風評ではなく蓋然性の問題

養鶏場の存続か、最終処分場の設置か、それとも・・・の続報です。

神戸新聞 三木の産廃処分場建設計画 市道廃止案を否決

 兵庫県三木市吉川町新田の北谷川最上流部で計画されている産業廃棄物最終処分場の建設をめぐり、三木市会の総務建設常任委員会は18日、同町新田の市道を廃止する市の議案を否決した。賛成した議員はおらず、26日の本会議でも否決される見通し。一方で、建設予定地の下流域7地区でつくる「北谷川の環境を守る会」から出され、市道廃止を承認しないよう求める請願について、同常任委は全員の賛成で採択した。

 産業廃棄物処理業者、環境保全センター(神戸市西区)が処分場建設を計画し、6月に市に対し、新田地区を通る市道の廃止を申請。市は法令に基づき、市会に市道の廃止案を提出していた。

 市は建設予定地の下流域で栽培されている酒米「山田錦」の風評被害への懸念や、下流域の住民の同意が得られていないことなどから、薮本吉秀市長が、建設に反対する意向を既に表明。市会も反対している。建設の最終的な許認可権は県知事にあるが、市会で否決されれば、業者の計画に一定の影響を及ぼす可能性がある。

 市によると、市道は延長93・9メートル。市は市道の廃止手続きに必要な地権者らの同意が得られていることから、9月定例会に廃止案を提出していた。

 環境保全センターによると、処分場の事業面積は約12万1千平方メートル。埋め立て容量は約150万3千立方メートルで、埋め立て期間は15年間。

 計画は、予定地にある養鶏場の経営不振から約5年前に持ち上がり、地元の新田地区は苦渋の決断の末、計画に賛成している。現在は計画の周知範囲などを決めるため、県と同センターが事前協議を続けている。

 同センターは「(常任委での)採決結果を受け、粛々と計画作業を進めていく。ただし、風評被害を理由にすることには疑問を感じる」とコメントした。

新聞報道によると、三木市議会の総務建設常任委員会は、「山田錦への風評被害が予想される」ことを理由に、市道の廃止を否決したようですが、
風評被害というのは起こるかどうかわからない事態ですので、それを理由に否決というのは、いささかアンフェアな感じがします。

ここは風評被害などという漠然とした理由ではなく、「山田錦産地の利水に悪影響を及ぼす蓋然性が高い」などとダイレクトに危険性を指摘する方がよろしいかと思います。

管理型処分場は安定型処分場とは違い、浸出液を適切に処理する施設が必ず設置されます。

埋立場所には遮水シートなどを施工し、処理場外部や地下水への浸出を防止する仕組みも施されます。

しかしながら、それらの措置を取ったとしても、絶対に地下浸透や外部への浸出が防げるわけではありません。

公共設置の管理型処分場でも、遮水工の破損などが頻繁に現れるくらいですから、絶対に安全とは言い切れない施設です。

だからこそ、水源地から離れた場所や、地下水が飲料水として利用されていない場所を選んで、管理型処分場を立地するのが常道となっています。

もちろん、排水処理施設は必ず設置するのですが、万が一の破綻リスクを織り込み、立地上の工夫で非意図的なリスクの被害を最小限に抑えているわけです。

しかし、今回の立地条件の場合は、山田錦の上流域に管理型処分場が設置されるわけですから、
上述した立地上の工夫によって、非意図的なリスクの被害を抑え込むことができません。

よって、一般的には、このような場所には管理型処分場を設置しない方が良いということになります。

事業者にとっては苦渋の決断かもしれませんが、
ここはひとつ発想の転換をし、排水が発生しない中間処理施設などを設置し、養鶏場の臭いに悩まされている地域の問題解決を図るようにすれば、事業者にとっても、近隣住民にとっても、三木市にとっても、望ましい解決になるのではないでしょうか。

と、外野の人間は気楽なことが言えますが、
大規模プロジェクトが一度動き出してしまうと、針路変更が難しいことは重々承知しております(苦笑)。

しかし、地域住民を巻き込んだ裁判沙汰にまでなってしまうと、事業者にとっても利益はまったくありませんので、早めの針路変更の方が望ましいのも事実です。

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