再委託容認で排出事業者が書類送検

再委託はよくありがちな違反ですが、逮捕映像がTVで報道されるなど珍しく大きく取り上げられています。

よくありがちな違反だけに、逆に始末が悪いとも言えますので、今回は再委託の問題点と、合法な再委託を解説しておきます。

朝日新聞 産廃無許可運搬、容認の疑い 東急建設社員を書類送検

 準大手ゼネコン・東急建設が排出した産業廃棄物を、無許可の孫請け業者が運搬するのを知りながら容認したとして、警視庁は30日、東急建設の男性社員(42)を、廃棄物処理法違反(委託基準違反)の疑いで書類送検し、発表した。

 同庁はほかに、東急建設から下請けして運搬業務を孫請けに回した千葉市中央区の「一英建材」専務中村貴一容疑者(42)ら3人を、同法違反(再委託基準違反)容疑で逮捕。孫請けした都内の運搬業者の運転手3人を同法違反(無許可収集運搬業)の疑いで書類送検した。関係者はいずれも容疑を認めているという。

 生活環境課によると、東急建設の男性社員は昨年12月29日、同社が請け負う東京都港区内のビル建設現場から出た産廃を、無許可の孫請け業者が千葉県市川市の中間処理場に運んでいるのを知りながら、容認した疑いがある。

東急建設は、問題点を自己申告したにもかかわらず、担当者が書類送検されるという少々気の毒なことになっています。

司法取引制度が無い日本では仕方がないことかもしれませんが、廃棄物処理法違反には経済事犯の性質もあるので、不正競争防止法の課徴金の免除と同様の密告制度の導入も必要だと思っています。

今回の事件では、収集運搬を転々と再委託し続けるという典型的な再委託事件ですが、最初の再委託の段階で止まっていれば、合法的に収めることも可能でした。

一英建材が、再委託先を明記した書面で、東急建設から再委託承諾を取り、一英建材と再委託先との間で収集運搬の再委託契約を締結するという方法です。

ただ、今回の事件では、さらに孫請けのような形で再委託が繰り返されていますので、そこまでいった段階で違法となるのは同じです。

廃棄物処理業者の罰則の注意ポイントをまとめると、以下の6点に集約できます。

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巻末には、再委託承諾書というどの本にも載っていないマイナーな書式を掲載しています(笑)。

運搬車両や運転手が足りない時に、「傭車」という方式で、他社から車両や人員を借り受けて運搬を行うケースがよくあります。

このようなケースは、再委託に該当するのでしょうか?

それを判断するためには、「運搬をどの会社の責任で行っているのか」、「傭車に伴う手続きをどうしているのか」を慎重に検討する必要がありますので、ブログで簡単に合法とも違法とも書けないのが正直なところです。

重要なのは、「傭車しても変更届さえ出していれば全く問題ない」と浮かれていてはいけないということです。

傭車をした以上、その車両や人員は、傭車をした処理企業の責任において運搬をさせることになりますので、万が一不法投棄や再委託が勝手になされた場合、傭車をした処理企業の責任になるからです。

また、変更届などの手続きをせず、単なる口約束だけで運搬を他者にさせると、再委託や名義貸しに該当する可能性があります。

傭車は、それ以外にどうしようもない緊急事態のみに使う手法であり、弾力的に仕事を受注するための方便として使うのは大変危険です。

合法か違法かだけで判断すると、想定していなかったリスクにいつか直面することになります。

偏狭な間違った法令順守至上主義に陥らないようにしましょう!

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