり、少しだけの余裕があれば、合法的に収めることがことが可能でした。

引越業者の場合、転居の際に発生する廃棄物の運搬を一般廃棄物収集運搬業の許可なしに行えるからです。

ただし、運賃を取ってはダメなので、無償で行う必要があります。

廃棄物処理法施行規則 第2条第十号

十  引越荷物を運送する業務を行う者であつて、次のいずれにも該当するもの(一般廃棄物処理基準に従い、転居する者が転居の際に排出する一般廃棄物(日常生活に伴つて生じたものに限る。以下「転居廃棄物」という。)のみの収集又は運搬を営利を目的とせず業として行う場合に限る。)

イ 転居する者から転居廃棄物の収集又は運搬について次に掲げる事項を記載した文書の交付を受け、かつ、当該文書に記載した事項に基づき、転居廃棄物を所定の場所まで運搬し、当該所定の場所において市町村又は一般廃棄物収集運搬業者に引き渡すこと。
(1) 当該収集又は運搬に係る転居廃棄物の種類及び数量
(2) 引越荷物運送業者が管理する所定の場所の所在地
(3) 当該所定の場所において当該転居廃棄物を引き渡す市町村の名称又は一般廃棄物収集運搬業者の氏名若しくは名称及び住所並びに法人にあつては代表者の氏名
ロ 法第七条第五項第四号 イからヌまでのいずれにも該当しないこと。
ハ 不利益処分を受け、その不利益処分のあつた日から五年を経過しない者に該当しないこと。

無償で引き受けた以上は、もう少しだけ我慢して、(※筆者注記2012.11.21 コメントでのご指摘に基づき、表現を修正しました)アート社の最寄りの管理場所まで運び、大阪市または大阪市の一般廃棄物業者に回収を依頼すれば大阪市の清掃工場まで運んでいれば、不法投棄で捕まることもありませんでした。

不法投棄でアート社に対する罰金などが確定すると、
アート社は上記の「ロ」の欠格要件に該当することになりますので、
今後5年間は施行規則第2条第十号の規定を使えない、つまり市町村の清掃工場に転居ゴミを運べなくなります。

まぁ、元々この規定を使っていなかったのであれば、そうなったとしてもまったく影響はないのかもしれませんが ^_^;

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コメント

  1. さくパパ より:

    勉強させていただいております。

    元オウム信者の件ですよね。
    お客さんに頼まれたからといって、やって良いことと、
    悪いことぐらい分かるような気がしますが・・・。

    新聞記事には、大手引越し業者としか記載されていなかったので、
    その大手引越し業者につて気になっておりました。
    法人にも責任があります。
    社員教育も必要ですね。

  2. 尾上雅典 より:

    さくパパ 様 コメントいただき、ありがとうございました。

    ご指摘の件、不法投棄指示者の方が先に報じられていましたが、そちらとのつながりには気づいておりませんでした。
    http://sankei.jp.msn.com/region/news/120221/osk12022102080000-n1.htm

    ありがとうございます。お陰で事件の背景がよくわかりました。

    引越をする途中で廃棄物を置き去りながら、「後で取りに行くつもりだった」というのがかなり意味不明な言い訳ですね。

    アート社は上場廃止済だったのが不幸中の幸いでした・・・

  3. 引っ越し会社勤務 より:

    >>まぁ、元々この規定を使っていなかったのであれば、そうなったとしてもまったく影響はないのかもしれませんが ^_^;

    会社に提携してる廃棄物処理会社のコンテナがあるんですが、そこへ引越しで出たゴミを有料で引き取って捨ててます。
    これも厳密には違法なんでしょうか?

  4. 尾上雅典 より:

    引っ越し会社勤務 様 コメントいただき、ありがとうございました。

    貴社が有料で廃棄物処理を引き受けるのは、一般廃棄物処理業の許可がないと違法になります。

    そのため、お客様から廃棄物を有料で引き取った時点で、廃棄物処理法違反になりますのでご注意ください。

  5. ちょっと疑問が より:

    廃棄物処理法施行規則第2条第十号の解釈(=欄外に記載されたコメント)にちょっと疑問があります。
    条文の欄外のコメントで「引越業者の場合、転居の際に発生する廃棄物の運搬を一般廃棄物収集運搬業の許可なしに行えるからです。ただし、運賃を取ってはダメなので、無償で行う必要があります。」「無償で引き受けた以上は、もう少しだけ我慢して、大阪市の清掃工場まで運んでいれば、不法投棄で捕まることもありませんでした」とあります。すなわち、引越し業者は、無償で役務を提供するのであれば、収集運搬業の許可を得ていなくても廃棄物処理場(コメントでは清掃工場と記載)まで引越し当事者の依頼で一般廃棄物を運搬することができるとあります。第2条第十号のいわゆるキモは本文の赤字で表記された「営利を目的とせず」でなく全体で解釈すべきではないでしょうか?第十号の本文で許可不要事例が記載され、イ本文でその要件が、(2)で運搬先として「所定の場所」の定義とを考え合わせると、処理法の許可を得ていない引越し業者は、引越し主から依頼を受けた廃棄物を運べるのはせいぜい「引越荷物運送業者が管理する所定の場所」までとしか解釈できませんが。
    このことは平成15年に環境省大臣官房が作成したマニュアルに、引越請負業者が一般廃棄物処理業の許可を得ずに廃棄物を運べる事例として「[1]引越廃棄物を引越請負業者が管理する所定の場所まで運搬すること」と明快に記載されています。
    先生のご解釈では、無料なら処理法の許可を得ていない引越し業者が廃棄物を最終処分場まで収集運搬することが自由になります。それでは廃棄物の収集から処分までを管理する処理法を骨抜きにすることになります。
    この解釈について、ご回答をいただければ幸いです。

  6. 尾上雅典 より:

    ご指摘ありがとうございました。
    自分自身施行規則を引用しながら、適用される条件を間違って表現しておりました。
    ご指摘を受け、許可不要となる条件を修正いたしました。

    ただ、施行規則のとおりに運用すると、引越業者の負担において高額な粗大ごみ処理費などを負担しなければならず、事実上この条文の適用を受けようと思う引越業者はまず出てこないだろうと考えられますね。

    引越ゴミに限るのであれば、無償ではなく、最低限の市町村ごとの回収費用くらいは請求しても良いのではと思います。

    もちろん、これは法律を無視しても良いという意味ではなく、環境省において考慮してもらわねばならない規則改正の範疇となります。


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